2話 封印
マナ「私の中から治属性が消えた…」
反射でルカに魔法をかけようとした時、何かよって自身の中にあった筈の治魔法が消えたのを感じ取った。
落とした視線を上げると、ルカの頭蓋骨は砕かれておらず、ただ地面に倒れているだけでいる。マナは幻覚を見ていたのだった。
リク「ぐあぁああ!!」
押さえつけられているリクの腕が折られる寸前になっている。咄嗟に雷魔法を乱発させ大長10を退かせる。しかし、折れてはいないものの押さえつけられていた右腕は紫色に腫れている。
ナギ「ハ…ハル!」
ハル「行くぞ!」
ナギとハルは、マナの前に立つ闇柱へ向かい走り出す。リクなら大丈夫と動かないルカと戦闘能力の低いマナの方へと走り出す。
ハル「マナとルカに何をした!」
闇柱「お前も直ぐにわかるさ」
ハル「(…なんだこの威圧、僕のフルート技じゃ闇柱の強さには効かなそうだ。となればもう残されたのは斬り技のみ)」
闇柱「こっちから仕掛けてもおらぬのに、早速能力にかかったか。愚かな奴よ」
ハル「?」
ナギは、高速階で闇柱に近づく。
ナギ「真輪斬!」
闇柱は、自身の腰に刺さっている長刀を引き抜きナギの高速の剣技を防ぐ。
ハル「(ナギの速さでも通用しないのか)」
ハルはナギとの連携で攻撃を成功させる為に、距離を詰める。しかし、スピード面での頼みの綱であったナギの体のキレが著しく悪くなり動きが遅くなる。
ナギ「(なんだこれ、こんなスピードじゃ技が当たらない)」
ナギのゆっくり振られる刃は、闇柱の横腹から横腹まで伝う。確かに闇柱の肉を切り刻んでいたはずだが、闇柱は無傷であった。さらにナギの剣に闇柱の血はついていない。闇柱はそんなナギを無視して、ハルの方へと歩いていく。
闇柱「来てみろ」
ハル「アイスタープリック!」
氷纏いを発動させながら両手で剣を構え、闇柱の腹を突き刺す為に剣先を向け加速する。
闇柱「そんなものか」
闇柱は人差し指をハルの剣の上に乗せ、下方向へ動かす。剣は闇柱の指にされるがままとなり地面に突き刺さる。直線的な突進はいなされて、その勢いを利用される。
ハル「くそ!」
ハルはやけくそになり氷を纏ったパンチを闇柱に当てるフリをする。パンチを軽くあしらう動作を取った闇柱はハルが地面に刺さった剣を引き抜く隙を与えてしまった。
ハル「(なんだ、これ!)」
ハルの剣は触れない程熱くなっていた。手を氷魔法で包んでいなければ火傷していただろう。咄嗟に剣を放してしまう。
闇柱「剣士が剣を捨てるか…遊びはここまでだ。目的は果たせた。後はあの魔物に任せる」
闇柱は勝手に戦闘態勢を止め、放っていた圧を無くす。そしてハル達がなんとか視界の端に捉えられる距離へ少し離れた。
大長10「あとはわしの仕事じゃな」
ルカ「(体が動かない。どうしよう。皆やられちゃう)」
ルカは地面に伏したまま動けなくなり、マナは自身の中の治属性の力が感じられなくなった事に絶望し足を止め、ナギは自慢のスピードが出せなくなっていた。
大長10「闇柱の能力にひどくやられたのぅ」
ハル「あいつの能力はなんだ」
大長10「言っても良さそうじゃな。『封印』じゃ。詳しい話はわしを倒す事に成功して生きていたら奴が教えてくれるじゃろ」
リク「ハル気をつけろ、その魔物速いぞ」
大長10「お主ら、わしが孫のように可愛がっていたメルムちゃんやバート坊ちゃん達を殺したらしいな」
ハル「孫のよう?」
大長10「頑張って強くなろうと能力や魔法を鍛える子達じゃったからのう、見ていて可愛かったわい」
ハル「まるで、あの大長落ち達より強いみたいな言い方だ」
大長10「ふむ。今のわしは、カッコつけるなら大長10じゃ。今は大長落ちとして柱の付き添いをしてるがのう。わしも歳で衰え昔使えた技もほとんど使えなくなってしまってのう、今ではわしより強いが火柱もわしが育てたんじゃぞ」
リク「(火柱って、柱の中で2番目の強さなのにその師匠って事か?)」
ナギ「(うごけ、うごけ。なんであんなに特訓して、山場を越えて手に入れたスピードを大事な時に使えなくてどうするんだ。リクの親の仇とマナの故郷をめちゃくちゃにした奴が目の前にいるんだ。今うごかなくてどうする)」
気持ちに反抗して体は全く反応しない。
ルカ「(私がマナを仲間を守ると誓ったんだ。仲間が大変な時に救ってあげて隣に立てるように、私は強くなってきたのに。戦って傷つき動けなくなった訳でもないのにどうして)」
2人の体が言うことを聞かないのは、闇柱の能力である『封印』の効果である。発動条件があるのだが、誰も気づけず自身の身に何が起こったかわかっていなかった。ハルもある行動を取れなくなっているのだが、本人はまだ気づいていない。リクはまだ何も封印されていない。ナギとルカは仲間のせいで動けなくなっている。
リク「(この構えまさか…)」
ハル「(格闘家か。そしてスピードは、フルスピードのリクを凌ぐほどか)」
大長10が目の前から消えたように見える。実際は止まっていた物が急に動き出しハルの目で追えなかっただけである。
リク「(速い)」
ハルの目の前に現れた大長10は拳をハルのみぞおちに向け伸ばす、咄嗟にハルは剣で防ぐが勢いを殺せず吹き飛ぶ。
リク「全力出せなきゃ勝てない相手だ」
大長10「お前達はたかが一人の人間じゃ、出来ることは自分で思ってるより少ないのじゃよ」
リク「それでも、俺達は進む。たかが一人の人間でも仲間と一つに力を合わせあえば強くいられる」
大長10「しかし一つと思っていても所詮は一つ一つじゃ完全に重なり合いはせぬ」
リクはしっかりと大長10を目で追う、これは風柱との戦闘や他の仲間と比べてナギのスピードを忍村で見てきたから動体視力が鍛えられていたのであった。
リク「(見える。合わせることができる。じゃあ、勝てる)」
リクは大長10の重い蹴りをバックラーで受け、ガードが甘くなっている腹に足刀を当てる。
大長10「なかなか良い蹴り技じゃな」
リク「ずいぶんと上からだな」
大長10「じゃって、お主わしが作った炎飛燕流使っておるじゃろ」
リク「え…」




