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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第16章『ほほえみデンタル、訪問診療はじめました』

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02.ギルドマスター、ただいまお説教中

大地とあすかは医療ギルドへ向かっていた。

いよいよ今日から、異世界で初めての訪問診療が始まる。

前日に必要な道具や書類の確認は済ませている。

あとは医療ギルドでギルと合流し、訪問先へ向かうだけだった。

二人は並んで歩きながら、これから始まる訪問診療について話していた。


「いよいよですね~」


「いよいよだね~」


日本では何度も経験してきた訪問診療だが、今回は勝手の分からない異世界での診療になる。

どのような患者が待っているのか、実際に会ってみなければ分からないことも多い。

それでも、これまでの経験を生かしながら、一つずつ進めていくつもりだった。


二人はギルド内に入り、医療ギルド本部のところへ向かう。

受付の人にほほえみデンタルですと名乗り、ギルを呼んでもらった。

しばらくすると、ギルが二人のもとへやってきた。


「おはよう。今日はよろしく頼む」


ギルが笑顔で手を差し出す。


「はい。よろしくお願いします」


大地がその手を取り、握手をする。


「おねがいします!」


あすかも笑顔で答える。

これで合流も済み、あとは訪問先へ向かうだけだと思っていた。

しかし、ギルは何か言いにくそうな様子を見せた。


「あっと……2人には申し訳ないのだが……。ちょっとリンも同行することになった」


「え?」


大地は思わず聞き返した。

事前に聞いていた同行者はギルだけだった。

そこへ急にリンも加わると言われ、二人は顔を見合わせる。

ギルは困ったように頬をかいた。


「いや、事前連絡なくて申し訳ないのだが……。その急遽決まって……」


「いや、僕たちはまぁその……いいんですが……」


あすかは患者さんのことが気になった。


「患者さん……」


同行者が増えること自体は構わない。

しかし、訪問診療である以上、患者の了承が必要になる。

二人がその点を気にしていると、ギルが答えた。


「サムさんがすでに話をつけていた」


「すでに……」


ギルが頷く。

患者への確認は済ませてあるらしい。

ただし、それで今回の問題がすべて解決するわけではなかった。


「報告が遅くなったことと、勝手に決めたことに対して、副ギルドマスターに今、こってり絞られている」


ギルが奥の方を見ながら言う。

大地とあすかは、その言葉に反応した。


「えっと……副ギルドマスターって言うと、サムさんの奥さんで」


「クレイ君のお母さんでもある、マリアさん?」


ギルはその言葉を聞いて頷く。

二人ともマリアとは面識がある。

普段は温厚な印象のある人物だったが、サムとのやり取りについては以前にも話を聞いていた。


「二人が来る前に、サムさんがリンを連れてくるもんだから何かな?って思ったら……」


ギルはやれやれと首を振る。

どうやら、今回もサムの思いつきから始まった話らしい。


ギルの話によると、サムがギルのところへリンを連れてきたのだという。

今日の訪問診療にリンも同行させ、その様子を取材させる。

さらに、その結果を冊子にまとめ、市民にも配布するつもりだったらしい。

歯科という新しい医療分野を広く知ってもらうための活動としては、確かに意味がある。

しかも、今日の患者には事前に許可を取ってあるという。

リンも医療ギルドの職員であり、広報担当でもある。

そのため、多少の融通は利くだろう。

しかし、問題は当事者である大地とあすかに何の相談もなく、勝手に決めてしまったことだった。

リン自身も今日になって初めて聞かされたらしく、慌てて準備をしていたという。

そして、運が悪いことに、たまたま学校へ行く前のマリアが医療ギルドへ立ち寄っていた。

そこでサムの気まぐれな計画が耳に入ってしまったのだ。

マリアは鬼の形相でサムの首根っこをつかみ、そのまま引きずりながらギルド最奥の部屋へ連れて行ったらしい。


「最奥って……」


あすかが聞き返す。

ギルは少し言葉を選ぶようにしてから答えた。


「……えっと、マリアさんの対サムさん専用のお説教部屋です」


「お説教部屋……」


大地は聞き慣れない名称を繰り返した。

専用の部屋が存在するということは、それだけ説教する機会があるということなのだろうか。

そんなことを考えていると、ギルがさらに説明を続けた。


「普段は鍵がかかっていて……誰も入ったことがないんですよ。……噂によると頭に帽子をかぶせて電気を流す装置があったりとか……。診察台に寝かせて、顔に水を少しずつ流す道具があるとか……」


大地とあすかがごくりと唾を飲み込む。

先ほどまでのお説教という言葉からは、想像もつかない内容だった。

しかも、誰も中に入ったことがないというのだから、実際に何があるのかも分からない。

あくまでも噂とはいえ、聞かされた二人は思わず顔を引きつらせた。


「そ……それは……」


「だいぶ過激な……」


二人の反応を見たギルは、困った笑みを浮かべた。


「ま、あくまでも噂なんですけどね………。だから、あの部屋には誰も触れませんし、話題にもしません。忘れてください」


ギルは困った笑みを浮かべて言う。

しかし、そこまで聞かされてしまっては、簡単に忘れられるものでもない。

ましてや、つい先ほどサムがその部屋へ連れて行かれたという話まで聞いてしまっている。

大地とあすかはお互いの顔を見合わせて苦笑いする。


(いや、忘れてって言っても……)


あすかはギルの言葉を思い返しながら考えた。

その隣で、大地も何とも言えない表情を浮かべていた。


(う~ん……これからサムさんやマリアさんの見る目が変わりそう……)


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