11話 自由姫との遭遇
―――グリル村―――
リク「こん中からクルトの父親を探さなきゃか」
ハル「そうだね。一応土マスターも探してみよっか」
ナギ「どうする?手分けするにも手がかりから探さないとだが…」
ルカ「マナの感知した魔物のこともあるし分かれるのはリスク高いと思う」
リク「じゃあまとまって聞き込みするか」
マナ「うん!あと気になってるんだけどなんで道の真ん中だけこんなに整備されてるんだろう?」
リク「さぁ?」
ルカ「カーペットみたい。でもこんな熱気ある村にカーペットを歩くような立場の人なんて…」
そう言うルカの視界の端にオレンジのドレスを来た少女が写り、そのまま建物に隠れて見えなくなる。
――――――
土マスター「開催の準備は整ったか?」
土マスターは高圧的な態度で痩せこけた男に話かける。
「滞りなく済んでおります。本当に僕の願いを叶えてくれるんでしょうね」
土マスター「今回の大会はお前の能力ありきだからな、報酬の期待は存分にしてかまわん」
「それなら良いのですが。それはそうと以前会った時との性格の差は何なのですか?お言葉ですがもっと臆病で心優しき御方だったと記憶しておりますが」
土マスター「主を見つけて変わったんだ」
そう話す男2人の元にリリスとゼントが到着する。
リリス「その主が来てやったぞ」
土マスターはリリスの声が聞こえたや否や膝をつく。
「なるほど。リリス様についたという訳ですね」
ゼント「リリス様の魅力にはマスターとて変わらず見えているという事だ」
リリス「そなた名前は?」
サナス「サナスでございます。以後お見知り置きを」
痩せこけた男はそう言うと、華麗に礼をする。
ゼント「無傷で戦えるという能力見せて貰おう」
土マスター「相手は俺が」
黒いサングラスを付けた男はリリスからサナスへと向きを変えた瞬間、穏やかな表情から一変眉間に皺を寄せ相手を萎縮させるためのような表情をする。
一方体格の良い男は好戦的に首と指を鳴らしていた。
サナス「それでは!『仮想』世界」
サナスが両手を合わせ人差し指だけ伸ばし他の指を固める。すると、透明なまるでシャボン玉のようなものが土マスターとゼントを包み込み大きくなり、自由に動き回れるサイズになった所で立方体へと形を変える。
サナス「この中で受けた傷は解除後に引き継ぐことはなく、この中では痛みもありません。しかし痛みの代わりに受けたダメージによって身体能力は低下していく仕組みです。また、どちらかの体力が1割以下になると同時に解除されます。その仕組みを使って大会を行います」
村の景観にそぐわない歪な立方体の中で戦いが始まる。
ゼント「(ここでこの男に勝つのは不自然か)」
ゼントは両手を地面に向け泥を出していく。そしてそれは形を変え泥のカエルとなり土マスターに飛びかかる。マスターは背負っていた擂鉢程度の太さの木を引っ張り出しカエルをつつく。
ゼント「纏泥衣」
つつかれて形を崩壊させたカエルは土マスターの木に広がって纏わりつきそのまま土マスターの腕まで侵食していく。
全く動じない土マスターが腕の泥を睨むと砂となり、粒は腕の上からハラハラと落ちていく。泥が消えても砂は止まらず落ち続ける。ゼントはそれを黙って見つめていた。相手の反撃を見定める構えである。
「つまらぬ。様子見ばかりじゃな」
少女の声がその緊迫した空気を断ち切る。
リリス「外から攻撃は出来ぬのか?」
サナス「可能です」
リリス「ゼント。来い」
ゼントとリリスは立方体の壁を挟んで近づく。そして瞬く間にゼントはリリスに振られた短刀に切り刻まれた、筈だったがゼントに外傷はない。
リリス「こんなに斬った感覚があるというのに傷が無いとは少々不気味じゃな」
ゼントは試しに体を動かしてみるが、思ったように動かない。実際斬られていた時の身体能力まで制限されていたのだった。
ゼント「もう一回ですよね」
ゼントはリリスが手から短刀を離さないを見て考えを察する。
リリスの握った手がゼントの胸に触れる、ただ先に胸に触れたのは手ではなく短刀だった。そのままゼントを貫通する。
サナス「強制解除されます」
立方体は広がった時と逆再生のように縮んでいき次第に球体になる。壁が内側へと縮まると同時に短刀だけが座標を変えずに壁の外に落ちゼントは壁に押し戻され内側へつれていかれる。
まさにシャボン玉のようにぽんっと音を立てて壁は割れてゼントは無傷で登場する。
ゼント「あんなにやられたのに外傷もないし痛みも感じない」
リリス「こっち側からは刺した感覚があったぞ」
ゼントに拾わせた短刀しまいながらゼントを刺した感覚を思い出す。
サナス「いかがでしたでしょうか」
リリス「気に入った。詳しくは後でゼントに話しておいてくれ。今日は解散じゃ」
グリル村一の宿へと向かう途中、彼らは出会う。いや特に会話などはなくただすれ違っただけと思われた。しかしリリスが彼らを呼び止める。
リリス「そなた名前は?」
5人は振り返る。リリスが指す相手が誰かわからずいつもの様にハルから名乗ろうとするがリリスの早い返事がそれを遮る。
リリス「お前じゃない。隣の男じゃ」
リク「俺の名はリクです」
ゼント「お前姫の前で図が高いぞ」
リリス「余計なことを言うな。ゼント」
リクは少しリリスから視線をずらしマナの方をチラリと見る。マナは悪意があるか分からないといった意のサインを出す。
リリス「(先にバレてしまったから仕方ない)妾はこの国の王リリスじゃ。リクよ妾の伴侶となれ」
リク「は?」
ゼント「へ?」
リリス以外その状況を理解していなかった。
大長3「自由姫と勇者達の出会いはどんなものになるかと思ったけど、まさかこんな事になるなんて面白いなぁ。『仮想』を使ったバトルも楽しそうだし、グリル村来てよかったな。村人の家直してあげようかなー」




