↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第16章『ほほえみデンタル、訪問診療はじめました』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
133/136

04.初めての診療室、いつもの二人

建物の中へ入った大地とあすかは、ギルとリンの案内で事務所へ向かった。

先ほど聞かされたローランの年齢には驚かされたが、まずは実際に患者の状態を確認することが大切になる。

日本での経験がどこまで通用するのかは分からないものの、診療の進め方そのものが大きく変わるわけではない。

大地とあすかは、ギルの後ろについて歩いていた。


「今日はよろしくお願いしま~す」


ギルが事務所に向かい挨拶する。

リン、大地、あすかもそれに続いて挨拶をした。

事務方はギルの方を見て笑顔で答える。

どうやら訪問診療についての話は、事前に伝わっているようだった。


「ご案内します」


事務方は4人を一つの部屋に案内する。

大地は部屋に入ると、用意されている設備を確認した。

そこにはベッドや椅子などが置かれており、患者の状態に合わせて対応できるようになっているらしい。

大地は部屋の中を見渡しながら、ギルに尋ねた。


「………医務室的な……?」


「一応体調の悪い人の処置ができるようにもしています」


ギルは大地の質問に答えた。

介護施設である以上、入居者の体調が悪くなることもある。

そのような場合に対応できる場所として、この部屋が用意されているらしい。

大地は説明を聞きながら、改めて部屋の中を確認した。

リンも続けて説明する。


「なので、これからはここに来てもらえれば、スタッフが患者を連れてきます」


つまり、今後の訪問診療では、この部屋を利用することになるようだった。

大地とあすかは、日本で行っていた訪問診療のことを思い返した。

訪問先によって診療を行う場所は異なっていたが、今回は施設側で場所を用意してくれている。

あすかはその説明を聞いて口を開いた。


「入居者さんの部屋に直接行くかなって思ってた」


あすかの言葉にギルが首を振る。


「部屋数も多いですし、似たような作りなので迷いますよ……。なので、こちらが連れてきます」


確かに、初めて訪れる施設で、入居者の部屋を一つずつ探して回るのは大変そうだった。

ましてや、もともとはホテルだった建物である。

大規模な改修工事を行ったとはいえ、部屋数が多いことに変わりはないらしい。

それならば、施設の職員に案内してもらう方が確実だった。

大地もあすかも、その説明には納得した。


「今日の方が終わったら、この施設もあとでご案内しますね」


リンが二人に向けて言った。

今後も訪問診療で利用する施設なのだから、建物の中を把握しておくことは大切になる。

初回の診療だけでなく、これから継続して訪れることも考えれば、ありがたい申し出だった。


「あ、ありがとうございます」


「助かります」


二人が礼を伝えると、事務方も準備を進めることにしたようだった。


「では、ローランさん連れてきますね」


事務の人はそう告げて部屋を出ていく。

その言葉を聞いてあすかと大地が頷く。

患者が来るまでの間に、こちらも診療の準備を整えておく必要があった。

大地は持参したカバンへ目を向ける。


「んじゃ、こっちも準備しますか」


「ですね」


二人は持ってきたカバンから、必要な書類や器具を取り出す。

初回の診療では問診を行い、患者の口の中の状態を確認することになっている。

そのために必要なものを確認しながら、使いやすいように準備を進めていく。

大地は一通り確認すると、改めて部屋に用意されているベッドと椅子を見比べた。


「う~ん……ベッドもあるし、しっかり腰掛けられる椅子もあるし……どうしようか」


患者の状態によっては、どちらで診察を行うのがよいのか変わってくる。

しかし、肝心のローランがどのような状態で来るのか、二人にはまだ分からなかった。


「どんな感じで来るのかがわからないから何とも」


「車いす……があるか分からないけど、その状態でもできなくはないけどね」


大地はそう言いながら、診察を行う場所について考えていた。

ベッドへ移ってもらうのか、椅子を使用するのか。

仮に車いすを利用しているとしても、そのまま診察を行うことはできる。

いずれにしても、実際にローランが来てから判断することになりそうだった。


「出たとこ勝負ってことで」


あすかが腕に力を入れて言う。

その様子を見て、大地も笑った。


「頼もしいね。あすかさんは」


大地は笑いながら言う。

日本にいた頃から何度も一緒に訪問診療を行ってきた二人にとって、こうしたやり取りは珍しいものではなかった。

互いにできることを理解しているため、必要な場面では自然に役割を分担することができる。

そんな二人の様子を見ていたリンが、ふと疑問を口にした。


「………お二人は結構親しそうですが……お付き合いしているんですか?」


リンが二人の様子を見て尋ねる。

一緒に働いているとはいえ、そこまで仲が良いものなのか疑問に思ったらしい。

突然の質問に、あすかはすぐに答えた。


「え?全然」


「付き合ってないですよ………。えっと、なんというかほほえみデンタルで働く前にも、実は一緒に働いていたことがあって」


大地も交際しているわけではないと否定し、二人の関係について説明した。

実際、大地とあすかは以前の職場でも訪問診療を担当していた。

その後、それぞれ同じ職場を辞めることになったが、偶然にもほほえみデンタルで再び一緒に働くことになったのだった。


「その時からチーム組んでました」


あすかも大地の説明に続いた。

リンは二人の話を聞きながら頷く。

単に同じ職場で働いているだけでなく、以前から一緒に仕事をしていたということらしい。


「なるほど……だから息がぴったりなんですね」


ギルが納得しながら言う。

大地とあすかのやり取りを見ていれば、以前から一緒に仕事をしていたという話にも納得がいく。

リンも頷いて何やらメモを取っている。

その様子に気付いたあすかが、思わず声をかけた。


「あの、変なこと書かないでくださいね」


「書きませんよ~」


リンが笑いながら言う。

今回の訪問診療には、広報担当として取材に同行している。

何を書いているのかは分からないが、先ほどの質問が質問だけに、あすかとしては少々気になるところだった。

リンは笑顔のままメモを続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。