05.お留守番係の重大発見
お留守番係になったゆかとすずは、みんなが出かけた後、自宅の掃除を始めた。
開業準備。
診療。
食事の準備。
それぞれができることをしていたものの、細かいところまで手を付ける余裕はなかった。
今日は休診日だった。
みんながそれぞれ出かけている間に、普段できないところを片付けるにはちょうどよかった。
「天気よくてよかったねぇ~」
ゆかは布団を抱えながら言った。
「ほんとうに」
すずも頷く。
2人は布団を並べて天日干しをするため、屋上テラスへと運んでいた。
階段を上がり、扉を開ける。
外に出ると、風が通る。
布団を干すにはちょうどよかった。
ゆかは周囲を見回す。
「というか、院長の家に屋上テラスがあるとは……」
「庭があるのに」
すずも同じように周囲を見る。
屋上テラスと言えばおしゃれな言い方だが、物干し竿とかがあることを鑑みると、洗濯ものを干すスペースとしか活用できなさそうだった。
おしゃれ目的ではなさそうだ。
ゆかは布団を並べ終え、腰に手を当てる。
「ま、布団干す場所には困らないからいいけどね」
すずもその言葉に頷く。
2人で布団を並べ、洗濯ものも干していく。
人数が多い分、洗濯ものの量も多い。
それでも、場所があるのはありがたかった。
布団と洗濯ものを干し終えたゆかは、手を軽く払った。
「布団と洗濯ものは干し終えたし……わたしは水回りの掃除するね」
「じゃぁ、わたしは2階から掃除はじめますね」
2人はそれぞれ掃除を始めた。
すずは箒を手に取り、一部屋ずつ丁寧に埃を集めていく。
2階の部屋から順に進める。
床の隅。
家具の下。
人が多い家だからこそ、埃も細かくたまりやすい。
すずは無言で手を動かし、集めた埃を塵取りへ入れる。
2階から1階へ下りていき、塵取りで集めた埃をゴミ箱へ捨てた。
その後、掃除機をかける。
掃除機の音が廊下に響いた。
すずはコードを引きながら、部屋を一つずつ回っていく。
一方で、ゆかはお風呂場の掃除を始めていた。
換気をしつつ、床や天井、壁や排水溝を掃除する。
湿気がこもりやすい場所だった。
人数が多い分、お風呂場もよく使われる。
ゆかはスポンジを手に取り、床をこすった。
(普段はなかなか掃除できないしね~。こういう休みのときで、人がいない時じゃないとね)
ゆかは排水溝の蓋を外し、たまっていた汚れを取る。
細かいところまで掃除するには時間がかかる。
それでも、誰かが入ってくることもない今なら集中できた。
壁を流し、床を流し、天井を確認する。
お風呂掃除が終わると、ゆかは掃除道具を片付けた。
次に、1階と2階にあるトイレ掃除を始める。
便器。
床。
棚。
手洗い場。
ひとつずつ確認しながら掃除していく。
(まぁ、トイレの床掃除は定期的にしているとはいえ……。結局まとめてになるよねぇ…)
ゆかはしゃがみ込み、床を拭いていた。
その時だった。
トイレ周りを確認していたゆかは、ふと手を止める。
視線がある場所で止まった。
(……ナプキン……どうしよう)
ゆかは固まった。
この世界にそういうものがあるとは思えない。
見たことも聞いたこともない。
当然、買える場所もわからない。
そもそも、この世界の女性たちがどうしているのかも知らない。
(女の割合が高いこの家。きっとそろそろだれか来る)
ゆかはその問題に気づき、顔を青ざめさせる。
食糧は大事だった。
白穀も大事だった。
肉も野菜も必要だった。
けれど、女性にとってはもっと切実な問題がある。
月一必ず来るどうすることもできない現象。
ゆかはトイレの中で、掃除道具を持ったまま小さく息を吸う。
どうする。
誰に相談する。
今ある分で足りるのか。
全員分を考えたらどれくらい必要なのか。
洗濯でどうにかするのか。
布で代用するのか。
この世界の布の質はどうなのか。
吸水性は。
衛生面は。
洗う場所は。
干す場所は。
考えれば考えるほど、問題が増えていく。
(食糧は大事だけど、女の人はもっと大事な問題があるよ。月一必ず来る問題)
トイレでブツブツ何かを言っているゆか。
すずは床掃除をしながらその様子を見ていた。
掃除機を止め、少し離れた場所からゆかを見る。
ゆかはトイレの前で何かを考え込んでいる。
顔色もよくない。
すずは首を傾げた。
(ゆかさん。さっきから何を呟いているんだろう……)
ゆかはすずの視線に気づかない。
頭の中では、すでに今夜のことを考えていた。
これは一人で抱える問題ではない。
女性陣全員で話し合わなければならない。
この家には女性が多い。
だからこそ、早めに確認しなければならなかった。
(今夜、女だけの大会議しよう)
ゆかはそう決めた。
掃除はまだ途中だった。
けれど、ゆかの中では掃除以上に大きな問題が生まれていた。
トイレ掃除の途中で気づいた、避けて通れない問題。
それは、異世界で生活していく上で必ず向き合わなければならないことだった。




