09.白穀とエルフ
しばらくして、秘書らしき人物が小さな麻袋を持って入ってきた。
静かにルイの横へ置くと、そのまま一礼して部屋を出ていく。
「お待ちかねの白穀だよ」
ルイはそう言うと、麻袋のふちを折り曲げて中身を見せた。
あすかと大和は同時に身を乗り出す。
「……確かに似てるかも」
「……というか姿かたちは米っスね」
麻袋の中には、白い小さな粒が入っていた。
見た目だけなら、ほとんど米だった。
粒の形も大きさも近い。
あすかと大和は思わず顔を見合わせる。
「……どうかな?」
ルイが2人へ問いかける。
あすかと大和は、お互いに顔を見合わせてから目を閉じた。
見た目は同じ。
においはわからないが、多分似ている気がする。
ルイとヤンは米から魔力を感じないと言っていた。
しかし、白穀からはその魔力というものを感じない。
ただ、ただの日本人が魔力というものを持っているわけもないので、当然感じ取れるわけもない。
「う~ん……特に魔力というものはわからないのですが………」
「そもそも魔力がない人が食べたらどうなるんですか?」
そう。
問題はそこである。
魔力を持っている人しか食べていない。
魔力持ちの人の回復穀物。
魔力のない人が安全に食べられるのかが疑問だった。
「………魔力のない人が食べたら………ですか」
ヤンが眼鏡をくいっと持ち上げる。
少し思案してから口を開いた。
「………魔力のない人が食べたら……」
「食べたら……?」
2人は生唾をゴクリと飲み込む。
もしかしたら四肢爆散する?
溶けてなくなる?
恐ろしいことを想像する。
「……前例がないので知りません」
「え?」
2人は同時に間の抜けた声を出した。
ヤンは淡々と続ける。
「………魔力もちの人が主に食べるものとして広まっているので、魔力のない者たちはなんとなく敬遠しているんです。主に食べるのが西の国の人やエルフぐらいなので……」
「……そんな売れるかわからないものをなぜここで取り扱っているんですか?」
2人はまったく同じタイミングで口にした。
ルイは一瞬きょとんとしたあと、ふっと笑う。
「あぁ、実は私とヤンはエルフなんですよ」
「ええぇえええええ!!」
ルイはそう言うや否や耳を見せる。
先ほどまでは丸みを帯びていた耳が、エルフの特徴を携えた耳へと形を変えた。
「なぜ……さっきまで……」
「エルフだとバレると、冒険者とかがやって来て一緒にダンジョン攻略しようと誘ってくるんですよ」
ヤンは深いため息をつく。
ルイも肩をすくめた。
「そ、エルフは優れた魔法の使い手だからね。私とヤンは魔法なんかに興味ないんでね」
「面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだからね」
耳の形を元に戻しながら、ヤンは深く頷いた。
その様子から、過去に色々あったように思える。
「あはははは………大変ですね」
「ほんとっスねぇ……」
あすかと大和は乾いた笑いを浮かべるしかなかった。




