06.コメに似たもの
「この人が穀類に詳しいヤンさんだよ」
アンナが横に立つ男性を紹介する。
眼鏡をかけた白髪の男性――ヤンは、軽く会釈をした。
「初めまして。ほほえみデンタルの人達。アンナさんから聞いてますよ。何でも歯をなくすお手伝いをしているとか」
「アンナさん!!」
あすかが勢いよくアンナを見る。
アンナはあははと笑いながら手を振った。
「あ~ごめんごめん。昨日仲間内にあんたたちんところの治療の感想を伝えたときに、分かりやすく言ったんだけど………」
「違うっスよ!!歯はあるっス!!えっと……歯石除去といって歯にこびりついているかった~い石みたいなのを……」
大和は慌てて説明する。
しかし、ヤンは落ち着いた様子で頷いた。
「えぇ、分かっていますよ。だってアンナの歯はありますからね。……ただ、まぁほかの職員が少々怖がっておりまして…………」
その言葉を聞き、あすかと大和は同時にがっくりと肩を落とした。
「うわぁ……」
「こりゃぁ、患者はなかなか増えね~ぞ」
アンナは昨日の開業初日に、一部歯石除去をして歯がすっきりしたことに感動してくれていた。
ほかの人にも広めようとしてくれたんだろうけども。
歯がなくなるは流石に……。
「大和……頑張ろうね」
「ここから帰ったら、院長にデンタルクリニックの売り込み計画の相談しましょう」
医療ギルドがほほえみデンタルの治療とかの説明に全面協力してくれることを約束しているとはいえ、それだけは厳しそうだ。
アンナは申し訳なさそうに頭をかく。
「ごめんごめん………ちゃんと誤解は解いておくから」
「お願いします」
2人は同時に頭を下げる。
ヤンはその様子を見ながら、小さく咳払いをした。
「さて、アンナから軽く話は聞いています。コメというものを探しているらしいですね」
「はい」
あすかは返事をすると同時に、米の入った袋を取り出した。
袋の口を開き、中身をヤンへ見せる。
「精米………加工した後の状態だからこうなる前の状態とは違うけど……」
ヤンは袋の中から米を少し手に取る。
白い粒をじっと観察したあと、軽くにおいを嗅いだ。
そして、そのまま生の米を少し口に含む。
「あ、生の状態では………」
大和が慌てて声を上げる。
しかしヤンは気にした様子もなく、そのまま少し考え込んだ。
「………ふむ………同じかどうかはわかりませんが、西の国にある物に似ているかもしれないですね」
「え?」
「あるんっスか?米」
あすかと大和が同時に身を乗り出す。
ヤンは静かに頷いた。
「……米……という名前ではないですが、“白穀”という物です」
「白穀………」
「響き的には似てそうっスね」
アンナも腕を組む。
「聞いたことないね~」
「えぇ、それはそうですよ。白穀は魔力を持つものしか食べれないものなので」
「………え?」
「魔力を持つものしか食べれない?」
2人は同時に固まる。
ヤンは淡々と説明を続けた。
「はい。白穀は微量な魔力を含んでおりまして……。魔力を持つものが食べると魔力が回復する穀類なんです。……魔力を持っているものは少ないので……。西の国であれば魔力もちも多少いるのですが、ここの国は………いろんな種族がいるとはいえ、魔力もちは少なく実に限定的です」
あすかはヤンを見る。
「………よく、食べましたね。生米」
「魔力の気配を感じなかったので」
ヤンは何でもないかのように答えた。




