06.謎のアップデート
大地とあすかが医療ギルドで訪問診療の打ち合わせをしてから、さらに数日が経った。
ほほえみデンタルでは、いつものように診療が続いている。
真人が患者の診察をしているところへ、直樹がやってくる。
「院長。頼まれていた資料作成おわりました」
真人が直樹を見る。
「え?本当!!ありがと~~」
「これでいつでもサムさんのところに説明に行けますね」
直樹がまとめたのは、サムへ説明するための補綴物についての資料だった。
入れ歯、単冠、ブリッジ。
今後、ほほえみデンタルで作成する予定の補綴物についてまとめられている。
「そうだね。……まぁ、ちょっとレセ時期と被ってるからせめて請求が終わってからだね」
「……送れるかどうかは不明ですが……。一応最終点検用の紙レセは印刷終わっています」
真人はすぐに反応する。
「流石!!後でもらいに行くよ」
「わかりました」
直樹は頷く。
真人はチェアへ戻り、患者の診察を続ける。
レセプトの最終点検も必要だが、今は目の前の患者が優先だった。
直樹はその場を離れる。
事務室には戻らず、そのまま受付の方へ向かった。
受付にはすずとつむぎがいる。
つむぎはパソコンの画面を見ながら、マウスを何度もクリックしていた。
「……あっれ~……どうしたんだろう」
直樹が足を止める。
「どうしました?」
つむぎが直樹を見る。
「あ、直樹さん。いや、なんかさっきからオンライン資格確認の調子が悪くって……。反応が遅いというかなんというか……」
直樹はパソコンの画面を見る。
「いつからです?」
すずが少し考えて答える。
「今朝は普通に使えていたので……お昼ごろからでしょうか?」
つむぎも画面へ視線を戻す。
「患者さん自体はそこまで多くないからいいんですけど、来院したときに使えなくなるっていうのは嫌だなぁって………」
直樹はその言葉を聞きながら考え込む。
今は患者数が多くないため、多少動作が遅くても大きな支障にはなっていない。
だが、必要な時に使えなくなれば困る。
「再起動は?」
「一回試しました~」
「……LANの抜き差しは?」
今度はすずが答える。
「それも試しました……」
直樹は画面を見たまま考える。
「……ルーター再起動かけるか?」
「お昼休みに入ったら試してみま~す」
つむぎの返事を聞き、直樹はもう一度パソコンを見る。
「そうですね……。あ、一応最後にもう一度パソコンの再起動をお願いしてもいいですか?」
つむぎとすずは頷く。
つむぎがパソコンを操作し、再起動をかける。
画面が切り替わり、しばらくして再起動の処理が始まった。
つむぎは画面を見て顔をしかめる。
「うっわ……最悪。アップデート走ったじゃん……」
つむぎがうんざりしたような声をあげる。
すずはその様子を見てクスクスと笑う。
だが、すぐに画面を見ながら首を傾げた。
「……あれ?でも、さっき電源のところにオレンジのマークなかったような……」
つむぎも画面を見る。
「え?じゃぁこれは何のアップデート?」
すずは少し黙る。
そのまま困ったように直樹の方へ顔を向ける。
「………な……何でしょう……直樹さん」
直樹も再起動中の画面を見ていた。
「……パソコンが付いたら一旦調べてみます」
3人はそのままパソコンが立ち上がるのを待つ。
暫くして、再起動が終わった。
いつもの画面が表示される。
直樹はパソコンの前に座り、マウスを操作する。
設定や表示を順番に確認していく。
「……別に何もおかしな点は……」
その横から画面を見ていたつむぎが声を上げる。
「あ、なんかアイコンが増えてる」
直樹が手を止める。
「え?どこに……」
つむぎが画面を指さす。
「ここ。……オンライン請求異世界……は?」
直樹はつむぎが指さした方を見る。
そこには『オンライン請求・異世界』と書かれたアイコンがあった。
「……これは……いったい」
直樹は画面を見つめる。
先ほどまではなかったはずのアイコンが、何事もなかったように並んでいる。
さらにモニターを見ると、そのアイコンの下にPDFのデータがある。
直樹がファイル名を確認する。
「オンライン請求初期パスワード……?」
つむぎとすずも画面を覗き込む。
直樹はPDFをクリックした。
画面にデータが表示される。
そこにはオンライン請求のログインIDと初期パスワードが書かれていた。
直樹は表示された内容を何度も確認する。
「え?……オンライン請求ができる?」
すずが直樹を見る。
「え?」
つむぎも画面と直樹を交互に見る。
「どういうこと?」




