04.打ち合わせのあとは
医療ギルドでの打ち合わせを終え、大地とあすかはほほえみデンタルへ戻るため歩いていた。
訪問診療についての話も進み、最初の日程も決まった。
「いやぁ……最初の日程決まったね」
大地が歩きながら言う。
隣を歩いていたあすかも頷いた。
「本当に……開始時間が10時から……う~ん……順調にいって11時までに終われば御の字?」
「そうだね。……そのあとは一旦医療ギルドに立ち寄って内容を説明して……。ま、日本と違うからそこは仕方ないか」
初回は患者の基本情報を確認し、口腔内診査を行う。
そこから治療計画を立てていくことになる。
実際にどれだけ時間がかかるのかは、やってみなければ分からない。
そのため、最初は1人だけにしている。
「ですね。協力してもらう以上、どんなことをしているのかの情報共有は大事ですからね」
大地は頷きながら歩みを進める。
医療ギルドには、訪問診療を始めるためにいろいろと協力してもらっている。
診療を行ったあと、どのようなことをしたのかを伝えることも必要になる。
日本で行っていた訪問診療とは違う部分もあるが、今はこの形で進めていくことになる。
しばらく歩いたところで、大地があすかへ声をかけた。
「……あのさ……あすかさん」
「はい?」
あすかが大地の方を向く。
それと同時に、大きな音が鳴った。
「………」
「………」
2人ともその場で黙る。
大地は少し間を置いてから口を開いた。
「……お腹すいたからどっか寄ってから帰らない?……って言おうと思ったのに遅かった……」
大地が照れ臭そうにつぶやいた。
あすかは一瞬黙ったあと、大きな声で笑いだす。
「いいですよ……あはは……。あ~~~最高のタイミング!」
「くっそ~~……地味にハズイ」
大地はそう言いながら歩みを進める。
あすかはまだ笑っていた。
そのまま2人は近くのお店に入って、少し遅めの昼食をとることにした。
店内に入り、空いている席へ座る。
2人はそれぞれメニュー表を手に取った。
大地は開いたページを見ながら、しばらく文字を追っていく。
「ん~……どんな料理か想像がつかない」
あすかもメニュー表を見ながら答える。
「それはそう」
書かれている文字は分かる。
何と書いてあるのかも読むことはできる。
だが、それが一体どういう料理なのかまでは分からない。
大地はページを変えながらメニュー表を見ていたが、どれを選べばいいのか決められなかった。
「……うん。こういう時は……」
大地はメニュー表をパタンと閉じて周りを見る。
あすかもその様子を見て、あぁっと納得する。
大地は周囲の席を見ながら、どんな料理を食べているのか確認した。
しばらくして、大地がひとつの席を見る。
「よし決めた。あすかさんは?」
「決めました」
大地は店員を呼ぶ。
店員が2人の席までやってくると、大地は隣の席を見ながら注文する。
「隣の席の人と同じメニューで」
あすかもすぐに続ける。
「あ、あたしも同じで」
「は~い」
店員は笑って席から遠ざかり、キッチンへとオーダーを伝える。
大地は店員を見送ってから、あすかを見る。
「ま、分からない時はこれが一番」
「間違いない」
2人が注文したのは、隣の客が食べているものと同じ料理だった。
隣の客の前には、肉の炒め物が置かれている。
なんの肉なのかまでは分からない。
それでも、料理からはとてもいい匂いが漂っていた。
大地は隣の料理を見ながら鼻を動かす。
(ん~~……いい匂い)
向かいに座るあすかも、同じように料理へ視線を向けている。
(お腹すいてきた……うううう。早く食べたい)
料理が運ばれてくるのを待ちながら、2人の視線は何度も隣の席へ向かっていた。
大地もあすかも、すでに十分腹が減っている。
目の前で肉料理を食べている姿を見ていれば、さらに空腹は強くなる。
2人の空腹は限界を迎えようとしていた。




