04.突然の来院者
レントゲン室の扉が開き、美里が満足した様子で外へ出てくる。
「いやぁ……満足のいく画角で撮影してもらいました」
その後ろから真人が続き、肩を落としたまま言う。
「時間かかった……」
さらに直樹も出てきて、短く息を吐く。
「まさかこんなにかかるとは………」
三人の様子を見た受付のスタッフは、顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。
大地がそのまま声をかける。
「………お疲れ様です」
つむぎがカウンターの奥から顔を出す。
「ごはんありますけど……食べますか?」
美里がすぐに手を上げるように返す。
「たべる~」
直樹も軽く頭を下げる。
「いただきます」
真人が顔を上げて志帆を見る。
「今日のご飯はなに?」
志帆は一度だけ考えるように間を置いてから答える。
「えっと…………。豚の生姜焼きや」
その言葉を聞いた瞬間、真人の声が弾む。
「やった!!生姜焼き大好き!!」
真人はそのまま直樹と美里へ視線を向け、三人で受付を離れる。
裏手にある琴吹家へ向かい、そのまま扉の向こうへ消えていく。
三人の姿が見えなくなると、クリニックの中ではすぐに次の準備へと動きが切り替わる。
ゆかがカウンターの前で腕を組みながら、ぽつりと呟く。
「………う~ん……特に問題なく今日が終わればいいかな?」
その言葉に、つむぎがすぐ反応する。
「そういうの口に出さない方がいいですよ」
すずも続ける。
「そうですよ……」
ゆかは軽く笑って肩をすくめる。
「ごめんごめん。まぁ、でもそんなすぐ問題なんて起きないって」
つむぎはすぐに返す。
「いや、それこそフラグ」
受付の中では、それぞれが持ち場に戻りながら準備を進めていく。
器具の位置を確認し、帳票を揃え、次に来る動きを頭の中でなぞる。
冗談を言い合いながらも、手は止まらない。
そんな平和な午後。
入口の扉が勢いよく開く。
一人の女性が、子どもを抱えたまま中へ飛び込んでくる。
「すみません!!!子どもが!!子どもが歯をぶつけて!!!」
声がそのまま受付へ届く。
準備していた手が止まり、視線が一斉に入口へ向く。
智子がすぐに前へ出る。
「大地先生。子どもが歯をぶつけたらしいです」
呼ばれた大地はすぐに動く。
「わかりました」
大地は女性から子どもを受け取り、そのままチェアへと運ぶ。
女性もその後を追うようにして診療室へ入っていく。
チェアの上に子どもを寝かせ、大地は体の向きと頭の位置を整える。
視線を口元へ向け、続けて全体の様子を確認する。
そのまま後ろにいる女性へ向き直る。
女性が息を整えながら口を開く。
「あ……すみません。……夫が歯に関係するクリニックができたって聞いて……」
すずが思わず声を出す。
「夫?」
女性は姿勢を正す。
「……申し遅れました。わたくし医療ギルドギルドマスターサムの妻の、マリアです」
すずの声が一気に上がる。
「つまぁ!?」
ゆかも思わず続ける。
「サムさん結婚してたの!?」
マリアは口元に手を当て、ゆっくりと笑う。
「おほほほほ」




