表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第5章『ほほえみデンタル、落ち着かない初日』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/61

08.はじめての歯ブラシ

「はい、アンナさんお掃除終わりました。チェア起こすのでうがいしてくださいね~」


チェアがゆっくりと起き上がる。

アンナは口を閉じたり開いたりしながら、舌で歯の表面をなぞる。

さきほどまで感じていたざらつきが変わっている。

差し出されたコップを受け取り、口をゆすぐ。

吐き出したあと、もう一度ゆすぐ。


「………歯がなくなってるよ!!」


智子は手袋を外しながら、落ち着いた声で返す。


「歯はあります。歯についてた歯石がなくなったので本来の歯が出てきたんです」


アンナは舌で上の歯をなぞり、次に左側の下を触る。


「………なんてこった……」


「とはいっても全部取ったわけじゃないので、残りをお掃除するためにまた来てください」


「いくいく」


智子はうなずき、次の準備に移る。


「さて、最後ですがお家でのケアについて説明しますね」


しおりは歯の模型と歯ブラシを持ってきて智子に手渡す。

白い歯が並んだ模型と、ピンク色の柄をした道具が並ぶ。


「これはお口の模型です。で、こっちのピンクのは歯ブラシといってこのお口の中をお掃除するための道具になります。今日、一本お渡ししますからこれからはこれを使ってお掃除してみてください。使い方を説明しますね」


智子は模型を使いアンナに歯ブラシの使い方を説明する。

毛先を歯と歯ぐきの境目に当てる位置。

角度のつけ方。

裏側を磨くときの持ち替え方。

奥歯へ届かせるための動かし方。

力を入れすぎないこと。

小刻みに動かすこと。

一か所で終わらせず、順番に進めること。

模型の歯をなぞるたび、アンナの視線もそれを追う。


アンナは初めて見る道具に目を輝かせながら真剣に説明を聞く。

手元の動きを見逃さないように、顔を少し前へ出している。


(フロスとかも使ってほしいけど……まぁ取り合えず今は歯ブラシだけでも覚えてほしいし、これでいいか)


しおりは横で模型を持ち直しながら、智子の動きを見ている。


(智子姐さん……さすがです!どこまでもついていきます)


アンナは渡された歯ブラシを手に取り、毛先を指で触る。


「へぇ……これでお掃除ねぇ……」


「今日はこれでおしまいです。最後に受付でお金を払って、次回のお掃除の予定を組みたいので、予約をして帰ってください」


「わかったよ~」


「お会計の準備ができるまで時間が少しかかるので、待合室で座って待っててください」


アンナはしおりに案内されて待合室に行く。

診療室を出ると、受付のカウンターと待合の椅子が視界に入る。

さきほどと同じ椅子に腰を下ろす。


つむぎが顔を出す。


「アンナさん。初めてのデンタルクリニックどうでした?」


アンナは口を閉じたり開いたりしながら、答える。


「すごいね……歯がなくなった」


すずが帳票を確認しながら返す。


「いえ……歯はありますけど……」


アンナは舌で触れた感覚を確かめるように言葉を足す。


「上の歯と左側の下の方が歯石っていうのがまだとってないけど……全然違うね」


「でしょ~……全部取ったらすごくすっきりするから」


アンナは歯ブラシを見下ろす。


「次回予約しないとだったよね……」


すずは画面を開いたまま顔を上げる。


「あ~……お会計準備できる前に予約だけ決めましょうか」


「そうだね……」


待合で予約表が開かれ、次の来院日が相談される。

削られた歯の表面は、まだ新しい感覚のまま残っている。

初めての歯ブラシが、アンナの手の中で揺れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ