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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第14章『ほほえみデンタル、訪問診療とレセプト』

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05.初めての味と長い1か月

しばらく待っていると、大地とあすかが注文した料理が運ばれてきた。

店員が笑顔で皿を持ってくる。


「ホルンラビットの炒め物で~す」


2人の前に置かれた皿の中には、肉とキノコが炒められている。

バターのような香りが漂い、空腹だった2人の食欲をさらに刺激した。

大地は運ばれてきた料理を見つめる。


「うまそ~」


あすかも皿の中の肉へ視線を向けた。


「ホルンラビット………。ウサギ肉でしょうか?」


大地は料理を見ながらフォークを手に取る。

ホルンラビットの肉をひとつ刺すと、そのまま無表情で歌いだした。


「……う~さ~ぎお~いし……」


あすかが大地を見る。


「ちょっと大地先生。……まぁ、子どものころは『うさぎ追いし』を『うさぎ美味しい』って勘違いしてましたけど」


大地はフォークに刺していた肉を見ながら笑う。


「ごめんごめん。さ、食べようか」


大地はフォークをいったん置いて手を合わせる。

あすかも同じように手を合わせ、いつものようにいただきますと言う。

大地は再びフォークを手に取り、ホルンラビットの肉を口へ運んだ。

噛みしめた大地の動きが一瞬止まる。


「………うっま……」


あすかも肉を口へ運ぶ。

しっかりと味わいながら、料理に使われているものを確かめるように口を動かした。


「おいしい……。バターの香りに多分これはニンニク??がいいアクセント」


大地ももうひと口食べる。


「ソースがしっかり絡まってて相性抜群だね」


大地もあすかも、おいしそうに肉を口へ運んでいく。

肉だけでなく、一緒に炒められているキノコにもソースが絡んでいる。

先ほどまで空腹の限界を迎えようとしていた2人のフォークは止まらなかった。


その様子を見ていた店員が、近くを通りながら笑った。


「クスクス……おいしそうに食べてくれてありがとう」


大地とあすかは顔を上げる。

自分たちが食べているところを見られていたことに気付き、2人とも照れ臭そうに笑った。


「あはは……どういたしまして」


「お恥ずかしい……」


店員は笑いながら離れていく。

2人は少し照れながらも、再び料理を食べ始めた。

空腹だったこともあり、皿の上の料理は少しずつ減っていく。

なんの肉なのか分からないまま注文したものだったが、味については何の問題もなかった。


お肉を堪能した2人は、満足そうに口周りを拭く。

大地は食べ終えた皿を見てから、椅子の背もたれにゆっくりと体を預ける。

満たされた腹に息をつき、そのまま力を抜いた。


「は~……お腹いっぱい。おいしかったね」


あすかも満足そうに頷く。


「ですね……。そういえばあたしたち、この世界の料理食べたことないですね」


大地は一瞬黙る。


「…………そうだね」


大地は頷く。


(本当は買い物のときに色々食べ歩いたけど……それは内緒にしておこう)


以前、市場へ買い物に行った時に、この世界の食べ物を口にしている。

大地はそのことについては何も言わず、そのまま黙っていた。


あすかは食事を終えた皿を見たあと、大地へ声をかける。


「お腹も満たされましたし……帰りますか?」


「そうだね」


大地とあすかは席を立ち、会計を済ます。

店を出て、再びほほえみデンタルへ向かって歩き始める。

先ほどまでの空腹はなくなり、訪問診療の打ち合わせも終わった。

あとは戻るだけだった。


歩いている途中、大地があすかへ声をかける。


「ねぇねぇ、あすかさん」


「はい?」


あすかが大地を見る。

大地は歩きながら、そのまま話を続けた。


「診療が本格的に始まって色々あったけどさ、まだ一か月たってないんだよ?知ってた?」


あすかの足がわずかに止まりかける。


「……ひぇ……色々と忙しくって時間感覚なくなってた」


開業してから、診療だけをしていたわけではない。

患者への説明。

医療ギルドとのやり取り。

新しく始める訪問診療。

企業健診についての話。

それ以外にも、次々とやることが出てきている。

毎日の中でいろいろなことが続いていた。


大地もその時間を思い返しながら口を開く。


「この間院長が、レセプト点検しているの見て、ゾッとした」


あすかは大地を見る。


「え?あたし体感3か月くらい過ぎてるんですけど」


「ね……怖い怖い」


2人は顔を見合わせる。

いろいろなことがありすぎて、実際に過ぎた時間と自分たちの感覚が合わなくなっていた。

大地とあすかはそのまま、ほほえみデンタルへ向かって歩いていった。


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