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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第6章『ほほえみデンタル、日常と非日常』

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02.説明のかたち

レントゲン室の前で真人が振り返る。

後ろにいる美里へ声をかける。


「美里さん大丈夫?緊張しない?」


美里は立ち位置を整えたまま返す。


「平気です」


真人は短く頷く。


「そっか」


美里は少しだけ視線を外してから言う。


「顔を映すなら化粧直ししたいですけど……」


直樹が機材の位置を確認しながら口を開く。


「セッティングからやるので映しますよ?」


美里はすぐに返す。


「化粧直してくるから待っててください」


真人は手を軽く上げる。


「わかったよ~」


美里はその場から離れていく。

機械の音もなく、室内は静かなまま保たれている。

直樹はパノラマの位置を確認し、モニターの向きを変える。

真人はその様子を横から見ている。


数分後、美里が戻ってくる。


真人がその姿を見て口にする。


「さすが……」


美里は表情を崩さずに言う。


「これでいいです」


真人と直樹は顔を見合わせて笑う。

短く息を抜くような笑いだった。


真人が言葉を続ける。


「ま、化粧は女性の戦闘装備ってことで」


直樹も続ける。


「写り映えはよくしたいですからね」


美里は頷く。


「そういうこと」


レントゲン室の中では機材の準備が進んでいく。

パノラマの位置を確認し、モニターの映りを調整し、撮影の流れを一つずつ揃えていく。


その頃、待合では話し合いが続いていた。

カウンターの前にスタッフが集まり、視線が紙や壁の空いたスペースへ向く。


志帆が口を開く。


「歯周検査とスケーリング……SRPはどうする?」


あすかは腕を組みながら答える。


「必要な人はいそうですけど………でも、動画は難しいですよね」


しおりが少し手を挙げるようにして言う。


「イラストでもよければ……」


志帆が顔を上げる。


「え?描けるの?!」


しおりは軽く頷く。


「イラストレーターで働いてたので……」


あすかが横で声を出す。


「へぇ……そうなんだ」


しおりは少しだけ口元を緩める。


「売れない……が頭につきますけどね」


しおりは自嘲気味に笑って答える。


そこへ大地が声を出す。


「CRは必要じゃないですか?」


志帆がすぐに返す。


「そ、そうだね!あれは技工ないからね!」


智子が続ける。


「口腔機能低下症はどうですか?」


大和が思い出すように言う。


「あ~……舌圧検査来ましたしね」


あすかも重ねる。


「口腔機能発達不全も必要ですよね!」


大地が少し間を置いて言う。


「そこは治療の説明っていうよりは……」


志帆が言葉を繋ぐ。


「どういった症状で、どういうことをするかの説明やね」


智子とあすかが同時に言う。


「う~ん……動画を流すほどじゃないですね……」


しおりが視線を壁へ向ける。


「待合室の院内掲示にします?」


大和が手を上げる。


「あ、どうせなら日替わり治療説明ボード作りません?」


あすかが聞き返す。


「日替わり?」


大和が説明する。


「動画は技術的なものを中心にして、院内掲示のここのスペース余ってるから、口の病気はどういうものがあるか紹介するんっスよ」


智子が頷く。


「いいね。それ」


志帆が少し考えてから言う。


「でも、日替わりはきつくないか?」


大和はすぐに返す。


「日替わりは例えっスよ。週でも、月替わりでもいいと思うっスよ」


しおりが続ける。


「それなら、今月は歯周病月間にします?」


志帆が短く頷く。


「……そうしようか」


しおりが言葉を重ねる。


「歯科用語の解説はお願いしますね」


智子が返す。


「任せなさい」


方向が固まり、会話の流れが一度落ち着く。


その中で、つむぎがぽつりと呟く。


「あ、今日、音楽かけるの忘れてた」


智子がすぐに返す。


「……そこは重要じゃないね」


つむぎは少しだけ姿勢を正す。


「午後はちゃんとかけますね」


志帆が軽く返す。


「うん。任せたよ」


つむぎが笑って言う。


「つむぎセレクトをお楽しみに」


志帆が短く返す。


「うん。好きにして」

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