08.それは遊具じゃなかった
つむぎとすずとゆかの三人は、そのまま足を止めずに入口を抜け、外へと出る。
「うわ……風強い!!」
外に出た瞬間、つむぎの髪が大きく揺れる。
体ごと押されるような風の中で、思わず目を細める。
「うう………砂埃が……」
すずは顔をしかめながら腕で口元を覆う。
細かい砂が風に巻き上げられ、視界の端をかすめていく。
「ねぇ空を見て!!」
ゆかが空を見上げたまま声を上げ、指を差す。
その指の先を追うように、つむぎとすずも同時に顔を上げる。
「……あれは……」
つむぎの声が小さく漏れる。
「だ……大地先生~~~~~!!!」
すずがその場で声を張り上げる。
風に流されながらも、その声だけが真っ直ぐに響く。
その声に反応するように、中から足音が近づいてくる。
扉が開き、大地が外へ出てくる。
「どうしたの!?」
ゆかがそのまま空を指さしたまま言う。
「空に……空に大きな生き物が!!」
つむぎが目を細めたまま続ける。
「生き物っていうかドラゴン?」
大地がその言葉に反応する。
「なんでそんな冷静なの?」
つむぎは視線を外さずに答える。
「慌てても何も起きなくないですか?」
大地は一瞬だけ言葉を止め、そのまま小さく頷く。
「………うん」
苦笑いを浮かべたまま、再び空を見上げる。
その場にマリアとクレイも出てくる。
風に髪を揺らしながら、同じ方向を見上げる。
「あらあら大変」
マリアが穏やかに言う。
「ロックがなんで?」
クレイは目を凝らすようにして空を見る。
大地がその言葉に反応する。
「あのドラゴン……知っているんですか?」
クレイは頷く。
「うん。学校で飼育しているアースドラゴンのロックだよ」
ゆかが思わず声を出す。
「ドラゴンって飼育できるの?」
クレイは当然のように答える。
「1000年前からいます」
つむぎが小さく呟く。
「結構重鎮」
その会話の流れの中で、智子がゆっくりと口を開く。
「………もしかして、ドラゴンスライダーって……」
クレイは迷わず答える。
「うん。ロックの背中からしっぽを伝ってかっこよく着地する遊びだよ」
その説明を聞いた大地と智子の思考が一瞬止まる。
(遊具の名前じゃなくて本物のドラゴンのことだった!!)
上空ではアースドラゴンが大きく旋回しながら、ゆっくりと高度を下げていく。
その影が地面をなぞるように移動し、建物の上を覆っていく。
「……あの大きさが下りてきたらつぶれちゃいますね」
つむぎが淡々と口にする。
「すごく冷静に怖いこというね」
ゆかがすぐに返す。
クレイが前に出る。
風に向かって声を張る。
「ロック~~~!!ここは学校じゃないからそのサイズじゃだめだよ~!!!」
その声が届いたのか、上空のドラゴンの動きがわずかに変わる。
そのまま降下しながら、体の大きさが少しずつ縮んでいく。
高度が下がるにつれて、影の広がりも小さくなっていく。
やがて、ほほえみデンタルの前へ降り立つ頃には、最初とは比べものにならないほど小さな姿になっていた。
「……象さんくらいの大きさになりましたね」
すずがぽつりと呟く。
「……ちょうどいいサイズ……?」
ゆかがその言葉に疑問を返す。
クレイはそのまま駆け出す。
「ロックいい子!!」
ロックの前まで走り寄ると、そのまま立ち止まり見上げる。
ロックはゆっくりと頭を下げ、クレイの顔を覗き込む。
「あらあら……もしかしてクレイを心配して?」
マリアがその様子を見ながら言う。
「がうぅぅ……」
ロックが低く鳴く。
クレイがそのまま言葉を返す。
「ロック………。ごめんね!!心配かけて……もうあんな遊びしないから!!」
ロックがもう一度小さく鳴く。
「がうぅぅ」




