48話 風の国宝
~~~風城決戦中 少し離れた洞窟~~~
王「なぜ、我が兵達が命を懸けて戦っているのに、私は隠れていないといけないんだ」
カストル「王に万が一の事が起こってはいけないからですよ」
王「私が小さい頃から、カストルに剣術を学んできたのは戦う勇気ある者達と肩を並べる為じゃなかったのか。私は決して自己防衛の為だけに力を磨いて来た訳ではない」
カストル「相手は本気で城を乗っ取りに来ています。何か策や良からぬ事を考えているやもしれませぬ。それに主戦力が柱と中長だけとも限りません」
王「城が乗っ取られても最悪私だけは生き延びさせようという事か」
カストル「そうでございます」
王「兵も国民も失った人間が王な訳があるか」
~~~現在 風城 王の間~~~
ハル達5人は1週間ほどかけて回復していた。特に重症だったのはナギとハルだった。かまいたちを幾度も喰らい、さらに毒に侵されたナギと鎌で貫かれたハルの完全回復には時間を要した。
マナはかまいたちの被害を受けた兵を中心に外傷を治せるだけ治していた。その懸命な少女の姿に城の治魔法使い達も感化され全力で兵を助けていた。
アルタ「王、失礼します。ハル殿達がいらっしゃいました」
王「入れてくれ」
ハル「失礼します」
ルカを除いた4人はよそよそしく、周りの兵にペコペコしながら王の間へと足をふみ入れる。
王「楽にして欲しい。そこにかけてくれ、茶菓子も好きに食べてくれ」
5人は横並びにソファーに座る。緊張で喉が乾きお茶を飲みたがっているが最上級の目上の人の前での礼儀や作法に自信がない様子のリクを見たルカは、普通に飲んでも大丈夫だよ。とジェスチャーを送る。
王の間には、玉座に座るアケビの斜め後ろにカストルが立っており、ソファーに座るハル達の横にアルタが立っている。
王「この度は本当に感謝してもしたりない。戦う力を持ちながら大事の時に居合わせられなかったことを謝らせてくれ」
王は立ち上がり、深々と頭も下げる。それに合わせてカストルとアルタも頭を下げた。
ハル「いえ、王を守るのが僕らの一番優先すべき目的でしたから」
王「この感謝をどう伝えるべきか考えて、よく話あった結果この国宝を譲る事に決めた」
アケビとハル達の間にあるテーブルの上に、カストルが小さな箱を置く。
ハル「これは...?(国宝!?)」
王「開けてくれ」
ハルは恐る恐る丁寧にその箱を開ける。そこには緑色に輝く美しい指輪が入っていた。
マナ「綺麗...」
ハル「あれ、これって」
ハルはルカの方を見る。ルカの耳には水国の国宝のピアスが付いている。このピアスは魔法を扱いやすくすると同時に最大MPを上げてくれるものである。元々指折りのMP量のルカをさらに強くしてくれている。
王「その指輪は付けていると、体が軽く感じると同時に自身のトップスピードとそこに至るまでの加速力を上げてくれるものだ。ぜひ君たちに持っていって欲しい」
ハル「国宝…いいんですか!?」
王はハルの目を真っ直ぐ見つめて、頷く。そこには一つの曇りも陰りも無かった。
一同はソファーから立ち上がり王に頭を下げる。
ハル「これはナギが付けてほしい。うちのパーティーのスピードアタッカーがさらに速くなるのは魅力的過ぎるからさ」
ナギ「お、おう。わかった。ありがとうございます」
王に一礼した後、ナギは指輪をはめる。
ナギ「おぉ。これは軽い」
リク「座ってても分かる程かよ。国宝すごいな」
王「ナギさんに気に入って貰えてよかった。この他にこの国で誇ることができる装備を用意させてもらった。好きな物をもっていってほしい」
ハル達の前には、思わず見とれるような装飾品や武器が並べられる。
カストル「鉱石や秘石を用い頑丈な防御力を誇る土国の武器や、鍛治の技術が飛び抜けており圧倒的攻撃力を誇る火国の武器にも引けを取らない品々です」
リク「こちらはなんですか?少し雷属性を感じますが」
カストル「そちらは雷龍の谷で拾える雷衝石から作られたバックラーです。リク殿は格闘家でしたよね。ぜひ装備してみて下さい」
リクは左腕にバックラーを装備する。
リク「軽い。全然付けている感じしませんね。これなら今までの動きに支障なさそうです。(左で受けて右で反撃...基本的に躱すか捌くしかなかった俺の戦闘スタイルに新たな可能性かもしれない)」
カストル「さらにそれは雷属性を纏った時に少し強化されるようになっています。勿論、火を纏う事も可能です」
リク「こちらをいただいてもいいですか?」
王「この城にはほとんど格闘家もおらず持て余していたんだ。ぜひ持っていってほしい」
リク「大事にします!」
ハルはマントをよく見ている。
アルタ「それは、はやぶさのマントと言ってね背後からの魔法攻撃への耐性が上がり、自身の速さに比例して攻撃力を上乗せしてくれるものです。自身の鍛錬の成果に応じて強くなったと実感しやすくなるのでオススメですよ」
ハル「では、これをいただいてもいいですか?」
カストル「ぜひ、貰ってやってください。素材を集め二度ほどランクアップさせておりますので必ずや旅のお役に立ちましょう。...」
王「全て話してもよい」
カストル「はい。そのマントは私が『風の剣士』と呼ばれていた時に愛用していたものです」
ハル「そんな大事な物をいただいていいんですか?」
リク「(風の剣士...。炎の剣士と呼ばれた父さんと関係あるのか?)」
カストル「ええ。前線を退いた老いぼれが持っているより、若い次の世代の剣士と共に戦場を乗り越えて行く方がこのはやぶさのマントも本望でしょう」
ハル「カストルさんの剣士の意思がこのマントに込められてるのですね…こちらをください」
カストル 「ぜひ。連れてやってください」
王「三人は決まったか?」
ナギ「え、私は国宝もいただいたのに装備もいいんですか?」
王「勿論だ」
リク「マナはこの弓どう?」
左端に座るマナに、テーブルの右側に置かれた弓をリクが取り手渡す。
マナ ありがとう。あ、これも軽い」
カストル「軽さが売りの風国の装備達に、皆さん嬉しい反応してくれますな」
カストルは嬉しげに自身の顎髭に触れる。
王「その弓は、シンプルに引きやすく矢が速く飛ぶ。さらに矢に魔法耐性を付与できる」
マナ「敵の魔法防御を貫通したり、撃ち落とされにくくなるという事ですか?」
王「ああ。名を越境の弓という。一度引いてみてはどうだ?」
マナ「越境の弓...。はい!」
マナは背中に背負ったバッグから矢を一本取り出し越境の弓を構える。
マナ「引きやすいです!私はこの越境の弓をいただきたいです」
王「ああ。その弓で仲間を助けてやってくれ」
ルカは長考している。自身に足りない所を補強してくれる装備を探す。
王「ルカちゃんは水魔法全てのスキルを身につけていたな」
カストル「なんと...。この老いぼれ、この歳まで剣技を極めてきましたが、流石に全てのスキルは習得しておりません。それをより多岐に渡る魔法で可能にしたですか。果てしないほどの努力量が伺え震えます。きっと目も良いんですね」
王「目なのか?私は創造力かと思っていたが」
カストル「おそらく、一度見た技をそっくり覚えて模倣をすることで理論上では可能になるはずです」
アルタ「まだ10代でしょう。普通だったら一つの大技でも数日、数週間かけて覚え練習の途中にMPが切れて思うように出来ないはずですが、凄いですね」
ルカ「MPは、小さい頃から魔法の特訓をさせてくれた父と母のおかげですので感謝しております」
王「それでは、単純に雷耐性の防具はどうだ?」
ルカ「あるんですか!?」
王 「この耳飾りだ。国宝のピアスの反対の耳に付けると良い。ルカちゃんなら似合うはずだ」
マナが王から耐雷のイヤリングを受け取りルカの耳につける。
マナ「似合ってるよ!ルカ!」
ルカ「ありがとう。では、こちらをお願いします」
王は微笑む。ナギはやり取りに聞き耳をたてながら装備を見続けている。
ナギ「これをお願いします!」
ナギの手にはブーメランが握られている。




