08.白穀を扱う商会
奥から一人の男が歩いてきた。
片眼鏡をつけている。
青い髪がとても鮮やかだった。
男は笑顔でヤンへ近づく。
「やぁ、ヤンどうした?」
「今日の用事は私ではなく、こちらの方たちだ」
ヤンは後ろに控えているあすかと大和を会長へ紹介する。
突然視線を向けられ、あすかは少し背筋を伸ばした。
「は……はじめましてあすかです」
「はじめまして。大和です」
「初めまして、私はルイと申します」
ルイは2人へ手を差し出す。
あすかと大和は少し慌てながら握手をした。
ルイの手は柔らかかった。
「立ち話もなんだから、奥の部屋で話をしよう」
ルイはそのまま3人を連れて歩き出す。
商会の奥へと足を運ぶ。
途中、帳簿を抱えて歩いている職員や、荷物を運んでいる者たちとすれ違った。
商会の中は忙しそうに動いている。
連れてこられた部屋は商会の応接室だった。
落ち着いた雰囲気の部屋で、中央には大きなテーブルとソファが置かれている。
「どうぞ」
ルイに促され、4人はソファへ座る。
そのあと、秘書らしき人物が4人に飲み物を出しにきた。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
秘書らしき人物はペコリとお辞儀をして部屋から出ていく。
扉が閉まる。
それと同時に、ルイが口を開いた。
「さて、どうしたのかな?」
あすかと大和は顔を見合わせる。
どこから説明するべきか迷っていた。
すると、その空気を感じ取ったのかヤンが口を開く。
「ほほえみデンタルって知っているか?」
「あぁ、いつのまにかできた……治療施設だっけ?」
「そこの従業員がコメというものを探していて、ルイのところで取り扱っている白穀に似ているかもしれないから実物を見たいとのことだ」
「白穀を???……この二人から魔力を感じないが?」
ルイはあすかと大和を交互に見る。
ヤンも2人を見て頷いた。
「えっと……これ、わたしたちが普段食べている米というものなんですけど……」
あすかは袋から白米を取り出し、ルイへ差し出す。
ルイは白米を受け取ると、じっくり観察した。
「……ふむ……形は確かに白穀に似ている。しかし……魔力は感じない」
ヤンの時と同様、においを嗅ぐ。
そしてそのまま口に含んだ。
「………」
大和は少し落ち着かない様子で口を開く。
「えっと、その米が底を尽きてしまいまして……。米に代わる主食を探していまして……」
「同じものとは思っていないのですが……その、白穀というものがもし、米に似ていたら売ってほしいなぁ…と」
あすかと大和の緊張した声に、ルイはふっと笑顔になる。
「そんなに量はないが、白穀を持ってこさせよう」
ルイはそう言ってベルを鳴らす。
すぐに扉が開き、先ほどの秘書らしき人物が現れた。
ルイは秘書へ耳打ちをする。
秘書は静かに頷き、お辞儀をして部屋から出ていった。
「同じものだといいね」
ルイは笑顔を2人へ向ける。
あすかと大和は思わず顔を見合わせた。
ここまで来て、ようやく本当に米に近いものへ辿り着けるかもしれなかった。




