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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第14章『ほほえみデンタル、訪問診療とレセプト』

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03.訪問診療に向けて

数日後。

大地とあすかは、ほほえみデンタルを後にした。

今日はサムと歯科訪問診療の細かな日程などを詰めるために、医療ギルドへ向かう。

これまでにも訪問診療については何度か話をしてきた。

協力してくれる者も決まり、最初は1人から始めることになっている。

今回は実際に始めるための細かな部分を話すことになる。


医療ギルドへ到着すると、外ではサムが立っていた。

大地とあすかの姿を見つけると、すぐに声をかけてくる。


「お~、待ってたぞダイチクン、アスカサン」


大地がサムへ声をかける。


「今日はお願いしますね」


続いて、あすかも挨拶をする。


「お願いしま~す」


サムは2人を中へ案内する。


「さ、会議室で話をしようか」


大地が頷く。


「はい」


サムに連れられて、大地とあすかは医療ギルドの奥へと歩みを進める。

大地は以前にも医療ギルドへ来ているが、今日は診療について具体的な話をするために来ている。

あすかも大地の隣を歩きながら、サムについていく。


歩きながら、サムが2人へ尋ねる。


「ところで、2人は仕事じゃなかったのか?」


大地が答える。


「今日はこの打ち合わせがあったのでお休みをいただきました」


サムが2人を見る。


「すまんな~」


あすかが返す。


「クリニックも大事ですけど、こっちも大事ですから気にしないでください」


「うむ……」


サムは頷き、そのまま2人を会議室まで案内した。

会議室につくと、それぞれ席に座る。

大地とあすかも持ってきた資料を机の上に置いた。


サムがさっそく本題に切り込む。


「さて、訪問診療なんだがどうするんだ?」


大地は苦笑しながらアセスメントシートを取り出した。

机の上に広げ、サムから見えるように向きを整える。


「初回の時は患者さんの基本情報を入手したいのもあるので、このシートを基にまぁ色々と記入します。そのあと、口腔内診査をして治療の計画を立てます」


初回では、その患者について確認しなければならないことがある。

医院へ来院する患者とは違い、最初から問診票があるわけではない。

そのため、必要な情報を確認しながら進めていくことになる。

大地はアセスメントシートを示したあと、別の紙を取り出してサムに見せた。

サムは受け取った紙へ目を落とす。


「ふむ……この間もらった歯管……の紙に似ているような……でも、違うような……」


大地が紙を示しながら説明する。


「歯科疾患在宅療養管理の文書と言って、患者さんやご家族にお渡しする治療計画の紙です」


「ほぉ……」


サムは紙を見ながら、大地の説明を聞いている。

大地はさらに続けた。


「あと、まぁこれはもう義務ではないんですけど……。一応その日にやった治療内容の説明書も提出します」


サムは紙へ目を落としたまま答える。


「なるほどな~……。何をしているか後からでもわかるのか……」


その日に何をしたのか。

どのような治療を行ったのか。

あとから確認できるようにするためのものでもある。

今まで歯科そのものを知らなかった者にとっては、口の中で何をされたのか分からないままでは不安も残る。

サムは大地の説明を聞きながら、何度も紙へ目を落としていた。


今度はあすかが別の文書を取り出す。


「あたしが指導した際は、どんなことを説明指導したかもわかる文書も渡します」


あすかは訪問歯科衛生指導の文書を手渡す。

サムはそれも受け取り、先ほどの紙と見比べる。

治療だけではなく、衛生士がどのような指導をしたのかも残る。

サムは頷きながら話を聞く。


「確かに……時間がかかるわけだ」


大地は頬をかきながら答える。


「医院に来てくれる人は最初に問診票を書いてくれますからねぇ」


ほほえみデンタルへ来院する患者であれば、受付で問診票を書いてもらう。

最初から確認できる情報がある。

訪問診療では、それと同じようにはいかない。

最初に確認することから始めなければならない。

サムもその言葉に頷いた。


大地は机の上に置かれた資料を見ながら、ふと真人が話していたことを思い出す。


(あ、院長が今度技工物について説明に来るって言ってたから、ここで一応触れておくかな)


大地はサムを見る。


「院長が今度説明しに来るみたいなので僕の口からはあまり言いませんが……。患者さんによっては入れ歯の治療も可能です」


サムがすぐに聞き返す。


「なんだそれは?」


大地は少し考える。


「ちょっと今その資料がないので……申し訳ないのですが、えっと…。歯が抜けた所に、自分で取り外しができる人工的な歯……とでも言いますかね?」


サムは大地の説明を聞きながら頷く。


「ほぉ……」


今ここには補綴について詳しく説明するための資料はない。

詳しい説明については真人が改めて行う予定になっている。


あすかが補足する。


「それも含めて院長が今度説明しに来ます。直樹さんが作った資料を基に」


サムが頷いた。


「わかった。楽しみにしておこう」


大地は入れ歯について、もう少しだけ説明を続ける。


「入れ歯が入ることによってしっかり噛めるようになるので、食事の選択肢も増えるようになりますよ……。まぁ向き不向きの食材があったり、お手入れもしっかりしないといけないですが」


大地は穏やかな口調で説明を続ける。

歯が抜けたままになっているところへ人工的な歯を入れる。

それによって噛めるようになれば、今まで食べられなかったものを食べられるようになる可能性もある。

ただ、入れればそれで終わりというものでもない。

使い方や手入れについても説明が必要になる。


サムは大地の話を聞きながら、まだ見たこともない入れ歯というものについて考えていた。

またひとつ、自分たちがこれまで知らなかった治療がある。

しかも、それによって食べられるものまで変わるかもしれない。

サムは目を輝かせながら、大地の話に何度も頷いていた。


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