10話 主要人物の集まる村
―――グリル村―――
周りの人々とは比べ物にならない程の華美なドレスを着飾った少女は、その村の景観には異物であり、すれ違う人は足を止めその少女に見惚れる。ドレスはもちろん装飾品一つをとってしても一般人には価値が分からないほど高級品で囲まれていた。口元を隠す黒いレースのついた扇子が村を照らす太陽の光を反射する。
「え、なぜこんな村にいらっしゃるんだ?」
「お母さん、あの凄い格好の人だれー?」
「こら!指を指しちゃダメ。あのお方はこの国を王のよ」
「小僧よ。妾を知らないとは。その小さな頭で余計な事を覚える前に妾を記憶せよ」
「リリス様大変失礼致しました!」
ふんっ、と鼻を鳴らしそのリリスと呼ばれた少女は再び歩み始める。
すれ違う人々が足を止める理由はもう1つある。
リリス「ゼントよ。早くするのじゃ」
ゼントと呼ばれる、黒いサングラスを掛けた細身の中年は土魔法を使ってリリスの通り道を平らに舗装しながら進んでいた。
ゼント「それにしても、リリス様が通るというのにこんな荒れた道を用意しているとはいかがなものか」
村人達は、大地震の影響を大きく受けた家から改修していたので道の舗装はとりあえず歩ける部分は後回しにしていた。そして居場所を特定した土柱を討伐に向かわせない王族達に不満を抱いていた。王族だけではない。マスターへ向けてもだ。
土マスター「お待ちしておりました リリス様」
土マスターと岩マスターは片膝を地面につけリリスを見上げる。
リリス「うむ。苦しゅうない。国宝を餌にして島中の戦士は集めたのか?」
土マスタ「ええ。過去一番の参加人数です。これでリリス様の目的も果たせるでしょう」
リリス「妾は10歳にして能力を発現させ、美貌も才能も持ち合わせておる。あとは名声と国民達からの信頼。集めた戦士達には土柱討伐に向かってもらいそれを妾の功績とするのじゃ。そしてあわよくばその中から妾の伴侶を見つける」
岩マスター「(なるほど、そういう目的だったわけっすね。ドーアさんは、なぜリリス様に従っているんすかね)」
リリス「よし。この村一番の宿に案内せよ」
ゼント「そこまで道中すべて舗装完了いたしました」
リリス「当然じゃ誇るでない」
―――夜―――
ハル監督の元にリクとマナが組手をしていた。リクはゆっくりとマナへ向け蹴りや突きを放ち、要所要所でハルに止められ解説が入っていた。
リク「(蹴りの途中でゆっくりにするの結構体に負荷かかるな、道場の型の練習みたいだ)」
リクは体を後ろに逸らしながら右足を真っ直ぐマナの腹部目掛けて伸ばしていく。
ハル「リクの体勢的に蹴りが当たれば後ろに退いた分勢いをつけて追撃を、逆に当たらなければそのまま退き反撃を回避する可能性が高い」
リク「(バレてる)」
マナは両手に短刀を型どった光を握っている。長ければ長い程扱いも難しくなるので近接は短刀にほぼほぼ決まっていた。メルム戦から短刀の有用性に気づいたマナは少しずつ練習していたのであった。
マナ「(まずは私がリクの蹴りを回避して、反撃する)」
ハル「無理に反撃をしなくてもいい!」
マナ 「わかった。(私には高い身体能力もない、今のリクの攻撃には悪意もないから目で見て判断だ!)」
マナはリクの足がギリギリ届かない位置まで身を引く、リクは当てれるを欲を出して体が前方に流れる。そこにすかさず光の短刀でリクの足をチョンとタッチする。
リク「おっとっと。うわぁっ」
リクは大ゴケする。そして、倒れたままマナにグッジョブサインを出す。
ハルからの指導はこんな感じである。本来の戦闘はもっとスピード感があるがその指導はナギの担当である。
彼らは自分の技術を誰かに教える楽しさを実感する。
ナギ「おぉ!その動きいいな!次は右の剣を振ると見せかけて左を振る」
ナギが実際に実践して見せる。真剣に聞いているマナに変わってリクがおぉ~と声を上げる。
ナギ「ゆっくりやってみるとこうだな。コツは右手を振る速さをできるだけ速める事で相手は釣られやすくなるな」
ルカはそんな光景を見ながら、自分が水マスターや城の兵たち、そして母親に魔法を習っていた光景を思い出す。
ルカ「(懐かしいなぁ)」
すべての水のスキルを覚えているルカに対して、剣技の達人であるカストルは目が良いと評価していた。これは半分当たっているが半分足りない。残りの半分については遠くない内に語られる事となる。
「マナの魔法練度上げ上げ講座」とリクに名付けられたそのレッスンは毎日行われながら彼らは次なる目的地であったグリル村に到着した。まず彼らが感じたのは大会参加者達の熱気である。
リク 「土マスターがいれば一発顔をグーで挨拶して、クルトの父親も探さないとな」
ナギ「物騒な事の表現方法増やすなよ」
ルカ「とはいえ、この村凄い人口量だね」
ハル「一応ドーアさんも探さないとな」
マナ「!?皆、聞いて」
ハル「魔物か?」
マナ「大きすぎて位置特定出来ないんだけど、この村にこの前あった闇柱と大長10よりも大きい反応を感知した。悪意は感じられないから少し不気味」
そんな話をして歩いている彼らの頭上の屋根で足をブラつかせているフードを深く被った子供がニコりとしながら彼らを見下ろしていた。
大長3「よかった。生きてたんだね。待ちきれなくて中央都市やめてこっちに連れてきて貰ったけど。当たった。大会出てくれないかな」
大長3の手には明日開催される大会の参加者番号の書かれた札を握っていた。
―――数時間前 大会運営本部―――
土マスターに雇われた数名が岩でできた椅子と机とテントと共に過去最大規模の大会への参加者を待っていた。次々と来る屈強な男や優美な格好の魔法使い達に札を渡していく。そんな中1人の子供が現れた。
係員 「君も参加したいのかい?」
大長3「うん。お兄ちゃんの心配には及ばないよ!強い人たちと遊んでみたいんだ。噂で聞いたんだけど、誰かの能力の下でやるから怪我とかしないんでしょ?」
お兄ちゃんと呼ばれるには少々おじさん過ぎる男は満更でも無さそうにしながら少年を心配する。
係員「だが、怖い思いとかするかもしれないぞ?」
大長3「お兄ちゃんも男なら分かるでしょ。自分の力を試したくなるこの熱い気持ち」
係員「·····。わかる。よしわかった。頑張ってこいよ!」
大長3に札を渡す。深く被ったフードの中で少年は静かに笑みを浮かべる。
大長3「さぁて遊ぶぞー、早くハル兄ちゃん達来ないかなぁ。エダーク兄もハクガンおじいちゃんも強いからなぁ。まぁ最悪この村にはマスター2人と能力持ちの姫に側近もいるみたいだし、大会に強い人たち集まってるし楽しめるよね!」
その数時間後グーと言う名の魔物の期待通りハルたちが到着した。




