↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第12章『ほほえみデンタル、広がる仕事と尽きない課題』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
103/127

03.おいしい食事と新しい依頼

タコ焼きをたくさん作り終えた志帆は、満足そうに息を吐いた。

リビングのテーブルには、食べ終えた皿や小皿が並んでいる。

タコ焼き機にはまだ少し熱が残っていた。

志帆は椅子の背にもたれながら、焼き終えたタコ焼き機を見る。


「は~~……久々のタコ焼き楽しかったわ~」


「でしょうね」


智子は使い終わった皿をまとめながら答えた。

志帆は最初から最後までほとんど手を止めず、タコ焼きを焼き続けていた。

焼いている間も、返す手つきに迷いはなかった。

ルイは残っているタコ焼きを見ながら、志帆へ顔を向ける。


「このタコ焼き……売れると思います。ぜひ作り方を教えてください」


「ええけど……。タコ焼き粉なんてないよなぁ……。小麦粉と水と卵と出汁で溶けば生地は完成。タコはいい感じの大きさに切って、紅ショウガとか……があるかわからないけど……。ネギと……揚げ玉もあるかわからんけど……まぁこのタコ焼き機に生地を流して、具材を入れてくるくる回して完成」


志帆はタコ焼き機を指しながら説明した。

ルイは志帆の話を聞き、焼く前のタネと、すでに空になった鉄板を交互に見る。

先ほど作っているところを見ていたため、手順そのものは理解できているようだった。


「それだけですか?」


「ざっくりとした手順はこんな感じやで。変わり種として、中にウィンナーを入れたり、チーズを入れてみたりエビやイカとか……ワイワイやるのも楽しいで」


「なるほど……それは楽しそうだ。タコ以外も入っている可能性があるから違う名前で露店で売るのもありか」


ルイは口元に手を当てながら、ぶつぶつと言っている。

タコ焼きの形。

中に入れる具材。

売り方。

食べ歩きができる大きさ。

考えることが次々に浮かんでいるようだった。

つむぎはそんなルイを見ながら首を傾げる。


「露店販売もしてるの?」


「手広く商売をしないとね。もちろん商会でしか買えないものもあったりするけどね」


「へぇ~~」


ルイはにこにこと笑いながら答える。

商会で扱う商品だけではなく、露店でも売る。

どこで何を売るかを分けることも商売の一つらしい。

ルイは再びタコ焼きの材料へ視線を戻した。


「麦粉はあるから大丈夫でしょう。出汁は……」


「小魚とか昆布……みたいなのがあればまぁなんとかなるかと」


智子は片づける手を止めて答える。

出汁がなければ、タコ焼きの生地の味は変わる。

小魚や昆布に似たものがあるなら、代わりになる可能性はあった。

ルイは少し考えてから頷く。


「ふむ……漁師に聞いてみるか。で、その昆布とやらは?」


智子はキッチンの棚へ向かう。

棚を開け、保存してあった昆布を1枚取り出した。

乾燥した黒い昆布を手に持ち、ルイのところへ戻る。


「乾燥してますけど……これが昆布です。おいしい出汁が取れるんですよ……」


ルイは智子の持つ昆布を近くで見る。

乾燥した状態では硬く、先ほどの料理に使われていた出汁とは結びつかない見た目だった。


「ほぉ……。1枚もらっても?」


「どうぞ」


智子は昆布をビニール袋に入れ、ルイに渡した。

ルイは受け取った袋を持ち上げ、中の昆布をもう一度見る。

これと似たものがこの国にあるかどうかは、漁師へ確認するしかない。

ルイは袋を大事そうに手元へ置いた。


「いやぁ……実においしい食事でした。ありがとう」


「ハッ!!そうだ、あの……タコのお代は……」


真人はふと思い出した。

あすかと大和には白穀代のお金を渡していた。

だが、突然持ち込まれたタコのお代までは渡していない。

料理に使い、みんなで食べたあとになってから気づいた。

真人の顔を見て、ルイは笑いだす。


「大丈夫ですよ。このタコは調理法を教えてほしいという私からのプレゼント。ということで」


「あ、そうですか……」


真人は少し肩の力を抜いた。

代金を払わずに食べてしまったのではないかと気になったが、最初から調理方法を教えてもらうために持ってきたものだったらしい。

ルイは手元の袋を置くと、真人へ向き直った。


「ところで、お口のケアについてなのですが……」


ルイの声が、それまでより真剣なものに変わる。

真人も姿勢を整え、ルイを見る。


「はい、なんでしょう?」


「うちの従業員の健康管理の一環として、見に来ていただくことは可能ですか?」


真人は一度、ルイの言葉を頭の中で整理した。

商会で働いている従業員の口の中を確認する。

それは日本にいたころの形で言えば、企業で行う歯科健診に近い。


「……企業歯科健診の相談……」


「難しいですか?」


「虫歯・歯周病の有無の検査……えっと、悪いところがないかのチェックが中心になりますが、いいですか?」


「そこで悪いところが見つかればこちらに来て治療となるのかな?」


「はい。そうなります。えっと、予約制になりますが」


「費用は?」


「健診費用はお一人3300円です」


「ふむ。……治療に入ったらそれは別途かかると……。まぁ当たり前か」


ルイは顎に手をやり考える。

従業員全員分の健診費用。

悪いところが見つかった場合の治療。

商会としてどこまで負担するのか。

考える必要があることは多そうだった。

真人もルイの返事を待ちながら考える。


(企業歯科健診まではさすがに考えていなかったなぁ……。ルイさんが帰ったらサムさんのところに行こっと)


訪問診療の話は医療ギルドでしてきた。

だが、商会や職場単位で歯科健診をする話までは出ていない。

こちらで勝手に決めるわけにはいかなかった。

ルイはしばらく考えたあと、真人を見る。


「従業員の健康管理の為にぜひ来ていただきたいな。……難しいですか?」


「え!?逆にいいんですか!!」


「いいですよ」


真人は思わず声を上げた。

健診を受けてもらえるだけでも、口の中の状態を知ってもらうきっかけになる。

ルイが了承しているなら、進められる可能性は高かった。

真人は志帆たちを見る。


「う~~ん……どうする?」


「従業員の人数は?」


志帆がルイへ確認する。


「正規職員は30人ですよ」


真人は人数を聞き、同行するスタッフを考える。

診療所をすべて空けるわけにはいかない。

30人を確認するなら、歯科医師だけではなく、歯科衛生士にも同行してもらった方がよかった。


「じゃぁ、俺と大和くんと美里さんで行く?」


「いいっスよ」


「問題ないです」


大和と美里はすぐに答えた。

真人は2人の返事を聞き、次に日程を考える。


「あとは日程……」


「そちらの都合の良い日でいいですよ」


ルイは急かすことなく答えた。

直樹は真人たちの話を聞きながら考える。


(今後もそういう依頼が他から来たときに備えて、サムさんと相談して時期を限定しておくのもありですね)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。