03.主食探しの救世主
受付のお姉さんに簡単な地図を描いてもらい、あすかと大和は商業ギルドへ向かっていた。
手描きの地図には、大通りや目印になる建物が簡単に描かれている。
大和はその地図を見ながら歩いていた。
「商業ギルドね~」
あすかが腕を組みながら呟く。
「いろんな人が集まって探し人とか依頼とかなら冒険者っスけど……」
「わたしたちが探しているのは穀物。となると冒険者より商業よね」
2人はうなずく。
米。
もしくは米に似た穀物。
それを探すのが今回の目的だった。
街の外へ出るわけでもない。
魔物討伐をするわけでもない。
ならば、流通や取引に詳しい商業ギルドの方が情報を持っている可能性は高い。
大和は地図を見ながら歩く。
「なんか本当に情報収集って感じっスね」
「院長からの正式任務だからね」
「主食探し任務……」
「かなり重要よ?」
「それはそうっス」
大和は真面目な顔でうなずく。
実際問題、白米が消えた食卓はかなり深刻だった。
朝も主食なし。
昨晩も騒ぎになっていた。
ほほえみデンタルにとって、白米問題はかなり重要度が高い。
2人は歩きながら、ふと同時に首を傾げる。
「……………」
「……………」
何かを忘れているような気がする。
商業ギルド。
どこか引っかかる。
大和が先に口を開いた。
「商業ギルド………なんか重要なことを忘れているような……」
「あ、大和も?……わたしもなんか忘れているような気がして……」
2人はう~んと声を上げる。
しかし、何を忘れているのかがわからない。
地図を見てもわからない。
商業ギルドという単語を聞いても、何か引っかかるだけだった。
「なんだったっスかね~……」
「う~ん……」
そのまま2人が考え込みながら歩いていると、後ろから聞き覚えのある声がした。
「あれ?ほほえみデンタルの従業員じゃないか。今日は休みなのかい?」
2人は同時に振り返る。
そこにはアンナが立っていた。
内覧会にも来てくれて、開業日にも来院してくれた一番最初の患者だった。
いつも通り元気そうな顔をしている。
「あ、アンナさん……おはようございます」
あすかが軽く頭を下げる。
「クリニックはやってるんっスけど、俺たちは今日特別休暇っス」
大和もそのまま説明する。
「そうかい……。なんか深刻そうな顔してたけど……大丈夫かい?」
アンナが少し心配そうに2人を見る。
あすかはすぐに笑顔になる。
「個人的なことなので問題ないです」
「そうかい?」
「はい。今から商業ギルドにちょっと用があって……」
その言葉を聞いたアンナが首を傾げる。
「うちに?」
「ん?」
「え?」
アンナの言葉に、あすかと大和は同時に固まる。
うち?
商業ギルド?
アンナ?
そこまで考えた瞬間、2人の頭の中で一気に記憶がつながった。
患者第一号のアンナ。
商業ギルドの副ギルドマスター。
その事実に。
「あ~~~~!!!!アンナさん!!」
「そう!そうっすよ!!」
「え???なんだい?」
アンナは突然叫び出した2人を見て目を丸くする。
「アンナさ~~~~ん!!」
あすかは勢いよくアンナに抱き着く。
「教えて~~~~!!」
大和もアンナに抱き着く。
「えっ!?ちょっ……なんだいなんだい!?」
突然左右から抱き着かれたアンナは、何が何だかわからない。
しかし、とりあえず2人の頭をなでる。
「よしよし。落ち着きなって」
あすかはアンナへしがみついたまま口を開く。
「米を……!」
「主食を探してるんっス!!」
「……………米?」
アンナはさらに困惑した顔をする。
それでも、2人が真剣なのは伝わっていた。
あすかと大和は、まるで最後の希望を見つけたような顔でアンナを見上げていた。




