04.白穀、実食の時
「晩御飯の準備ができましたよ~」
智子はクリニックの方へ顔を出し、後片付けをしているみんなへ声をかける。
診療後のクリニック。
器具の片付け。
チェア周りの掃除。
洗い物。
それぞれが動いていた。
その声に最初に反応したのはあすかだった。
「わ~い!!今日のおかずは?」
「生姜焼きと豆腐の味噌汁」
美里が答える。
その瞬間、大和のお腹が盛大に鳴った。
ぐぅぅぅぅぅぅぅ。
あまりにも大きな音に、全員が一瞬止まる。
そして、そのまま笑いが起きた。
「大和くん、すごい音したねぇ」
「ううう……腹減ったっス」
大和はお腹を押さえながらしゃがみ込む。
あすかは笑いながら肩を叩いた。
「そんな盛大に鳴る?」
「仕方ないじゃないっスか~」
その様子を見ながら、真人は小さく笑う。
そして、白穀のことを思い出したように口を開いた。
「さて、白穀を食べてみようか」
その言葉に全員が頷く。
片付けも一段落し、そのまま自宅へ戻っていく。
智子と美里は顔を見合わせる。
そして、笑顔になる。
あのおいしさびっくりするだろうな。
そんなことを思いながら歩いていた。
一方。
あすかと大和は少し後ろを歩いている。
「あ~~~~……どうなっちゃうんだろう」
あすかは小さく呟く。
「怖いっスよ~~……とりあえず、院長に先に食べてもらいます?」
「それがいいかも……」
2人はこそこそと会話をする。
すでに実食済の人物がいるとも知らずに。
自宅へ戻ると、食卓にはすでに晩御飯が並べられていた。
生姜焼き。
豆腐の味噌汁。
キャベツの千切り。
そして、白く輝くご飯。
「おおお!!この色とか輝きはまごうことなき白米!!」
真人は食卓に並んだご飯を見て感動する。
お茶碗に盛られた白く輝く粒。
湯気も立っている。
見た目は完全に白米だった。
あすかもお茶碗を見つめながら頷く。
「こうしてみるとほんとによく知っている白米ですね」
真人は席へ座る。
そして、お茶碗を見ながら口を開いた。
「先に食べていいかな?」
「どうぞどうぞ。院長から食べてください」
大和は即答する。
「ほほえみデンタルのトップですからね」
「先にどうぞ」
智子と美里も続く。
真人は笑いながら箸を持った。
「いっただきま~す」
そのまま白穀を一口食べる。
あすかと大和はごくりとその様子を見守る。
智子と美里はにやける。
真人の口が止まった。
「う………」
あすかと大和は同時に青ざめる。
(ああああ……やっぱり駄目だったんだ)
一方。
智子と美里は期待に満ちた顔で真人を見ていた。
(さぁ、院長。驚いて)
次の瞬間。
真人は勢いよく顔を上げた。
「うますぎる!!!」
その声に、あすかと大和は固まる。
真人はそのまま夢中で白穀を食べる。
噛めば噛むほど甘みが増す。
もうこれだけでいい。
おかずなくてもいける。
真人は幸せそうに白穀を噛みしめる。
「はぁ〜〜〜……生き返る……」
そして箸をいったん置き、大きくため息をついた。
「やっぱ日本人は米なんだよなぁ…」
その様子を見て、あすかと大和も恐る恐る白穀を口へ運ぶ。
智子と美里はニヤニヤしながら見守っていた。
「おいしいよ。これは我々が食べている白米だ」
真人は笑顔で頷く。
その言葉を聞き、ほかのスタッフたちも白穀を食べる。
「あ……おいしい……」
あすかは目を丸くする。
「ほんとッスね」
大和も何度も頷いた。
そのまま、みんな夢中で白穀を食べ始める。
食卓には自然と笑顔が広がっていた。
「2人とも。今日はお米……白穀を見つけてきてくれてありがとう」
真人は改めてあすかと大和を見る。
「いえいえ」
「なんとか見つかってよかったッス」
大和は笑いながら答える。
その横で、智子は白穀を見ながら口を開いた。
「流石に2キロじゃすぐなくなっちゃうから、明日追加で買って来てよ」
「ですよね~……わかりました」
あすかは苦笑しながら頷く。
その時だった。
「ヤンさんに無事ですよって報告もしないといけないッスからね」
大和が何気なく口を開く。
「大和!!バカ!!」
「あ……」
大和は固まる。
その瞬間。
全員が大和とあすかの方を見る。
「……ん?無事?」
真人は首を傾げた。
「どういうことや?」
志帆もじっと2人を見る。
あすかと大和は顔を引きつらせる。
「アハハハハ……」
2人は笑ってごまかした。




