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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第13章『ほほえみデンタル、それぞれの道と新しい一歩』

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05.まずは1人から

大地が患者への説明を終え、真人のもとへ向かってくる。


「真人先生、話ってなんですか?」


手袋を脱ぎながら、大地が真人に近づく。


「サムさんから、訪問診療について話があるみたいでね」


「わかりました」


大地が手を洗い準備をする。

サムは待合室で待っているため、すぐに話を始めることはできる。

ただ、もう1人の訪問診療の担当であるあすかは、まだ患者の歯石取りをしているところだった。

さらに数分後、あすかが真人に声をかける。


「少し聞こえてました。訪問診療の協力者がいるとかなんとか」


あすかも手袋を脱ぎ、手を洗いながら真人に声をかける。

診療をしながらでも話の一部は聞こえていたらしい。

真人はさすがと感心し、サムが待合室で待っていることを伝える。

大地とあすかの準備が終わると、3人は待っていたサムのもとへ向かう。


「すまんな忙しいときに」


「こちらこそギルド運営で忙しいのに……」


「……ウン。ソンナコトナイヨ」


「………?」


大地がサムを見る。

先ほどまでとは違う返事の仕方に、あすかもサムへ声をかける。


「サムさん……」


「大丈夫!大丈夫だから」


真人は先ほどサムと交わしたやり取りを思い出す。


「サムさんが怒られたとしてもこちらは一切関係ないことを貫くから安心して」


「お、怒られちゃうかな?」


「知りませんよ」


「マリアは怒ると怖いんだ!!」


大地はサムの言葉を聞きながら答える。


「仕事をしていれば大丈夫では?」


「仕事はちゃんとしてるから大丈夫」


「なら、堂々としていればいいんじゃ?」


「…………うん」


サムが小さな声で答える。


「なんで自信なさそうなんですか?」


「う~~ん……どうしてだろう」


大地はサムとあすかのやり取りを聞いていたが、話が訪問診療から離れていることに気づく。


「えっと、それより訪問診療の話を……」


「お、そうだったそうだった!」


サムの声が明るくなり話を始める。

訪問診療について声をかけてみたところ、5人の協力者ができたこと。

施設にある処置室を借りられるように交渉したこと。

どんなことをするのかは分からないが、飲み込みづらいのが多少楽になるかもしれないこと。

口の中の衛生状態がよくなるかもしれないということを簡単に説明しておいたこと。

施設の職員にも同じ説明をしておいた。

サムは自分が進めてきたことを大地とあすかへ伝えていく。


「おぉ……サムさん仕事してる」


「仕事するよ!?」


大地の言葉にサムがすぐに返す。

あすかは訪問診療についての話へ戻す。


「いつから始めます?」


「施設職員の人は医療ギルドの人たちだからまぁ大丈夫だとして……」


大地は開始する時期について考える。

協力してくれる5人が決まっているのなら、次は実際にいつ始めるかを決めることになる。


「おぉ、施設長はオレだからな。いつでもいけるぞ」


「いや、他の人の都合もあるでしょう」


「それもそうだな」


あすかは真人を見る。


「院長、企業健診の時期っていつですか?」


「とりあえず5月で打診する予定だよ」


企業健診については5月の中旬から下旬の間でルイへ打診することになっている。

その時期と重ならないようにするなら、その前に訪問診療を始めることもできる。


「……とりあえず、4月から始めてみる?」


「準備はしっかりできますしね」


訪問診療に必要な準備については、すでに大地とあすかで確認している。

あとは実際に施設へ行き、そこで診療をしてみなければ分からないこともある。

大地は協力してくれる人数を聞きながら考える。


「……う~~ん………1日で5人は普通なら見れるところなんだけど……」


大地は心の中で日本ならと呟く。

日本で行ってきた訪問診療と同じように考えることはできない。

ここでは口腔ケアというもの自体が知られていない。

あすかも大地と同じように考えながら答える。


「2人いけるかどうかですよね……。あの、きっとこちらの体力的に」


大地も頷く。

最初から5人全員を診るよりも、まずは実際に1人を診てみた方がいい。


「とりあえず、1回目は1人だけにして一旦様子見。残り4人を2日に分けてやってみようか」


「ですね」


「いいぞ。1人1時間くらいあれば余裕か?」


大地は自分とあすかが行うことに必要な時間を考える。


「僕が20分、あすかさんが20分としても40分は確実にいるから……」


「まあ流石に1時間あれば余裕では?」


「だよね。………多分。うん。きっと」


大地の返事に、1時間あれば余裕だと言い切れない部分が残る。

実際にやってみなければ、どれだけ説明に時間がかかるのかは分からない。

まずは1人から始めて様子を見る。

その結果を見て、残り4人を2日に分けて診ることになる。


「わかった。んじゃ、1人目誰にするか選抜相談してくるわ。日程は4月だな。とりあえず1人目を決めないことには始まらないからな!!」


サムはそう言うと立ち上がる。


サムは「じゃ!」と言い笑いながらほほえみデンタルから出て行った。


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