02.ヘイジョウキョーの情報収集
あすかと大和は、冒険者ギルドの中へ入っていく。
朝の冒険者ギルドは相変わらず賑やかだった。
依頼書を見ながら話し込んでいる冒険者。
朝から酒を飲んでいる者。
受付へ並ぶ者。
武器を背負ったまま出入りする者。
さまざまな人が行き交っている。
その中を、あすかと大和は受付へ向かって歩いていく。
受付にいるのは、冒険者ギルドに初めて登録したときにランクや昇格条件を優しく丁寧に教えてくれたお姉さんだった。
今日も変わらず、にっこりした笑顔を浮かべている。
犬族特有の耳としっぽもぴこぴこと動いていた。
あすかの視線が吸い寄せられる。
「あ~~~……かわいい。耳としっぽをモフモフしたい」
大和は即座に突っ込む。
「セクハラになるからやめてくださいッス」
「やらないわよ!失礼ね!」
あすかは反射的に返す。
しかし視線は完全に耳としっぽへ向いていた。
大和はその様子を見ながら小さく苦笑する。
「なんというか……ゴールデンみたいな穏やかな目をしてますよね~」
「はぁ…はぁ……」
「あすかさん?」
「大丈夫。耐えてるから」
大和は少し引いた目を向ける。
あすかは両手を握りしめながら、必死に理性と戦っていた。
「初めて会ったときがよく我慢できましたね」
「初めての時はそれどころじゃなかったから。今日は2回目よ?もはや常連よ」
「たかが2回来たぐらいで常連ぶってほしくないっス」
あすかは大和の横で、手のひらに人の文字を何回も書いて飲み込んでいる。
大和は、そのまじないは違うと心の中で突っ込む。
しかし、今のあすかには何を言っても無駄だと思い、口にはしない。
受付前にはそれなりに人が並んでいた。
自分たちの番に早くならないかな~と心の中でつぶやく。
その間も、あすかの視線はちらちらと受付のお姉さんへ向いていた。
大和はため息をつく。
「ほんと好きっスね……」
「だってかわいいじゃない……」
「まぁ、それは否定しないっスけど」
犬族の受付嬢は、別の冒険者への対応を終えると、次の受付へ視線を向けた。
そして、あすかと大和に気づく。
ぱっと表情が明るくなる。
「あ、ヘイジョウキョーのお二人。この間は側溝掃除ありがとうございます。依頼人がとてもよろこんでいました。また機会があったら是非お願いしたいとのことです」
「よかったっス」
大和が素直に返事をする。
「ふ~~~~……。ええ、本職がお休みの時に是非」
あすかも返事をする。
その瞬間、大和は心の中でつぶやく。
(あ、仕事スイッチ入った)
あすかは何とか気持ちを切り替えた。
先ほどまで耳としっぽへ向いていた視線も、今はしっかり受付嬢へ向いている。
ヘイジョウキョー。
それが、あすかと大和のパーティー名だった。
パーティーは2人からチーム編成ができる。
登録時、パーティー名を何にするか問われた。
そのとき、あすかと大和という名前だったこともあり、『平城京』にしようとなった。
特に深い意味はない。
なんとなく語感だった。
しかし、受付側にはしっかり『ヘイジョウキョー』として認識されている。
あすかは小さく咳払いする。
「えっと、今日は仕事というよりは個人的な情報収集なんだけど……」
「はい。何でしょう」
受付嬢はにこやかに返す。
大和が口を開く。
「米を探していて……」
その言葉と同時に、あすかが袋を受付に差し出す。
「これと同じ……もしくは似たようなものを知らないかなって………」
受付嬢は袋を受け取る。
そして中に入っている米を少しだけ手に取った。
白い粒を不思議そうに眺める。
そのあと、軽くにおいを嗅いだ。
「う~ん………もしかしたら商業ギルドの方が詳しいかもしれないです」
「あ、商業……」
「たしかに……なんか取引してるかもっスね」
大和も頷く。
冒険者ギルドは討伐や採取などの依頼が中心だ。
食材流通や物品取引になると、たしかに商業ギルドの方が強い可能性がある。
「すみません。お力になれず」
受付嬢は申し訳なさそうに頭を下げる。
「いやいやいいんっスよ」
大和はすぐに返す。
あすかもそのまま頷いた。
「よし。商業ギルドに行くわよ!」
あすかと大和は手を取り頷く。
その勢いのまま動き出そうとした瞬間、受付嬢が首を傾げた。
「商業ギルドの場所わかりますか?」
「……………」
「……………」
2人の動きが止まる。
あすかと大和は顔を見合わせた。
大和は一度行ったことがある。
思い出そうと頭をひねるも覚えていなかった。
そして、小さな声で同時につぶやく。
「道を教えてください……」




