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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第6章『ほほえみデンタル、日常と非日常』

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01.疲労と段取り

アンナとサムの診察が終わり、受付にスタッフが集まっていた。

それぞれが立ったまま、あるいはカウンターに手をつきながら、その場で動かない。

診療室の音が落ち着いたあとに残るのは、機械音ではなく人の息だった。


真人が額に手を当てるようにして口を開く。


「この後来るのって……?」


つむぎは画面を確認してから答える。


「えっと……今日はギルさんとマイクさんです」


すずも続けて口を開く。


「明日は朝一番にジョージさんが来ます」


志帆はカウンターの横に寄りかかりながら、視線を落としたまま言う。


「おかしい……たった2人しか診ていないのにこんなに疲れるなんて……」


大地は少しだけ笑いながら言葉を返す。


「まぁ……何も知らない人たちに一から説明しての診療ですからね~」


その言葉のあと、誰も続けなかった。

代わりに、空気が抜けるように、全員が深く息を吐く。

声にはならないが、同じタイミングで同じ動きが揃う。


大和がその空気を崩すように声を出す。


「午後からは俺も頑張るっスよ~」


美里が横で腕を組み直しながら言う。


「わたしも腕を振るってないからね~」


智子とあすかは同時に短く返す。


「午後は任せた」


大和と美里もすぐに返す。


「任された!」


しおりが受付側へ顔を向ける。


「つむぎちゃんとすずちゃんはどうする?午後も受付する?」


つむぎは少しだけ考える間を置く。


「う~ん……いや、午後も受付します」


すずも迷わず続ける。


「はい。私も受付します」


ゆかが軽く手を叩く。


「オッケ~。じゃぁ二人は明日がアシスタントね」


つむぎが即座に返す。


「ラジャ!」


すずも頷く。


「はい」


直樹が一歩前へ出る。


「院長。パノラマの動画を撮影したいのですが……」


真人が顔を上げる。


「あ、そうだそうだ。誰か~モデルして」


つむぎが首を傾げる。


「モデル?」


真人は手振りを交えて言葉を足す。


「いや、パノラマの機械がグルグル回るでしょ?興奮しちゃって」


つむぎが短く返す。


「あ~ね……」


真人が言葉を止める。


「あ~……ね?」


ゆかが横から補足する。


「若者言葉で、あ~なるほどね。って意味ですよ」


真人は少しだけ間を置く。


「へぇ……。あ、……で、直樹君が動画をとってあそこのモニターに流してくれるから……それで誰かお願いできないかな?」


その場に沈黙が落ちる。

誰もすぐには動かない。

視線だけが隣へ流れ、また戻る。

お互いに顔を見合わせて、誰が行くのかを探るような空気が広がる。


美里が一歩前に出る。


「仕方がないなぁ……。僭越ながら私が……」


大和が横で呟く。


「美里さんかぁ……」


美里の視線が向く。


「ああん?!文句あるの!!」


大和はすぐに背筋を伸ばす。


「ないです!!」


真人が頷く。


「じゃぁお願いしようかな」


真人、美里、直樹はそのままレントゲン室の方へ向かう。

足音が離れていき、扉の向こうへ消える。


残ったスタッフはその後ろ姿を見送る。

誰も言葉を出さず、視線だけがその動きを追っていた。


智子が小さく声を落とす。


「………きっとパノラマだけじゃないですよね」


大地が同じ方向を見たまま返す。


「……歯周検査とかう蝕処置とか上げたらキリがないですよね~」


志帆が腕を組み直す。


「まぁ、それはおいおい追加していけばええねん」


陽菜がカウンターの中から顔を出す。


「……今のうちにピックアップしておきます?」


あすかが頷く。


「そうだね」


志帆がその場をまとめるように言う。


「今できそうなことを中心に考えようか」

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