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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第12章『ほほえみデンタル、広がる仕事と尽きない課題』

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08.実績づくりの第一歩

企業健診の話をサムとできたので、真人と直樹は医療ギルドを後にする。

日程については複数の候補日と時間を提示し、医療ギルドからルイへ知らせてもらうことになった。

ルイからの返事も医療ギルドを通じてもらう。

多少面倒でも、今後の事を考えるとやっておいた方がいい。


「いやぁ……あんなトントンと話が進むとは」


真人は歩きながら言う。


「午前の話し合いとは全然違いますね」


直樹も隣を歩きながら答えた。

訪問診療と学校健診について話したときは、確認することも多く、話し合いにも時間がかかった。

今回は企業健診についての内容を説明し、今後の流れまで比較的早く決まった。


「とりあえず、実績を作るということに焦点を当てたからね」


「失敗はできませんね」


直樹の言葉に、真人は頷く。

最初の企業歯科健診になる。

ここで問題なく実施できれば、次につなげることもできる。


「実績できたら企業健診の時期をこの時期に固めようって話にもなったしね」


「そうですね」


「まぁ年2回出来たら理想だけど……。しばらくは様子見しようっていうサムさん判断だからね」


「新しい試みですからね……。日本でも企業歯科健診までやっているところは……」


直樹は少し考えながら言葉を続ける。


「ないわけじゃないけど、健康診断と比べると少ないよねぇ」


真人が答える。

日本でも企業歯科健診を行っているところはあった。

だが、健康診断ほど一般的ではない。


「こちらも企業歯科健診については、開業後1年過ぎたらという話でしたしね」


「せめて新規指導が終わってから考えようかってなってたからね」


真人は笑いながら答える。

日本にいた頃は、開業した直後から企業歯科健診まで手を広げる予定ではなかった。

まずは通常の診療を安定させてから。

そのあとで少しずつできることを増やしていくつもりだった。


「新規指導終わるまでとかいう次元ではないですからね……」


直樹が言う。

真人も苦笑いを浮かべる。

今は日本にいた頃とは状況そのものが違う。


「患者さんを何とかして増やさないと困っちゃう」


ほほえみデンタルは異世界で開業している。

この世界には口腔ケアという概念がなく、歯科医院へ定期的に通うという考え方もまだない。

まずは口の中を診てもらうことそのものを知ってもらう必要がある。


「……贅沢を言えばホワイトニングとかの自費もやりたいところですが……」


直樹が少しだけ遠くを見るように言う。


「とりあえず、口腔ケアが浸透するまでは自費については封印かなぁ?……サムさんたちには時期を見て話をしてみてもいいかもだけど」


「そうですね……」


直樹も頷く。

今は自費診療を広げることよりも、口腔ケアという考え方を根付かせる方が先だった。

真人と直樹は、そんな話をしながら家までゆっくりと歩いた。


家に着くと、真人が玄関を開ける。


「ただいま~」


奥から志帆の声が返ってくる。


「おかえり~……どうやった?」


真人と直樹は靴を脱ぎながら中へ入る。

志帆はリビングから真人たちの方を見る。


「うん。問題なかったよ。今後の事を考えてギルドが仲介してくれることになった」


「よかったやん」


志帆は頷く。

今回だけではなく、これから同じような依頼が来た時にも医療ギルドを通す。

その形にしておけば、相手との調整もしやすくなる。


「そっちは?」


真人は志帆へ聞き返す。


「こっちも順調やで。劇の内容もあらかた決まった」


「へぇ……」


真人はリビングの方を見る。

志帆たちが話し合っていた様子は、まだ少し残っていた。


「役とか細かいところはおいおい決めてくとして………。まぁ、なんとかなるんとちゃう?」


志帆はそう言って笑う。

口腔ケアについて子どもたちに伝える劇。

まだ細かいところは決まっていないが、ある程度の形はできた。


「そっか……わかったよ。ありがとう志帆」


真人はそう答えた。


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