22話 ルカの特技
誰もができると思っていた事は、生まれつき与えられた特別な力だった。ナギが信頼した仲間の心を読めるように、マナが悪意や魔物の気配に気づけるように、リクが毒の効果を無視できるように、ハルの耳が良いように、他にはシノブの嗅覚やシイナの部分筋肉強化のような人間の五感や身体機能が他人よりも優れているものを人は「特技」また、「強化機能」と呼んだ。
リクには「免疫」、マナは「触覚」、ナギは分類が難しいが「視覚」、ハルは「聴覚」などが例である。
再現力はルカが後天的に地道な努力で身につけた水魔法練度によるものであり、完壁な模倣の為に必要な2つは特技としてルカは持っていた。それは視力に繋がる観察力と記憶力である。それを両立させる特技をルカは「完全記憶」と自身で呼んでいた。
短期間であれば視界にいれた全ての瞬間を覚えておけるが、数日、数年単位で覚えている方法の一つとしては、覚えると意気込みながらそれを見つつ、寝る前に何度も頭の中で長期用に記憶し直す必要がある。
今までの旅でも何度もこの特技を使っていた。1番は魔法を使用する際の技の再現率を100パーセントにする時であり、他にも敵の位置を覚える事で見ていなくても攻撃ができたり、迷いの森では一瞬霧が消えた間にカゼオドリの位置を覚え倒していた。
覚えようと思わずとも印象が強いと勝手に頭に残り続けてしまうのがこの特技の難点であったが、最近の記憶はどれも仲間が笑っている瞬間ばかりである。苦しめられた事があるこの才能ではあるが、大事な記憶を忘れさせないでくれる事に感謝していた。
自分を叱る悪魔も異常な記憶力も、確かに自分の力である。「自分に与えられた物に感謝して他人を助ける為に使いなさい」、7歳の誕生日に父と母から貰った本の最後のページに書かれた、最愛の人からの最期の言葉を胸に水の姫は旅をつづける。
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ルカは攻撃を躱しながら、攻撃の癖以外にも何か発見できる事が無いか観察していた。
ガイラ「(これは、癖読まれちゃってるっすね)」
ルカ「(あれは、単純に私に技を当てる為というより私がどう動くか観察する目だ)」
ガイラは変わらず、一歩も動かないままルカに攻撃をつづける。そしてルカに自身の攻撃時の癖を読まれた事に察知しそれを逆手に取るように、左手の指を曲げると左側に飛ばしていた岩塊を逆に飛ばす。
ガイラ「(これでおわりっすかね)」
ガイラが直撃すると確信しながら飛ばした岩は、ルカの手から流れる水に飲み込まれ軌道を逸らされ狙いが外れる。裏をかく筈が完全に読み切られていた事で動揺したガイラにルカが防御と同時に放った小さな水飛沫が目の前に迫っていた。
ガイラ「やっちまったっすね」
水飛沫はその大きさからは想像出来ない程の威力と範囲で破裂する。
ルカ「水種[スィード]」
ガイラは咄嗟に両手に岩を纏って顔を守るが、大きなダメージを負ってしまう。しかし、岩のグローブが視界の邪魔をして、その中で攻撃の合図の癖で指を少し動かしたがルカには気づく余地がなかった。先程軌道をずらした小さく硬度が高い岩がルカの水の流れの中から飛び出しルカの背後に直撃する。
ルカは首を捻り背中を確認し、起こった事を瞬時に理解し軽く手足を動かして身体機能の低下を確かめた。
ルカ「(今のは見た目以上に被害が大きい)」
ただ、恐ろしいのはルカが自身の背後を確認して、手足をブラブラと捻って跳躍している間にもガイラに次々と攻撃を続けている点であった。頑なに立ち位置を変えないので距離感と座標を覚えられているガイラにルカの猛攻が襲い続けていた。
ルカ「水地[スイッチ]、水縛、水斧、水天落!!」
波を発生させてガイラの足元を奪い、堪らず飛び上がった所に水の縄で動きを抑制しながら首元へ斧、頭上に滝の様に大量の水を降らす。
ルカ「(やっとマスターを動かすことができた。無事には着地させないんだから)」
ルカ「泡檻!水砲!水大剣」
「あの規模の魔法を連発するなんて…、一体あの子は何者なんだ!?」
観客、詳しくは各国の戦闘の猛者達がルカの練度とMP量におもわず声をあげてしまう。
この猛攻でも倒せないガイラの防御力の高さを見て、ハルは風柱ジガワの最後の言葉を思い出す。
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風柱「次は岩か?あいつの硬度は柱一だ。今のお前たちにあの鎧を破る術は無い。考えるんだな」
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ハル「(僕も早く岩魔法の練度をあげて硬度を高めないと勝ち目は無いのかもしれない)」
ハルは、先に待つ岩柱戦と決勝で戦うかもしれない岩マスターを相手に戦う術を考え始めていた。
ハル「(今は、リクとルカに勝つ策を考えなきゃ)」
ガイラ「ダメージは2割ってとこっすかね」
ガイラが身に纏った装甲はルカの魔法コンボから身を守っていた。しかし、その防御策を予測したルカの攻撃は確実に鎧を砕き、みぞおち部分に小さな円形の穴を開けダメージを与えていた。
ガイラ「水マスターより、手札多いんじゃないっすか」
ルカ「水マスターの技は全て使えます。水マスターには何年も会っていませんが、何をしているか分かりますか?」
ガイラ「さぁ?わからないっすけど、マスター会議は毎回出席してるっすよ…、え、あ」
ガイラは口に手を当てて、目を大きく見開く。
ガイラ「マスター会議、もうすぐじゃないっすか、開催は確か風国だったはず。まぁ、でもこの大会優勝してからでも間に合うか…」
ガイラは、ルカの方を見て、ニイッと笑う。
ルカ「再開でいいですか」
ガイラ「もちっす」
ガイラは手のひらを天井に向け、人差し指と中指を折り曲げる。その2本の指に合わせて地面から一帯に岩がせり上る。空間内でその影響が無いのはガイラの立つ半径数十センチだけである。つまり、ルカの立つ地面がそのまま天井まで上がり潰される事が確定する。
ルカ「(さっきの落石は割れたけど、これは話が違う。潰される前に決着を…)」
ルカが踊水を纏い、前に進もうとした瞬間にガイラが目の前に現れ、手に持つ小さなハンマーでルカの心臓部分を打ち付ける。
ガイラ「ハートショック」
サナスの能力により作られた仮想空間で実際に身体が傷つくことはないと理解はしているが、その攻撃を喰らった瞬間に確かに死んだと感じてしまった。心臓だけが体から飛び出していきその臓器としての役割放棄したと錯覚するほどの技であった。
ルカが目を開けると、壁や天井は消えており綺麗な青空がそこにあった。
ルカ「負けちゃったかぁ。(あんなに同じ場所に留まっていたのに……飛び出してくるタイミング絶妙で上手いなぁ)」




