07.本当に送れる?
直樹は、デスクトップに増えていたアイコンをじっと見つめた。
「……オンライン請求・異世界……」
試しにそのアイコンをクリックする。
少し待つと画面が切り替わり、オンライン請求システムが開いた。
見慣れている画面に近い。
だが、表示されている文字に、すずが首を傾げる。
「……異世界保険診療報酬支払基金……え?何ですかこれ」
直樹も画面に表示された名称を確認する。
「……異世界版社保ってことでしょうか?……というか国保連合会のボタンがないですね」
つむぎが画面を覗き込む。
「どういうことですか?」
直樹は画面を見たまま説明する。
「本来ならここに、社保と国保のボタンがあるんです。操作自体はどちらも同じなんですが、レセプト請求を社保に送るのか国保に送るのかって、この画面で選択するんです。……本来は」
「それがないと?」
直樹は頷く。
画面には異世界保険診療報酬支払基金と表示されているだけで、選択するための項目は見当たらない。
「オンライン資格確認ができる時点で、なんとなくオンライン請求ができるのでは?と思ってはいましたが……ずっと確信は持てず……」
これまでオンライン資格確認は問題なく使えていた。
異世界に来ても患者情報を確認できている以上、同じようにオンライン請求もできる可能性はある。
だが、実際に請求できるのかどうかまでは分からなかった。
「でも、本当に送れるとはかぎらないじゃないですか?」
つむぎの言葉に、直樹も画面を見ながら頷く。
「……そうですね……。院長がレセプト請求をする前にいったん確認試験で試してみますか」
すずが直樹を見る。
「確認試験?」
直樹はすずへ顔を向ける。
「本請求の前にオンライン請求システム上で事前に送信してチェックするテストのことです。手順としては本請求の画面と何ら変わりはないですよ」
「へぇ~……」
すずは表示されている画面をもう一度見る。
つむぎも隣から覗き込んでいた。
「レセプトデータを持ってくるので少し待ってください」
直樹は席を立ち、事務室の方へ向かう。
受付にはすずとつむぎが残り、開いたままのオンライン請求システムを見ていた。
しばらくして、USBメモリを持った直樹が戻ってくる。
「院長のレセチェックは終わっていませんが、テスト送信ってことを踏まえて問題なくできるかの確認も込めてやりますか」
直樹はパソコンの前に座る。
USBメモリを差し込み、オンライン請求の操作の続きを始めた。
画面から確認試験を選択する。
先ほど見つけたPDFに書かれていたログインIDと初期パスワードを確認し、慣れた手つきで入力していく。
(……パスワードはあとから変更できるので、仮で変更しますか)
表示された案内に沿って操作を続ける。
すずとつむぎは、直樹の手元とパソコンの画面を交互に見ていた。
直樹は特に迷うことなく、次々と画面を進めていく。
「ログイン後の画面は特に変わりはないですね……」
つむぎが画面を見る。
「メニューボタンとか赤というかオレンジというかですけどね」
直樹も表示を確認し、少し苦笑する。
「まぁ、確認試験なんでね」
直樹はそのまま操作を続ける。
レセプトデータを選び、確認試験として送信するための画面を順番に進めていく。
すずとつむぎは横からその様子を見ている。
見慣れない画面が表示されても、直樹の手が止まることはなかった。
最後の画面まで進み、直樹は内容を確認する。
そのまま確定ボタンを押した。
操作が終わる。
直樹はしばらく画面を確認したあと、オンライン請求の画面を閉じる。
それから、すずとつむぎの方へ向きなおした。
「………特に問題なくできそうですね」
つむぎが直樹を見る。
「そうなんですね」
少なくとも、確認試験としてデータを送るところまでは進めることができた。
そもそもオンラインで請求できるのか分からなかったが、これなら本請求まで進められそうだった。
直樹はパソコンの画面を見ながら言う。
「院長先生に点検をなるべく早く終わってもらってレセプト請求してしまいたいですね」
すずが笑顔で提案する。
「じゃぁ、お昼時間にでも見てもらいましょうか」




