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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第6章『ほほえみデンタル、日常と非日常』

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06.歯を守るために

チェアの上で口を開けたままのクレイの様子を見ながら、大地がライトの位置を少しだけ動かす。

視線を口元へ落とし、確認を終えてから顔を上げる。


「う~ん……根っこは大丈夫そうだね。多少ぐらついてるけど、固定しておけばもとに戻ると思うよ」


クレイが不安そうに目を動かす。


「……ほんと?」


大地はそのまま頷く。


「本当本当。ぐらついているのが気になっても触らないこと。いいね?」


クレイは小さく返事をする。


「……はい」


大地はクレイの口元を指で示しながら、状態を短く説明する。

動いている歯と、動いていない歯。

触れたときの違いと、今の状態。


一通りの説明を終えると、受付の方へ視線を向ける。


「マリアさん、少しよろしいですか?」


呼ばれたマリアが診療室へ入ってくる。

クレイの横へ立ち、その様子を見下ろす。


大地が説明を続ける。


「歯は抜けていないんですが、抜けかかっている状態です」


マリアが静かに頷く。


大地は続ける。


「ぐらついていない歯と一緒に固定します。ぐらつきが収まるまで、2週間~数か月は固定したままになります」


マリアの視線がクレイの口元へ向く。


大地はさらに言葉を重ねる。


「その間、ぐらついている歯はなるべく触れないようにしてください」


マリアが小さく息を吐く。


「まぁ……大変なのですね」


大地は少しだけ間を置く。


「固定装置を外したあとも、組織の安定を見るために定期的な受診をお願いしたいです」


マリアが顔を上げる。


「そうなんですね」


大地は続ける。


「仮に歯が抜けたとしてもどうにかなりますよ……まぁ状況にもよりますが」


マリアの声が少し上がる。


「まぁ!!」


智子が横から模型を持ってくる。

歯の形を示しながら指を当てる。


「抜けた場合は、なるべく歯の頭の部分……ここですね。ここを持ってください」


模型の先端を指で示し、持ち方を見せる。


大地が続ける。


「……専用の保存液……はたぶんないだろうから………。牛乳に入れて、30分~60分以内にここに持ってきてもらえれば元の位置に戻せる可能性はあります」


マリアは驚いたように目を見開く。


「元に戻せるかもしれないんですね!!」


大地は一度だけ視線を落とす。


「……えっと多分今までも同じことがあったと思うのですが……どうしていたんですか?」


マリアはすぐに答える。


「教会にいって治癒魔法をかけてもらっていましたが……でも、だいたい具合が悪くなるので最終的に歯を抜くことになります」


智子が小さく呟く。


(この国は最終的に歯を抜いて原因を排除なんかい!)


大地が短く返す。


「……そ………う…ですか」


マリアはそのまま言葉を続ける。


「夫にもそれを伝えますわ!」


大地が顔を上げる。


「マリアさんは医療ギルド関係者ではないんですね」


マリアが首を振る。


「あ、わたくしは医療ギルド副ギルドマスターですわ」


智子の声が上がる。


「え!?」


大地が一瞬だけ止まり、すぐに言葉を返す。


「夫婦で?!……あ、いやここも夫婦で院長と副院長だからあり得るか」


マリアは穏やかに続ける。


「とはいえ、わたくしは主に医療ギルドにいるわけではないんですの」


智子が聞き返す。


「え?……ではどこに?」


マリアは答える。


「学校の医務室にいます」


大地が頷く。


「……怪我した子の手当とかですか?」


マリアも頷く。


「はい。そうです……簡単な傷の手当手とか……。大怪我した子は教会に連れて行ったりとかしています」


大地が軽く息を吐く。


「そうなんですね……あ、そうださっそくクレイ君の処置をしますね」


大地はチェアをゆっくりと倒す。

ライトの位置を合わせ、器具を手に取る。


クレイはそのまま口を開ける。

動かずに、そのまま待つ。


マリアはその横で、手元の動きを見ている。

器具の先が歯に触れ、固定の準備が進んでいく。

その手さばきを、目を離さずに追っていた。

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