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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第13章『ほほえみデンタル、それぞれの道と新しい一歩』

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02.ここに来るまでの道

大地は布団を敷いていた。

敷き終えると枕の位置を整え、そのまま横になる。

以前勤めていた職場では、院長が急死したことによって院長が交代した。

特に後継ぎもいなかったため、当時勤務していた中で2番手だった歯科医師が、そのまま院長になった。

院長が代わったことで、医院の経営形態もガラッと変わった。

それまでと違うやり方が増えていった。

大地は、その空気がなんとなく自分には合わなくなってきたと感じていた。

仕事そのものが嫌になったわけではない。

ただ、このままここで働き続けるのは違う気がした。

そう思い、辞めることを決めた。

当時ペアを組んでいたあすかも、同じような空気を感じ取っていたらしい。

お互いに相談し、結果的に同じくらいの時期に辞めることになった。

最終日。

これまで一緒に仕事をしてきたあすかと別れる時も、特別なことを言ったわけではなかった。


「じゃあ、またいつかどこかで」


形式的な挨拶をして、そのまま別れた。

その時は、本当にまたどこかで会うことがあるかもしれない。

その程度だった。

まさか、ほほえみデンタルで再会するとは思っていなかった。

真人と志帆とは同じ大学の出身で、先輩後輩という関係になる。

以前から顔を知っている程度ではあったが、同じ職場で働いたことはなかった。

医院を辞めたあとは、田舎へ戻って地元の歯医者で働こうかなと考えていた。

まだはっきりと決めていたわけではない。

どうしようかと考えていた時、お世話になった教授になんとなく相談しに行った。

そこで真人と会った。

真人は今度開業することを話した。

そして、訪問診療に強い歯科医師を探していることも聞いた。

大地は前の職場で訪問診療をメインにしていたことを伝えた。

特に口腔機能に関する実績があることも話した。

すると真人から、是非来てほしいと言われた。

田舎へ戻ることも考えていた。

次をどうするか決めきれていたわけでもない。

そんな時に、自分がこれまでやってきたことを必要としてくれる話が出てきた。


(渡りに船とはまさにこのことだな)


大地はふと笑った。

その後、自分がほほえみデンタルで働くことになり、さらにあすかまで同じ職場へ来ることになるとは思っていなかった。

大地が横になったまま目を閉じる横で、大和は壁に寄りかかりながらアプリゲームをしていた。

画面を見ながら指を動かしている。

前の職場は歯科大学病院だった。

別に大学病院が嫌になったわけではない。

仲の良い歯科衛生士もたくさんいた。

休みの日には、一緒に遊びに行ったりすることもあった。

人間関係にも特に問題はなかった。

それでも、ずっと歯科大学の中しか知らないということが気になっていた。

大学病院以外の歯科医院。

個人経営の歯科医院。

そういうところでも一度働いてみたいと思うようになっていた。

そんな時、嵌っているネトゲに接続する前になんとなく検索をしていた。

特に転職先を本気で探していたわけではない。

なんとなく見ていただけだった。

その中で、ほほえみデンタルのホームページを見つけた。

新しく開業する歯科医院。

ページを見ているうちに、スタッフ募集の案内が目に入った。

その下には問い合わせ用のリンクもあった。

気づいた時には、そのリンクをポチっていた。

そこからはあれよあれよという間だった。

問い合わせをした。

面接の話になった。

実際に面接を受けた。

そして採用となった。

大和は大学病院にも辞めることを伝えた。

そのまま退職し、ほほえみデンタルで働くことになった。

普通に開業した歯科医院で働くはずだった。

それが今では異世界で歯科衛生士をしている。

大和はゲームの画面を見ながら考える。


(日本にいた時じゃ経験できない刺激的な毎日ッス。大変だけどそれはそれで良いっスね)


大和は横になっている大地を見たあと、その先へ視線を向けた。

そこには目を閉じて座っている直樹がいる。

大和は2人を横目で見て笑った。

その直樹は、寝る前の瞑想をしていた。

もともと寝つきが悪かった。

そのため、なんとなく始めた寝る前のルーティンだった。

瞑想をするようになって、よく眠れるようになったのかと聞かれれば分からない。

ただ、途中覚醒はなくなったように感じている。

直樹は以前、大学病院の医事課で働いていた。

そこで仕事を続け、そこそこの役職までついた。

そのまま働き続けることもできた。

だが、母親の容態が悪くなった。

介護が必要になった。

父親はすでに亡くなっている。

自分も結婚しているわけではない。

そうなると、母親の面倒を見るのは自分しかいなかった。

今の職場では、何かあった時にすぐ駆け付けられない。

そのことについては、医事課長にも相談していた。

仕事を続けたい気持ちはある。

だが、母親のこともある。

どうするべきか考えていた。

そんな時に真人と出会った。

真人は、これから歯科医院を開業することを話した。

さらに、将来を見据えて法人化したいこと。

法人化した時に、事務長として任せられる人を探していることを聞いた。

開業する医院の住所を確認すると、自宅からかなり近かった。

医事課長が直樹を真人に紹介してくれた。

直樹は転職することを決めた。

辞めるまでの間に、他の人が困らないようしっかりと引き継ぎをした。

必要なことを残し、仕事を整理してから大学病院を辞めた。

完成したクリニックは、将来を見据えて2階に事務室を作っていた。

医院の裏には院長の自宅もある。

かなり立派なクリニックができていた。

開業地は予定していたところではないが。

直樹はうっすらと目を開けて、周りを見る。

横になっている大地がいる。

壁に寄りかかり、ゲームに夢中になっている大和もいる。


(私一人ならおそらくパニックになっていたでしょうね。………私は私のできることをして医院に貢献するまでです)


直樹は再び目を閉じて心を落ち着けた。

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