03.改定のお知らせ
直樹がリモコンを操作し、そのままテレビの電源を入れる。
暗かった画面がゆっくりと明るくなる。
そのまま画面が切り替わる。
テレビには『重要なお知らせ』とでかでかと文字が出ている。
「重要なお知らせ?」
真人が不思議そうに呟く。
直樹はリモコンを操作して重要なお知らせをクリックする。
するとページが切り替わる。
画面には『令和8年度診療報酬改定について』と表示されていた。
「え?改正について?」
志帆が目を見開く。
直樹が画面を動かしていく。
すると『令和8年度診療報酬改定の概要(歯科)』と書かれたPDFのファイルが表示される。
「これですね……」
直樹がそのファイルをクリックする。
次の瞬間、データが開かれる。
「え???」
真人が思わず声を漏らす。
「え?ここ異世界ですよ?」
大地も画面を見たまま口を開く。
「改正対応あるの!?」
智子も思わず声を上げる。
異世界に来たから関係ないと思っていた。
でもモニターには改正のお知らせ。
「………これは……どういう」
直樹は画面を見たまま小さく呟く。
「う~ん……概要……あ、でもなんか動画もある」
真人が画面を見ながら言う。
直樹もすぐに確認する。
「……見れそうですね。歯科に関する内容であれば約1時間ですね」
「みんな……見る?」
真人が振り返りながら声をかける。
「見ます!」
大地がすぐに答える。
その言葉に、ほかのスタッフたちも次々とうなずく。
「気になります」
「ここまで出てたら見たいです」
「むしろ見ないと怖いですよね……」
「あの改定、本当に来るんですね……」
スタッフ全員が画面を見つめている。
真人はその様子を見て、にっこり笑う。
「じゃあ早めに掃除を終わらせて一緒に見ようか」
「はい!」
全員がそろって返事をする。
「じゃぁ、夕ご飯もこちらで食べましょうか」
智子がそのまま口を開く。
「そうだねぇ………おなかもすいたし、お行儀悪いけど食べながら見ようか」
志帆も続ける。
「では、ミーティングルームの机といすをこちらに持ってきて準備しておきます」
直樹が待合室を見回しながら口を開く。
その言葉を聞いて、すずとつむぎもすぐに声をかける。
「待合室の椅子とか端っこに寄せておきますね」
「わたしも手伝います」
「ありがとう」
直樹が短く返す。
そのまま、それぞれが持ち場へ戻っていく。
陽菜はチェアサイドへ戻る。
大和は器具を片付けながら、美里に再び声を掛けられていた。
「だからちゃんと順番に片付けてって言ったよね?」
「すみませんって!!」
しおりとゆかは床掃除を再開する。
すずとつむぎは待合室の椅子を動かし始める。
智子は夕食の準備をするため、そのまま裏へ向かっていく。
真人はその様子を見ながら、もう一度テレビへ視線を向ける。
画面には変わらず『令和8年度診療報酬改定について』の文字が表示されていた。
「まさか異世界で改定対応するとはなぁ……」
真人が小さく呟く。
「本当にですよねぇ……」
その横で大地も苦笑する。
掃除の音と椅子を動かす音が待合室に広がっていく。
その中で、テレビの画面だけが静かに光っていた。




