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ノートクエスト  作者: 伊達柴紫
3章 封印とダンジョン
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13話 土姫と水姫

―――グリル村―――

 そしてまた村に活気が広がり始める。また新たな一日の始まりだ。

 比較的早起きなハル達一行は大会前日の時間の潰し方を話し合っていた。

リク「まぁ、1番はクルトの父親探しだよな」

ナギ「それと薬…」

リリス「迎えに来てやったぞ!」

 会議を完全に断ち切り上空からリリスが降ってくる。そして着地点にはどこからか現れたゼントが土を舗装する。

 

リク「は?」

リリス「妾が崩れた道を歩くなど言語道断じゃからな、道を踏まぬよう跳躍してきた」

 リリスが飛んできた方向には何軒も家が立っていた、それを軽々と飛び越えてきたのだ。

リク「忍者みたいな身体能力しているな」

リリス「くの一の様な美貌があるのは否定せぬが、妾には忍ぶことは向いておらぬ」

 

リク「それで迎えに来たって?」

リリス「今日はリク、お主と共にこの暇な時間を潰すぞ。ほら早く着いてこい」

ルカ「一国の王と良い関係を結べる事はこれからの旅においてもプラスになると思うよ」

リリス「お主良い事をいうな。妾の召使いにしてやろうか?」

 

ゼント「あー、昨日は気が付かなかったが、このお方もしや水国の姫ルカ嬢、ルカ姫ではないですか?」

リリス「なんと。そうなのか?」

ルカ「はい。すみません昔お会いしていましたか?」

ゼント「私は当時兵士として先代国王と共に水国を訪れておりました。大きくなられましたなぁ。…王妃の訃報は伺っております。ルカ姫は何故旅を?」

 

ルカ「私はいつか国民を正しく導くため沢山の事を学ぶと同時に、幼い頃から鍛えてきた力で困っている人々を助けるのが目的です」

リリス「ふむ。鍛えてきた力か、お主はどんな能力を持っておるのじゃ?」

ルカ「能力も紋章もまだ発現していないです…」

リリス「それで鍛えたとは甘いのではないか、そんな力で民を守れるのか?」

ルカ「今の力に満足はしていない、これからも成長する事で可能になると思ってる!」

 

リリス「やはり甘いな、つまらぬ女じゃ」

ゼント「リリス様、ルカ姫は歳上で…」

 リリスがゼントを睨むことでその発言を遮らせる。

リク「別にお前の事嫌いじゃなかったけど、仲間の事を貶すんなら話は別だぞ」

リリス「勘違いするでない。今の発言はこの甘ったれな姫の成長の機会を与える言葉じゃ」

リク「ルカが甘ったれ?ルカがこれまでどれだけ努力してきたと…」

 

リリス「ここで力比べでもしてみるか?」

ゼント「やれやれ」

 ゼントはいつの間にかサナスを担いできている。

ルカ「望むところ…」

 


 ゼントに連れて来られたサナスが作り出した空間にルカとリリスが入っている。

マナ「ルカ…」

リク「ルカなら大丈夫だ」

ゼント「リリス姫は紋章と能力を使えるがどういう戦闘ルールになるかはわからねぇな」

 リクはこの男がリリスやルカと話す時とそれ以外で明確に態度を変えているのを少し不安に感じる。


ルカ「紋章も能力も惜しまず使って」

リリス「いいやダメじゃ勝負にならなくなる」

ルカ「本気のあなたに認めて貰わないと意味が無い」

リリス「ふんっ、後悔するがよい」

サナス「はじめ!」

ルカ「水龍の三神器」

 水の槍と大きな盾、そして龍を創成する。ノータイムで龍が咆哮を放つ。


ゼント「水魔法使いとしては規格外の強さじゃあねぇか。だが弱い」

リク「(ルカが弱い?)」

 リクは自分を含め、ルカが一番強いと考えていた。圧倒的MPに加え全てのスキルの習得、どんな場面もルカの魔法がパーティーを助けていた。強い大人もルカの事は必ず誉めていたし、魔法に関して最も身近な尊敬する人としても位置づけていた。

 そんな一緒に旅をするのが誇り高くなる仲間が、一人の少女に倒されるのを黙ってみるしか出来なかった。


 水の槍と水龍はルカの操作を無視した。と言うよりも時が止まったように水の一滴も垂れることがなかった。

ルカ「(何これ。動かない)」

 先日強敵バートを撃破した技が完全に攻略された瞬間だった。リリスは水の盾を自身の土魔法で無力化して龍の下を1歩ずつ進んでルカに近づく。ルカもおそらく能力の影響で身動きが取れなくなっている。


リリス「圧倒的差じゃ。妾は紋章を使っておらぬぞ」

 リリスが手に持った黒い扇子を指の上で回転させると扇子から刃が生える。仕込み扇子というものである。その扇子で身動きの取れないルカの頬に刃を当てる。

リリス「これが妾の能力じゃ。しかしこれじゃつまらぬ、解除してやろう」

ルカ「……じゃあ紋章を使って」

リリス「仕方ないのう」

 

 水龍と槍が地面に落ちて、滝の様に水が降る。体の自由を取り戻したルカは両手を横に伸ばしながら回転をして、形を失った水を再び操作する。

 リリスは仕切り直しと言わんばかりに距離を取った後に再びルカに近づいてきていた。

リリス「(ありえん水量じゃのう。この実力があればマスターとの実力の差もないじゃろう)」

 

 横から迫る水龍を、軽く地面を蹴り宙を舞うことで躱す。空中で回転しドレスを靡かせ、水飛沫を受ける少女はとても美しい。回転に合わせ土魔法を放ち宙に道を作る。

リリス「水を浴び道が泥になれば妾の靴が汚れるではないか、そんな心配は必要ない」

ルカ「そんな心配してない!」

 リリスはルカの放つ水の武器を全て否すか、躱すかを瞬時に判断し近づいていく。

 

ルカ「(これが紋章の力、何にも技が当たらない)」

 ルカは自分の記憶から必中の技を探す。

ルカ「水塔」

 ルカを中心に置いて巨大な水の柱を生み出し広がっていく。仮に魔法で守ったとしても必ずルカの水に触れてしまう。

リリス「おっと。うわっ」

 進軍を止めたリリスに波が襲う。リリスに水が触れた瞬間ルカは空間に溢れた水をリリスの元に集める。

ルカ「必殺 乱水槍」

 水に閉じ込められたリリスに渾身の一撃を投じる。

リリス「(なるほどな)」


 空間は縮んでいき、2人が放り出される。

リリス「濡れたドレスも元通りになるのは良いな」

サナス「もしドレスについた魔法が火でしたら、大惨事ですからね」

 

ハル「?」

 

リリス「ルカ姫と言ったな。侮って悪かったのう」

 リリスは俯いている。

ルカ「いいえ。私もむきになってごめんなさい。リリスちゃん本当に強いね」

リリス「ふんっ、当然じゃ。妾が倒れれば次は民じゃ、早々に負ける訳にはいかぬ」

ルカ「(色々と棘のある発言も多いけど、民の事はしっかりと思っているんだ)これからよろしくね」

リリス「あぁ」


 突如始まった姫同士の対決は、能力有りのリリスが勝利の後に能力無し紋章ありのリリスにルカが勝つという結果になった。そして土国の姫と水国の姫が固く握手をしてこれからの良好な関係を約束した。

 そしてリクが半ば強引に連行されていった。


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