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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第10章『ほほえみデンタル、暮らしと仕事の種まき』

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02.夢が広がる食材

あすかと大和は、真人から預かったお金を握りしめてルイの商会へ足を運んでいた。

目的は白穀の追加購入だった。

昨日、ようやく米の代わりになる食品を見つけた。

そして今朝も白穀おにぎりを食べたばかりだった。

梅。

昆布。

おかか。

白穀は、炊けばほとんど白米だった。

それを知ってしまった以上、2キロだけでは足りない。

大人がこれだけいる。

すぐになくなることは目に見えていた。

大和は歩きながら、預かったお金の入った袋を見る。

あすかも隣を歩きながら商会へ向かった。

ルイの商会の建物が見えてくる。

前に来たときと同じ場所だった。

商会の人が、あすかと大和の姿に気づいて声をかけてくる。

2人は会釈をした。


「えっと……白穀を追加購入したく……」


「ルイ様をお呼びしますね」


従業員はそういって奥へと消える。

あすかと大和は商会の中に入った。

一度、商業ギルドのヤンと来たときは、白穀のことで頭がいっぱいだった。

中をじっくり見る余裕はあまりなかった。

改めて商会の中を見てみると、様々な食品が並んでいる。

見たことのある野菜に似たものもある。

ピーマンのようなもの。

キャベツのようなもの。

そして、なんか白い粉。

あすかはその白い粉を見つめた。


「あれ……小麦粉かしら?」


「小麦粉だったらいいっスね。お好み焼きとか、うどんとか………」


「いいわねぇ……夢が広がる」


「食は大事っスから」


2人は並んで白い粉を見つめる。

本当に小麦粉なのかはわからない。

けれど、小麦粉だったら作れるものが増える。

お好み焼き。

うどん。

粉物。

主食の選択肢が増えるだけで、生活の幅はかなり変わる。

白穀が米の代わりになるように、似たような食材が見つかれば、これまでの食べ方を思い出せる。

2人が食へ思いをはせていると、後ろから声を掛けられた。


「やあ。白穀はどうだったかな?」


あすかと大和は振り返る。

そこにいたのはルイだった。


「ルイさん。おはようございます。……とってもおいしかったです」


「おはようございます。超うまかったっス!!懐かしい味でした!」


ルイは興味深そうに2人を見る。


「ほぉ……。魔力なしの君たちが食べて平気なのか……。ヤンにあとで知らせておくか」


2人は「ハハ」っと笑った。

ヤンの言葉を思い出す。

人格が壊れるのか。

四肢爆散するのか。

あのときの物騒な言葉が頭に浮かんだ。


「おかげさまで五体満足で生きています」


「ま、流通量の少ない食べ物だし、食べ方もあまり知られてないからねぇ……」


ルイは白穀の方へ視線を向ける。

大和もつられるようにそちらを見た。


「西の人とルイさんたちはどう食べてるんですか?」


「西の人たちは炒め物にしたり………。わたしたちはスープの中に混ぜたりして……」


(リゾット的な?)


あすかは心の中でそう思った。

白穀をスープに混ぜる食べ方もあるらしい。

それはそれで食べ方としてはわかる。

ただ、自分たちにとって白穀は米の代わりに見つけた食品だった。

米に近いものなら、水を加えて炊く。

日本人にとって、まず出てくるのはその普通の食べ方だった。


「君たちはどう食べたんだい?」


ルイに白穀をどう調理したか聞かれる。

大和は少し言葉に詰まった。


「どうって……」


大和はあすかの方を見る。

あすかも少し考える。

実際に炊いたのは智子と美里だった。

自分たちは食べた側だ。

それでも、何をしたのかくらいはわかる。


「う~~ん。水を加えてふっくら炊き上げて……。って至ってシンプル」


ルイは少し目を細める。


「ほお……。その食べ方を是非教えていただきたい」


「えっと、うちの料理番長の智子さんと美里さんに聞いていただければ……」


「じゃぁ、ほほえみデンタルに今から行こう」


「え?……でも、2人とも買い物で……」


大和は慌てて言う。

智子と美里は食材の買い足しのために出かける予定だった。

つむぎと大地も一緒に行く。

今からほほえみデンタルへ向かっても、料理番長2人がいるとは限らない。


「そうか……。でも、よい食べ方を知っているならぜひとも広めたい」


あすかと大和は考え込む。

今後も白穀はここで買う予定だった。

白穀の扱いが増えれば、ほほえみデンタルとしても助かる。

商人としておいしい食べ方を知り、それをセールスポイントとして売り上げに貢献させる。

それも自然な話だった。

ただ、料理番長がいないのに勝手に話を進めていいものか。

あすかは少し迷う。

ルイはそんな2人を見る。


「我々は他とは違って、変わったものを仕入れることもできる。この国で食べたことがない食材、あまり流通していない食材とかね」


「はい」


あすかは頷く。

ルイはさらに続けた。


「その料理番長さんに、見ていただきたいものもあってね……」


「見てもらいたいもの……?」


大和が聞き返す。

ルイは少し声を落とした。


「悪魔の化身だよ」


「悪魔……」


2人は同時に呟いた。

ルイは真面目な顔で続ける。


「見た目が不気味でね……。ぬめぬめしてて……。贔屓にしている漁師がどうにかこいつを売り物にしてくれってね……」


「ぬめぬめしている」


あすかが呟く。

大和も考え込んだ。


「漁師……ということは海の生き物??」


2人は足が8本あるとある生き物を頭に浮かべる。

見た目が不気味。

ぬめぬめしている。

漁師が持ってくる海の生き物。

そして、悪魔の化身。

条件だけを並べると、思い浮かぶものはひとつだった。

あすかと大和は顔を見合わせる。

もし本当にそれなら、料理番長に見せる価値はある。

ルイはすでに行く気だった。


「さ、行こうか。白穀はあとでうちの者に運ばせるから」


ルイはそう言い、壺を持った。

あすかと大和はその壺を見る。

中身は見えない。

けれど、悪魔の化身と呼ばれているものが入っているらしい。

2人はルイに言われるままに商会を後にした。


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