03.まごうことなき白米
智子と美里は白穀おにぎりを口にふくむ。
梅干しの酸味。
塩気。
そして――。
「……こ……これは!!」
智子は目を見開いた。
美里も、おにぎりを持ったまま固まっている。
「なんということでしょう!!」
噛めば噛むほど口の中にひろがっていく甘み。
口の中でほどけていく白穀。
お腹に入っていくっていうより、身体に染みてく感じがする。
シンプルな梅干しおにぎりだが美味しい。
もうこれだけでいい。
おかずなくてもいける。
智子はおにぎりを見つめる。
粒立ってる……!
ちゃんと一粒一粒うまい……!
美里も無言で何度も頷いていた。
なんか身体が“これ知ってる!”って喜んでる気がする。
これだよこれ!って感じする……
智子は目を閉じる。
「……あ゛〜〜〜〜。やっぱ白米うめぇ……」
智子と美里は白穀おにぎりを噛みしめながら幸せに浸っている。
炊き立て。
熱々。
梅干しの酸っぱさ。
そして白穀そのものの甘み。
見た目だけではなかった。
これは本当に白米だった。
智子はおにぎりを見ながら頷く。
「これは日本人がよく知っている白米だわ」
美里も真顔で頷いた。
「えぇ、これはまごうことなき白米です」
2人は再びおにぎりへかぶりつく。
海苔の香り。
塩気。
白穀の甘み。
噛むたびに幸せが広がっていく。
美里はおにぎりを食べながら口を開く。
「お試しに2キロしか買ってきてないって言ってたから……」
「10キロくらい買ってきてもらいます?」
「お店の方に在庫があればね」
「まぁ、それはそうですよね」
美里は納得しながら頷く。
しかし、また白米が食べられる。
それだけでかなり大きかった。
智子は最後の一口を食べる。
そして、ふぅ……と息を吐いた。
「さて、それはさておき……証拠隠滅するよ」
「そうですね」
2人はすぐに動き始める。
智子と美里は先に白穀を味見……毒見した痕跡を消す。
ラップを片付ける。
使った皿を洗う。
海苔を戻す。
炊飯器の中身も整える。
美里は真剣な顔で頷く。
「わたしたちは毒見をしただけ」
「はい。毒見です。あくまでも」
智子も真顔で返した。
2人は何回も毒見だと言い聞かす。
決して、つまみ食いではない。
あくまでも安全確認。
毒見。
智子は炊飯器を見ながら口を開く。
「このおいしさだと炊き込みご飯もいいね」
「あ~~~~~いいですね!!」
美里の目が輝く。
智子は小さく笑う。
「………しっかし、お肉とか野菜とかも減ってきたし……、明日休診だから市場に行こうか」
「そうですね。なんだかんだでゆっくり市場見たことないですしね」
異世界へ来てから、毎日が慌ただしかった。
開業準備。
診療。
食材も最低限の買い足しばかりだった。
市場をゆっくり見る余裕はなかった。
智子と美里は晩御飯の準備のためテーブルに並べる。
生姜焼き。
みそ汁。
キャベツの千切り。
そして、炊き立ての白穀。
湯気が立ち上っている。
美里は並べ終わった食卓を見ながら頷いた。
「さて、みんな呼んできますか」
「そうだね」
智子は笑う。
白穀のおいしさに驚く姿を想像してクスリと笑う。




