06.白米危機
1時間弱に及ぶ説明動画の視聴はおわった。
待合室にはしばらく静かな空気が流れていた。
テーブルの上には食べ終わった皿や、すっかり冷めてしまった料理が並んでいる。
「う~ん……今回の改正はこうなんていうか……」
真人が腕を組みながら口を開く。
「難解なものは少なかったね」
志帆がそのまま続ける。
動画は概要なだけで全体ルールの把握は告示と通知を見ないとわからない。
「でも、あいまいだったルールを明確にしたとかありましたね」
大地が画面を見ながら言う。
「届出に関しては……そもそも異世界なので出せるかどうか怪しいのですが……」
直樹が眼鏡を上げながらつぶやく。
真人はその言葉にうなずく。
日本にいたときは関東信越厚生局に提出すればよかった。
しかし、今は異世界だった。
異世界に厚生局があるとは思えない。
オンラインで届出を提出できるものもあるが、オンラインで出せたとしても同じである。
本当に提出ができるのか。
オンライン資格確認が使える謎はあるが、もうそれはそういうものだとして考えないことにしている。
(資格確認が使えるから……もしかしたらできるのかもしれないけど……。いやいやたらればは考えないようにしよう)
真人は目をつむり一人うなずく。
そして、すっかり冷めてしまった料理に箸を運ぶ。
「うん。冷めちゃったけどおいしい」
真人が唐揚げを食べながら言う。
「は~食った食った………。お腹いっぱいっス」
大和が満足そうに椅子へ寄りかかる。
「あんた……ずっと食べてたわね」
陽菜が呆れたように言う。
「ちゃんと動画もみてました~」
大和がそのまま返す。
陽菜はハイハイっと軽く返事をする。
「信じてないっスね~」
大和が抗議する。
その横で、直樹はTVの電源を切り食事をとる。
「おいしい食事をとれることに感謝しないとね」
真人が味噌汁を飲みながら言う。
「そうそう。日々感謝ッス」
大和も大きくうなずく。
「………それはそうと、院長」
智子が真人を見る。
「なに?」
真人も智子を見る。
「残念なお知らせが」
智子が真人の方に体を向ける。
「………お米が底をつきました」
白米が底をつきた?
一瞬、待合室の空気が止まる。
「えぇぇぇぇえええ!!!」
全員が声を上げる。
「はい。とうとうなくなりました。明日からの主食はなしです」
智子が静かに告げる。
「大和くん、あすかくん!!」
真人が勢いよく二人を見る。
「はい!」
「はい!」
大和とあすかが同時に返事をする。
「明日、2人は歯科医院の仕事をお休みして冒険者ギルドの方へ!米に代わる主食を必ず手に入れてくるように!」
真人がそのまま指示を出す。
「アイアイサ~」
「合点!!」
大和とあすかは勢いよく返事をする。
待合室には再び慌ただしい空気が広がっていた。
次章
第8章 『ほほえみデンタル、主食を探して』は、
5月26日 (火)17時より投稿を開始します。
どうぞ、お楽しみに。




