14話 強がりの姫
リリスはリクの手を引き……
リク「は? 空とんでる~!!」
リクはほぼ何も力を入れていないがリリスが空へ空へ奥へ奥へと連れていく。意思とは無関係に引っ張られて空を飛んだのは『双子玉』以来の経験であった。しかし無意識とはいえ空を駆けている感覚がある。リリスは後ろを向きながら驚いているリクを見て笑っている。
リク「前、見なくて大丈夫なの?」
リリス「リクと心中するのは悪くない」
リク「前向けぃ!」
リリスはほっぺを少し膨らまし前を向く。
しばらく空の散歩をした後2人はグリル村から相当離れた崖に着く。
リク「ここどこ…うぉお」
リクはその絶景に言葉を失う。右にはスピリタス火山、空は吸い込まれそうな程の青色で、左には遠目に水国の氷山が見える。
リク「正直、強引に連れてこられた事に物申したかったけど、この景色見たら感謝しか無くなったわ」
リリス「良いところじゃろ。妾がこの国で一番好きなところじゃ」
少しリリスの目に曇りをリクは見つける。
リク「なにか話したい事があるなら聞くぞ?」
リリス「……」
リク「俺はここの民じゃない、弱いところを見せてもいいし助けを求めてもいいんだぞ」
リリス「今から5年前土城に大長がやって来てな、そのとき父上と母上を殺された」
リク「…」
リリス「あの男の顔は忘れない。紫の炎を操る巨悪じゃった。妾とゼント以外にほとんど生き残りはいなかった。さらに、そこに大地震が起きた。本当に大変じゃった。亡くなった兵の家族は妾達を責めた」
リク「そんな、リリスは悪くねぇじゃんか」
リリス「仕方がない、怒りの矛先を直接大長や柱にぶつけることもできまい」
リク「そうだよな…いままで頑張ってきたんだな」
リリスの頭にリクのマメだらけの手を乗せる。その手を小さなスラリとした手でリリスは握る。
リリス「撫でられるなんて、なんと久しい事か」
リク「俺の前では強がらなくていい弱くたっていい、強いリリスのことも知ったし、弱いリリスのことも知りはじめた、そんな存在がきっと必要なんだ」
リリス「妾の泣き顔を見られるなんて誇りに思うんじゃな!」
その瞬間のリリスは一国を背負う王ではなく、一人の少女としてリクの胸で泣いた。リクは無言でそれを抱きしめた。口下手と自負していたリクにしてあげられる事はこれぐらいしかないと自分で思っていたが、それがどれだけリリスの心を救ったか知らなかった。そしてリクは考えた結果、自身の過去を語った。
リリス「さぁ!もどるぞ!涙を流したのは二人の秘密じゃ、妾の過去はすきに仲間と共有するがよい。許可してやろう」
リク「あぁ、わかったよ」
リクはリリスの頭を再び撫でる。
リリス「なっ、調子に乗るでない」
リク「それもわかった!さて、帰ろうか」
リリス「空廊土 【スカイロード】」
リリスは手から土魔法を上空に放ちそれを追うようにリクの手を引いて飛び上がる。
打ち上がった土は、空中で止まっていた。ルカの水槍や龍を止めた能力だった。リリスの簡単な説明によるとリリスの指の先にある物の座標を『固定』するものらしい。
宙で止めれば足場となり、目の前の土の壁に発動すればたちまち鉄壁となる。
細かい能力の概要は5年間の猛特訓で把握したとの事である。5年という歳月がいかに意味のあるものか、この数ヶ月で柱と大長を倒し相当成長したリクには理解が容易かった。
―――グリル村―――
ゼント「リリス様!おどちらにお行ってらっしゃったので?」
リリス「例の場所じゃ」
ゼント「そうでしたか、それは良かったです」
ハル達には何が良かったか理解できなかったが、リクには胸の内を明かせる相手で良かったです、とそう聞こえた。
サナス「リクさんも帰ってきた事ですし 今日はここまでにしましょう。私も明日からの能力の行使に向け休息を取ります」
4人は去るサナスに頭を下げる。リクとリリスが不在の間サナスの能力で特訓をしていたのであった。
リリスの提案で、大会前日の宿はリリス達の泊まる高級宿で一夜を過ごせる事となった。ルカが水城を出る際にBSを沢山持ってきたが、減るどころか謝礼で増える一方だった。宿は極力使わず野宿をしてたまに泊まる時はなんだかんだ、タダ泊が多かった。
マナ「クルト君のお父さん見つからなかったね」
ナギ「明日探すしかないな」
マナとナギとルカは、それぞれのベッドで布団も被らず大の字に転がり話していた。
ルカ「ダンジョンに向かうまでにこんな展開になるとはね」
マナ「本当だね。ねぇ、リクってクルト君やマロンカちゃんにリリス姫、年下の子に好かれやすいのかな」
ナギ「リクは育った村では末っ子の様な扱いされてきて、道場でも兄弟子に可愛がって貰っていたって聞いたぞ。そいえば、ミルク村でもチャーイって子に懐かれていた気がするな」
ルカ「年下として可愛がられる嬉しさを知ってるってことなのかな」
ナギ「ただ単純にリクも子供っぽいって事なんじゃないか?笑」
マナ「あ、今の絶対リクにツッコミされるヤツだ」
ナギ「たしかに笑」
――――――
リリス「(自分の知って欲しい過去を知る人がいるだけでこんなに楽になるものなのじゃな。ありがとうリクよ)」
――――――
そして朝が来る。
大長3「さぁて、楽しむぞー!」
試合会場へと人々が次々と集まる。屈強な男から魔法だけで生き抜いてきた魔法使い、無防備に見えて武器を隠し持つ盗賊に、腰の曲がりきった老人。十人十色の戦士達が集まっていた。
土マスター「お前らよく来た。10分後から順次試合を始める。1秒でも遅れれば不戦敗だ。わかったな!!」
戦士たちは雄叫びを上げながら片手を上げる。
ハル「あれが噂の土マスターか、たしかにお金をまきあげていそうだ」
マナ「大きな魔物反応のせいで、土マスターの悪意読み取れないな」
ルカ「あ、リリスちゃんもいるよ」
大会用の大きなスペースをゼントと岩マスターが整備し後ほど空間が展開されるスペースに述べ243名の参加者が集まっている。そして広いスペースの中心に立てられた巨大な岩の柱の上に土マスターがあぐらをかき、リリスが勇ましく立っていた。
土マスター「リリス様にもこの大会を見届けていただける。ここでくだらない試合をすれば一生の恥だぞ」
「あれが土国の王か」
「思ったより小さいな、あんな小さい嬢ちゃんで大丈夫か?」
土マスター「リリス様一言お言葉を」
リリス「皆の者よ。よく集まってくれた。優勝した者にこの国宝を譲る事を誓おう。存分にいままで生きぬいた力を発揮して欲しい。皆の頑張り楽しみにしておるぞ」
リリスの言葉に大歓声が起こる。
リク「きつい言い回しも時々あるけど、大人気じゃねぇか、リリス」
ハル「たしかに。盛り上がってきたね」
ナギ「受付の人が8試合同時にやるっていってたよな」
ルカ「256人形式のトーナメントを8等分して、そのブロックの勝者が決勝トーナメントにいけるみたいだね」
マナ「私達の中にブロック同じ人いるんだっけ?」
ハル「僕とナギが一緒だ、でもブロック内で離れているから…」
ナギ「あぁ、予選トーナメントのてっぺんで会おう」
ハル「望むところだ、今の発言負けフラグにするなよ」
ナギとハルは拳を合わせる。
ルカ「他は被ってる所ないから決勝トーナメントでの対決だね」
ナギ「岩マスターと違うブロックでよかったな」
マナ「本当だよね。国宝を手放さない為か優勝を全力で阻止しに来ているよね」
リク「まぁ、紋章と能力がなければ何とかいけないかな?」
リクは先日、雷属性をスパルタ気味に指導してくれた雷マスターのデバを思い浮かべ甘い考えを捨てる。
リク「まずは俺の出番だな」
土マスター「それでは第一試合開始!」




