7話 ドリーム薬局
―――フライ村 ドリーム薬局―――
『ドリーム薬局』、命を預けるには少々胡散臭く子供じみた店名ではあったが意外にも中はちゃんとしていた。
マナ「(案外店内は普通だ。というかこんな少女が治療師?)」
マロンカ「さ!そこの座布団すわって。足元のガラス気をつけて、です!」
先程マロンカが吹っ飛ぶ原因となった実験失敗の爆発で、フラスコの破片が飛び散っていた。ナギとマナはフラスコの破片を集めながら本題に入る。
ナギ「早速本題で悪いんだが、治してほしい人がいるんだ」
マロンカ「いいわよ、です!」
ナギ「え。いいのか?」
マロンカ「いいわよ。困ってる時はお互い様でしょ」
ナギ「おぉ!ありがとな!」
マロンカ「ところで私も今困ってるのよねー、チラ」
ナギ「ウチらに出来ることだったらやるぞ」
マロンカ「私、光国のラムダ出身なんだけど、家族が全員凍結させられたのよ。だから家族が欲しいの。勿論一緒に住んだり血縁関係を結んで欲しい訳じゃない。凄い事を言ってるのもわかってるわ。でも、時々この世界のどこにも家族がいないと思うととてつもなく寂しくなるの」
ナギ「(急に重いお願いだな。マナが反応してないって事は何か魔物関連の罠ではない…か)」
マナ「私も、ラムダ出身だよ。元々親や兄弟はいなかったけど、大事な家族みたいな人達を石や氷像に変えられた。私が旅をする目的は光国を取り戻し、全員元の姿に戻すこと」
マロンカ「元に戻す!?」
マナ「うん。『聖水』って聞いた事ない?」
マロンカ「あれは、噂だけの存在じゃ…」
マナ「そもそも光の神殿は聖水が湧き出る所の周りに作られたって噂だけど、本当の話だよ」
ナギ「(ハルにも前に話していた話か)」
マナ「その聖水さえかけることが出来れば、もしかしたら元に戻せるかもしれない」
マロンカ「じゃあ、私の家族も元に戻せるかもしれないってこと、ですか?」
マナ「可能性はあるよ」
元気な声で話し、少しおてんばな印象のマロンカの頬に涙がつたう。
マロンカ「私はあの日お出かけしていて、ラムダに魔物がいっぱいきてるって心配で家に帰ったら皆凍ってて。泣きじゃくってた私を近くにいたおじさんが抱き抱えて逃がしてくれた。そのおじさんも石に変えられちゃって。このフライ村に来てお師匠に雇ってもらって薬屋として生計を立てていたの。お師匠は去年老衰で亡くなったわ。だから代々伝わるという、このドリーム薬局を私が継ぐことにしたの、です」
マナ「…私で良ければお姉ちゃんになってあげる」
ナギ「そうだな。忍村にも妹や弟みたいなのいっぱいいるしな」
マロンカ「ほんと!?二人ともお名前は?」
マナ「マナだよ」
ナギ「ナギだ」
マロンカ「マナお姉ちゃんと、ナギ姉さん。ありがとう!マロンカをよろしくね」
ナギ「あぁ。(なぜウチだけいつも姉さんなんだ?)」
マナ「よろしくね」
マロンカ「マナお姉ちゃんは光属性しか使えないの?」
ナギ「その辺の事情は移動しながらでもいいか?」
マロンカ「わかった。治したい人の所まで案内して!」
マロンカは治療に使う道具を取りにいく。
マナ「私マロンカちゃんみたいに悲しむ子がいない世界を作りたい。大きい夢だけど、光国を取り戻したあとはやっぱりこの夢に向かって進み続けると思う」
ナギ「マナらしくて、とても良い夢だと思うぞ。ウチも全力で手伝うよ。だからさいごまでよろしくな」
マロンカ「お姉ちゃーん。準備できたよ!」
ナギ「よし。行くか」
マナ「私はラムダ出身だけど、光魔法が全然使えないで先に治魔法が開花されたの」
マロンカ「本当は光魔法をある程度練度上げた人が開花できる属性だよね」
マナ「そうなの。そんな中で光国が襲われて、水国まで私は逃げて、色んな所を旅しながら傷ついた人を癒して進んだの。そして仲間のルカに出会って姉さんとリクとハルと出会ったの。今は5人で水柱と風柱倒して旅を続けてる」
マロンカ「え、もう柱を倒したの?しかも二体も」
ナギ「三体目を倒しにこの国に来たんだ」
マロンカ「じゃあ、お姉ちゃん達がこの地震を止めてくれるの?」
ナギ「ああ。頑張るよ」
マロンカ「やったぁ。村の皆に言ったら大歓迎されるよ!」
マロンカの足取りが軽くなる。その笑顔をナギとマナは忘れる事ができなかった。
ルカ「あ。マナ達帰ってきたよ」
マナ「皆お待たせ、この子はマロンカちゃん。治魔法を扱えるって」
マロンカ「マロンカです!ルカお姉ちゃんと、ハルお兄ちゃんとリク兄よろしくお願いします」
ルカ「(え…。お姉ちゃん呼び嬉しい)」
ハルは妹を思い出して、顔を逸らす。
マロンカ「私、ハルお兄ちゃんに嫌われちゃったかもしれない!」
マロンカは不安げにナギとマナの方を振り返る。
ナギ「大丈夫だ。ちょっと照れてるだけだな」
マロンカ「よかった!じゃあ早速治すね」
ハルに両手を当てる。
マロンカ「(凄い傷…。やっぱり闇柱と大長っていう魔物はそんなに強いんだ。)多分1時間ぐらいで応急処置が終わると思います!」
ハル「ありがとう」
応急処置を施し、免疫力を高めながら傷を癒していく方法を取る。
ルカ「治療師を連れてこれてよかった。これで二人共大丈夫だよね」
マロンカ「任せて!マナお姉ちゃんの代わりに私が頑張る!」
マナ「(マロンカちゃんには感謝しているけど、やっぱりリクとハルは私が治したかった)」
ハルの応急処置を終え、リクの応急処置が半分ほど終わった頃、日が暮れ始めていた。
ナギ「今日はこのまま野宿するか?」
ルカ「フライ村の状況的に宿に頼るのは難しそうだもんね」
リク「マロンカ、俺はもう平気だから家に帰って大丈夫だぞ。ありがとな」
マロンカ「家帰っても一人だもん。こうやってリク兄達といる方が心があったまるの」
リク「…マロンカは良い子だな。俺の傷治ったら美味しい料理食べさせてあげるな」
マロンカ「ほんと!マロンカも一緒に作る!」
リク「それいいな。こりゃあ俺も免疫力フル活用して早く元気にならなきゃな」
リクの応急処置を終えた所で、マロンカのMPが切れてその日はそこで治療を終える。マナと比べて時間がやはりかかってしまう。いつも彼らが大きな戦いの後に長い休養を取るのは戦闘中に急速応急処置して体を動けるようにすることで戦闘後にその反動が来るからである。
―――フライ村近く―――
マロンカを含めた6人は野宿をしていた。しかしマナは荷物だけ置いてどこかへ行っていた。その理由についてはナギだけがマナから聞いていた。
マナ「柱を倒すまで私の価値が無いのは嫌だ。(モチ村で夜を晴らした時の感覚を思い出して)」
手元に小さな光源を生み出す。光属性の特訓を皆に隠れて行うマナであった。




