05.日本人とお米
「無事ってどういうことや?大和、あすか」
志帆はじっと2人を見る。
「えっとぉ……」
「いや、たいしたことなくって」
真人も2人を見る。
「2人とも?」
あすかと大和は、あう~~とかえっと……とかしか返せない。
目は非常に泳いでいる。
大和は上を見たり下を見たりと分かりやすく動揺していた。
あすかは深いため息をついた。
「……白状します」
あすかは白穀について話し始める。
西の国で栽培しているが、基本魔力を持っている人しか食べないこと。
魔力を持たない人は食べたことがないこと。
食べたらどうなるのかわからないこと。
商業ギルドのヤンというエルフの植物学者が教えてくれたが、食べたらどうなるのか知りたいと言っていたこと。
四肢爆散するのか、人格が壊れるのか……。
あすかと大和は、そこまで伝えた。
「そういう大事なことは言いなさい!!」
「無事だったからよかったものの!!」
「すみません……」
「ほんまやで……」
「まぁ無事だったからいいけど……」
志帆はため息をついた。
「真人さんが亡くなったら、開業したばかりなのに開設者変更とかで大変やったわ」
「志帆さん?」
「愛してるで」
「うん。知ってる」
智子は咳ばらいをしてあすかと大和を見る。
「コホン………。まぁ本当に……全く……」
「魔力を含む白穀か……」
大地がふと声を漏らす。
「まぁ……あながち嘘じゃないのかもしれないですね」
「と、いいますと?」
「ほら、昔から言うじゃないですか。『お米一粒には7人の神様が宿る』って」
「でも、日本のお米を見てもヤンさんもルイさんも魔力を感じないって」
「魔力の有無はわからないけど、僕たちの世界は魔法とは縁遠いし……それを考えると、日本のお米に魔力を感じなかったのは納得いかない?」
「まぁ、そうですね……。7人の神様というのも諸説ありますからね」
「諸説?」
「七福神という説と、土・風・雲・水・虫・太陽・作り手の7つという説です」
すずはへぇっと感嘆する。
直樹はさらに付け加えて説明する。
七福神は言わずもがなな7柱の神様。
恵比寿天、大黒天、毘沙門天、弁財天、布袋尊、福禄寿、寿老人。
土・風・雲・水・虫・太陽・作り手の7つというのは、稲がよく育つ水田を作るための『水』。
稲がよく育つ水田を作るための『土』。
1日しかない稲の開花しない間に受粉を行うための『風』。
お米を食べる害虫ではなく、その害虫を食べてくる益虫の『虫』。
光を当てすぎないための『雲』。
成長欠かせない光、『太陽』。
苦労しながら八十八の手間をかけて愛情込めて米作りをする『作り手』。
「後者の説の場合は、米を育てる米作りにはこの7つの要素が一つでも欠けてしまうと、お米を作ることはできませんからね」
「よく知ってるねぇ……」
「まぁ、小さいころから聞かされていましたからね」
「わかります。僕も実家のばあちゃんやじいちゃんに耳にタコができるほど聞かされましたから」
「……日本人の大事な感覚だと思いますよ。古来日本人はあらゆるものに神が宿る、神になる、と信じてきましたからね。………この『いただきます』という言葉も、命への感謝と人への感謝のための言葉ですからね」
「……忘れがちな気持ちやね……」




