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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第13章『ほほえみデンタル、それぞれの道と新しい一歩』

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04.いつもの診療、新しい一歩

学校健診、訪問診療や企業健診などの話があった翌日、ほほえみデンタルはいつも通りクリニックの診療をスタートした。

一度にすべてが動き出すわけではない。

学校での口腔ケアの話も、訪問診療も、企業健診も、これから少しずつ形にしていくものだった。

今できることを、ひとつずつ。

やれることをコツコツと積み重ねていく。

それは異世界に来る前から変わらないことだった。

1日の来院患者数は、まだ多いとは言えない。

それでも、日々少しずつ増えていっている。

一般市民というより、医療ギルドを通じて少しずつという感じだ。

医療ギルドから話を聞いて来院する者や、そこで治療を受けた者から話を聞いて足を運ぶ者が少しずつ増えている。

一般市民へ広く浸透していくまでには、まだまだ時間がかかるだろう。

それでも、やるべきことは変わらない。

いつも通り笑顔を絶やさず、来院した患者一人ひとりに向き合う。

初めて見る器具や治療を前に戸惑う患者には、何をするのかをひとつずつ説明する。

治療が必要なら治療を行い、口の中の状態に合わせて指導をする。

受付でも、それは同じだった。

初めて来院した患者を前に、すずは問診票を手に説明をしていた。


「問診票にお名前をお願いします」


どこに名前を書くのかを示しながら、ほかに書いてほしい内容も順番に説明していく。

初めて見るものを渡されて、すぐに書ける者ばかりではない。

すずは相手の様子を見ながら、書く場所をひとつずつ伝えていた。

診療が終われば、今度はお金の払い方を説明する。

支払いを終えたあとに出てくる領収書と明細書についても、何のためのものなのかを説明して渡す。

何度も繰り返してきた説明だったが、新しく来院する患者にとってはすべてが初めてのことだ。

そのたびに同じように説明する。

それも今のほほえみデンタルには必要なことだった。

診療室では、それぞれが患者の対応を続けている。

そんな中、真人は見慣れた顔を前にしていた。


「サムさん……。さすがに予約日じゃないのに来るのは……いや、いいんですけど」


「いやぁ、どんなことをしてるのかなって気になって」


「やることはほぼ変わんないですよ……」


真人はそう言いながら、わずかに視線を診療室へ向けた。


(P治療とC治療くらいしか今できないけど……)


今できる治療は限られている。

それでも、必要な治療をして、説明をして、口腔ケアについて伝えていくことに変わりはない。

サムはそんな真人の言葉を聞きながら笑った。


「ハハハ……気にするな。それより、企業健診とやらどうする?」


「そうですねぇ……。あ、ちなみに歯科とは別に体の不調とかを調べる健診ってありますか?」


「ああ、あるぞ。だいたいこの時期に集中する」


サムが時期を指さした。

真人はそこへ目を向ける。


(医科の健診はあるんだ……若干日本と制度が被るところがあるんだよなあ……。でも、日本と違って秋ごろなんだ……)


少し考えてから、真人は口を開いた。


「でしたら、時期が被らない4月~6月の間がいいかもしれないですね」


「確かにな……。あちらの周知とかの問題もあるだろうから、ここはどうだ?」


サムが示したのは5月だった。

真人はその時期を確認する。

ルイの商会側でも、そこで働く者たちへの周知が必要になる。

こちらも通常の診療と並行して準備を進めることになる。

実際に動くなら、余裕を持って決めておいた方がいい。


「いいですよ。5月の中旬から下旬の間で、こちらはいつでもいいです。そうですね……。2~3日に分けてやることと、念のため1人1時間は欲しいです。……いろいろ説明に時間かかるかもしれないですから」


健診そのものだけなら、必ずしも1人に1時間かかるとは限らない。

ただ、この世界では歯科健診そのものが初めてになる。

口の中を診る理由から、必要があればその結果についても説明することになる。

余裕を持たせておくに越したことはない。


「わかった。ルイに伝えよう」


「お願いします」


真人は笑顔でサムにお礼を言った。

企業健診については、これでひとまずルイ側へ話を返すことになる。

あとは向こうの都合と合わせて、日程を決めていけばいい。

するとサムが、思い出したように続けた。


「あ、あと訪問診療とやらなんだがな声をかけてみたら5人ほどやってみてもいいと言ってたぞ」


「え!?本当ですか!!…………。じゃぁ、大地君とあすかさんに伝えないと」


真人はすぐに診療室を見る。

大地は患者に説明をしている。

目の前の患者に向かって話をしているため、今すぐ声をかけられる状態ではない。

あすかは別の患者の歯石取りをしている。

こちらも途中で呼ぶわけにはいかなかった。

真人は2人の様子を見ながら少し考える。


「……う~ん……。あと15分後くらいかな」


「じゃぁ、受付で待ってるかな」


「ところで、ギルドはいいんですか?」


「…………」


「………」


一瞬、言葉が止まった。

真人はサムを見る。

サムも真人を見る。


「だ、大丈夫」


「……怒られても巻き込まないでくださいね」


真人の言葉に、サムは何も返さなかった。

そのまま受付で待つつもりらしい。

真人はもう一度診療室へ視線を戻した。

いつも通りの診療を続けながら、その外側では少しずつ新しい話が動き始めている。

企業健診も、訪問診療も、すぐにすべてが形になるわけではない。

それでも今できることをひとつずつ進めていく。

ほほえみデンタルは今日も、目の前の患者への診療を続けていた。


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