12話 成功パターン
リリス「リクよ妾の伴侶となれ」
まるで時が止まった様な状況、リクに視線が集まる。
リク「は?」
ゼント「へ?」
リクはこの旅で一番息の抜けた情けない声を出す。
リク「リリスさんと結婚って事?」
リリス「そうじゃ。それに呼び捨てかつ、かしこまらない話し方で良い。妾を名だけで呼ぶことができるとはいささか特別扱いがすぎると自覚するが良い」
何と答えるのが正解なのかリクには分からなかった。まだ会って数秒の一国の姫に求婚?をされたのだ。困惑して当然である。それにそのリリスの前にいる男もサングラスにオールバックという一国の姫に仕える者とは思えない格好をしていた。
リク以外の4人はいつの間にか一歩後ろに立っている。
ゼント「早く答えろ。答えは決まっているだろ」
リリス「何か懸念点があるのか?この国に訪れた目的はなんじゃ?叶えてやろう。国宝を求めてきたのか?」
リク「この村に国宝があるのか?」
ゼント「なんだ知らないのか。明後日この村で大会が開催されるその優勝商品が国宝なんだよ」
リク「だからこんなに賑わってるんですね」
リクは動揺からか丁寧語とタメ口がごちゃまぜになる。
リリス「ふむ。妾は強い男を好む。いくら妾の好みだからといって早急に決めるべきではなかった」
リクは普通に褒められたことで喜びながらも事態の収集へ向かったようで安心する。
リク「この村に来た理由はクルトという少年の父を探すためです」
ゼント「名前はなんていうんだ?」
リク「あ…」
リクは後ろにいる仲間の方を振り返るが、全員首を横に振っている。
ゼント「名前も知らないで人探しかよ」
ハル「戦士という情報と土マスターに直談判をしに行ったという情報しかないですね」
リリス「土マスターはこの村にいる。それに戦士であれば大会に参加する可能性も高いだろう。リク達も参加するといい。大会は能力によって傷や痛み関係なく戦うことができる。多くの者の参加を後押ししている筈だな」
リリスはゼントに先程見た『仮想』の能力について説明させる。そして改めて大会に誘うのであった。
ハル「皆はどうしたい?」
ルカ「参加してみたい」
ゼント「嬢ちゃんノリがいいな。そういうのおじちゃんすきだぜ」
ルカに向けその強面を近づけるゼントの耳を引きちぎれるほどリリスが引っ張る。
ハル「(自分たちの経験や技術の向上になるかもしれない)」
リク「マスターは大会に参加するんすか?」
リリス「…。岩マスターが参加するという情報だ」
ハル「この村にマスターが2人も」
リク「それはアツイっすね」
リクの表情は岩マスターと戦ってみたいといった表情である。
ナギ「国宝は優勝すれば本当に貰えるんですか?」
リリス「まぁ実際、岩マスターを倒せればじゃな」
マナ「(マスターを出す時点で国として国宝をあげる気はあんまりないってこと)」
ハル「(怪我の出来ない状況でレベルアップの機会があるのはやっぱり嬉しい。クルトのお父さんを探しながらも)参加させてください」
ゼント「ふん。あっちに受付がある。行ってこい」
リリス「リクよ活躍期待しておる。見込んだ妾に恥をかかせぬよう魅せてこい」
リク「それは頑張りますよ」
ゼントとリリスとの初対面はなんとか大事にならずに済んだのだった。このエンカウントの仕方でリリスが敵対するルートもあったが今はひとまずよろしである。
ハル「あれが土国の王リリスか。ルカはアケビさんみたいに会ったことあるの?」
ルカ「んーん。初めてみたよ。でも先代国王が一度水国に来たことはあったかな。あの歳で王位を譲ったんだとしたら、多分先代国王はもう…」
その言葉の先は皆察する。若くして父母を亡くし急に王位を譲られ国を任された少女と城の者達が苦労する事は想像に容易かった。
リク「初プロボーズされちまったなぁ」
ナギ「OKしなくていいのか?笑」
リク「んー、うん」
ナギ「お、おう」
少しふざけて聞いてみて、色んな断る理由と共に返事が返ってくると思っていたが曖昧なそれにナギの返しもふわふわとする。
係員「5人の参加だね。人探しのポスターもここに貼っておこう」
ハル「ありがとうございます。試合形式はトーナメントでタイマンですか?」
係員「ああ。禁止事項としては紋章と能力の行使ぐらいだな。あとは武器の持ち込みは認めているが防具は1つまでとする。それは明後日配るよ」
リク「トーナメント…今の所何人の参加申し込みあるんですか?」
係員「現時点で200人を超えてるね。おそらく256人の形式かな」
リク「思ったより多いですね。255回前後の試合数あるんですね」
係員「8試合まで同時に行えるみたいだし、結構早い展開にはなると思うよ」
リク「ありがとうございます!」
リク達は後ろにも参加申し込みを求める人が並ぶのを見て質問をやめて避ける。
係員「頑張ってくれ!」
深くお辞儀をしてその場を去る。申し込み場の付近には敵の視察と言わんばかりに目を光らせた戦士達が待機していた。マナやルカは自分が舐められていると感じ取っていた。
マナ「どこも宿いっぱいだね」
ルカ「バラバラで泊まればいけるけど、魔物の反応…」
マナ「ずっと感知してる」
マナは常にある程度の意識を巨大な魔物の反応の方に向けているので自然と口数が減っていた。
リク「さて、また村の近くで野宿するか?」
「君たちも大会参加者ですか?」
そう話しかけてきたのは、大会開催に際して必要不可欠の存在である、『仮想』のサナスだった。
サナス「僕は大会のフィールド作り担当のサナスです。以後お見知り置きを」
リク「リクです。よろしくお願いします。5人とも大会参加者です」
サナス「宿はもう飽和状態でしょう。過去最大の規模ですからね、どうです?僕の『仮想』空間の中で休むか修行しませんか?傷もつかないし痛みもありません」
ハル「能力ですか?」
サナス「はい。やってみます?」
リク「んーお願いします」
一応悪人の可能性もあるので、リクとハルはマナの方を見る。しかしいつもの大丈夫のサインとも敵というサインも出ない。
マナ「わからない」
マナは声にしないで前に立つ2人に伝える。
リク「(大きな感知に飲み込まれているみたいな感じなのか?)」
しかし大会前に試合のフィールドを踏めるのは大きなアドバンテージになる。3人を外に残し、リクとハルが
立方体に包まれる。
サナス「存分にお楽しみ下さい」
リクとハルが同時に自分の利き手と反対の手を軽く斬る。
リク「本当に痛みねぇな」
ハル「面白いね」
リク「ジャンケンいくぞ」
リクとハルは意思疎通をして、突如始まったジャンケンだったが外野のサナスは全くその意図を読み取れていなかった。
サナス「何のやり取りでしょうか」
ナギ「HP9割削られる方を選んでるんです。万が一空間内のダメージが外に引き継がれてしまった時に片方だけで済むように」
サナス「疑っているというのに、怖い程強い精神力ですね」
マナ「精神力とは、少し違うと思うんですけど 無茶を良くする二人です」
そうナギとマナが解説している間にリクは自分の上方にナイフを多数投げる。宙に舞い上がったナイフは回転しながらリクに降り注ぐ。いつもリクの戦いを支えてきたナイフ達が心なく主を切り刻む。
そしてしばらくした後空間が縮んでいき、2人が解放される。
ハル「大丈夫か?」
リクは飛び起きてピョンピョンと跳ねて見せる。
リク「問題ないな」
ルカ「凄い能力ですね」
サナス「空間の外から攻撃は可能ですが、ダメージは同じく負いませんので意外と魔物戦でも使えるんですよ」
リク達はサナスに立方体を出してもらいその中で寝袋を広げる。サナスの目的は分からずのまま別れ自身の宿に向かっていった。
ナギ「これ、ダメージ負わないと出られないのか?」
リク「それなら仕組みを知らないと永遠と捕えられるんじゃないか?しかも、内から外に攻撃出来ないのに外から内は出来るんなら、ダメージを与えられないにしてもいくらでもバトルを有利に動かせそうだな」
最低限の能力の説明を聞くだけでその活用方法を何通りも思いつくリクのとっさの発想力はこのパーティーの中でも秀でていた。
そしてグリル村一日目を終えるのだった。




