8話 男の誓い
―――フライ村滞在3日目―――
リク「治ったー!」
リクとハルが飛び上がる。
ハル「マロンカ本当にありがとう!」
マロンカ「えへへ!お兄ちゃん達をしっかり治せて良かった!」
リク「皆も迷惑かけたな。ありがとう」
ルカ「んーん!いいんだよ」
ナギ「ウチらも何度もリクとハルに助けられて来たからな」
マナ「治してあげれなくてごめんね」
ハル「謝らないでよ。毎日付きっきりで看病してくれたじゃん」
リク「そうだぜ、マナ。ありがとう」
ここに勇者一行が完全回復する。あとはマナの治属性を取り戻すだけである。
男子2人が復活したパーティーの話題は次なる目的地へ移っていた。
ハル「さて、次の目的地はどこにしようか」
リク「話を聞いた所、今回はマスターに協力して貰うとかは望めなさそうだな」
ルカ「5000万BS払ったら…」
ナギ「流石にそんなお金は無いな」
リク「5000万BSって、オレンジ村の定食屋で2万回ぐらい食べれるじゃん!て事は一日三食を18年分!?どんだけだよ」
マロンカ「すごい!リク兄計算早いね」
リク「だろ?昔から数字は好きだったからかな。こういうくだらん事にばっか使ってるけどな」
リクがニヒッとマロンカに笑いかけると、少女もニコッとそれを返す。
マナ「流石に手持ちじゃ払えないし、やっぱりマスターには頼れなさそうだね」
ハル「そうだね。まずは地下ダンジョンに行くために中心都市のソテイに行かなきゃか」
ナギ「ダンジョンってなんだ?」
ハル「本来は城の地下に作られた地下牢とかって意味だけど、僕は迷路とか未知の洞窟に使ってる」
リク「なんか冒険心をくすぐる言葉だな」
ナギ「なるほど、そこに土柱を岩マスターが確認したと村長は言ってたな」
ルカ「もしかしたらこの地震って地下を掘る衝撃なんじゃないかな。土柱の目的はまだ何とも言えないけどもしかしたらと思って」
ハル「(もし地面が空洞だらけになれば、地盤の耐久力が弱まり何かの衝撃で落ちる可能性もあるんじゃないの か?そうなれば被害は地震の比じゃない)」
マナ「色々調べる為にもソテイには行かないといけないよね」
ハル達の話を、先日ナギの持つ財布を奪おうとしていた子供がこっそりと聞いていた。
ナギ「何か用か?」
マロンカ「あれ?クルトじゃん!」
その男の子の名前はクルトといった。
クルト「マロンカは騙されているんだ。こんな奴らが柱を倒してくれる訳がない。傷を治した報酬も貰ってないんだろ」
マロンカ「私にお姉ちゃんとお兄ちゃんができたの!それが一番のご褒美よ!それに皆なら勝てると信じてるもん!」
クルト「なんでそんな他所の奴らを家族にするんだよ!俺だって…」
リク「(なるほど。マロンカの事が…)」
ナギ「村長から父の話は聞いた。この村の戦士の行き先は分かるか?」
クルト「…ただ単に稼ぎに行った人もいれば、土マスターに直談判をしに行った人もいる。父さんもグリル村に向かってから帰ってこない」
リク「ナギ グリル村と、中心都市ソテイまでの距離感は? 」
ナギ「地図上ではこっからグリル村とそこからソテイまでは共に歩いて3日ぐらいだな」
マナ「中心都市に行く途中にあるのよね」
ハル「よし!じゃあグリル村に行こう。そしてクルト君の父親を探そう」
クルト「は?なんでそんな話になるんだよ。だって俺、お前らの財布を盗もうとしたんだぞ!」
ナギ「村を救う為にお金が必要だったんだろ。別に怒ってないぞ」
マロンカ「クルト、ハルお兄ちゃん達にお願いしようよ」
クルト「…」
マロンカ「でも、まず先に言うことあるよね」
クルト「····。財布盗もうとしてごめんなさい。俺の父さんを見つけていただけませんか」
クルトはうつむく。
リク「クルト、手だせ」
クルトはおそるおそる顔を上げ、手を差し出す。その小さな小指をリクの指が捕まえる。
リク「約束だ。俺らがお前の父親見つけて、土柱も倒してこの地震を止める。土マスターに会えたら一発殴って村を助けるように言うよ」
クルトの表情が明るくなる。リクの言葉をナギとルカは微笑みながら聞いていた。
クルト「ありがとう…」
リク「それまでフライ村とマロンカの事頼んだぞ」
クルトはチラリとマロンカの顔を見て覚悟を決める。
クルト「何があっても俺が守るよ」
リク「よく言った!」
リクはクルトの小指から指を離し、クルトの手をがっしりと握る。
リク「男の誓いだ」
村長「どうやったかは存じませんが、クルトの表情が明るくなっておりました。感謝します。どうかお気をつけて」
リク「必ず地震を止めて来ます。それまでどうか頑張ってください」
村長「えぇ」
マロンカは柱討伐の話をすれば村人達も歓迎してくれるかもしれないと言っていたが、村長を含め彼らの目に希望は既になかった。
マロンカ「お姉ちゃ~ん!お兄ちゃ~ん!頑張ってね!!またこの村に帰ってきてね!」
クルト「が…頑張れぇ!」
去りゆくハル達の背中に、小さき者たちの声援が届く。マナとルカは後ろを振り向き手を振る。リクは右拳を天へと伸ばす。それを見たクルトも同じく腕を上げる。
リク「マロンカから薬も貰ったけど怪我には注意しないとな」
ハル「うん。あんまりすぐ突っ込むんじゃなくて、守りを固めながら行こう」
ルカ「柱戦ではゆっくり包帯巻く時間とかないから、たまにやる回復して貰える前提の相打ちでもいいやってのもやめといた方がいいよね」
ナギ「今までは柱との戦闘中や連戦の合間にマナに回復してもらってたからな。今回は一度の敗北で終わっちゃうな」
ハル「たしかに、風城でもマナがいなきゃ僕は今頃鎌に刺された傷で死んでた」
マナ「皆。今の私じゃ…」
ナギ「足手まといになんかならないぞ。マナの感知には何度も助けて貰ってるし、応急処置の仕方はマナが一番詳しいし、頭も良いしな。それにマナが後方にいてくれるからウチは頑張れてるぞ」
ナギが長々早口で話す時は大体誰かの心を支えてあげる時だとハルは気づく。
マナ「姉さん…。私も頑張るよ。でもいつまでも守られる側じゃなくて私も戦う。弓や私の近接技術だけじゃ強敵とは戦えない、だから光属性を使った攻撃方法を特訓したの」
ハル「最近夜にしていた特訓か」
マナ「そう。だから次に魔物の襲撃があった時は任せてほしい」
リク「わかった。たのんだぞ!」
マナ「うん!」




