47話 決着②
~~~風城 1階~~~
風柱はフラフラになりながらも立ち上がる。
ハル「リクが全力でつないでくれた。勝つぞ!」
ナギ「もちろんだ」
風柱「あの僧侶ももうMP切れのようだ。このラウンドを勝った者の勝利になる」
三人は剣と鎌を構え見つめ合う。
ナギ「これで最後にするぞ」
ナギは風纏いと紋章を出し、飛び出す。ハルはナギのしなやかでいて直線的な動きも織り交ぜる姿にみとれゆく。
体を右に流し、柱がそれに合わせるように誘導した上で実際は風を使い左に移動し飛びかかる。上方前方から近づくナギ目掛けて左手の鎌を振るが、ナギは下降気流を使い回避しつつ地に足をつけ地面を強く蹴り出す。その勢いと命を奪い取る、という肌に感じる覇気に風柱は咄嗟に右手の鎌で防ぐ。構えが崩れた柱に一撃を決めようとする本命はハルである。
風柱「(これをしのげばチャンスが来るはずだ)」
ハル「(ここを決めれば決定打になるはず)」
決戦の場に、アルタとベガと隊長が足を引きずりながらその決着を見届けに来ていた。
風柱は目の前にいる青年も相当の疲労が溜まっているはずなので、頭はもう働いておらずその振り被った剣でトドメの一撃を放ってくると思い込んでいた。何より自身も疲労とダメージが溜まり思考の純度は落ちていた。ハルが射程圏内に入った刹那、左の鎌を振るがハルには届かない。
楽をしようとした事に柱は悔いる。
風柱「(こいつもフェイントだと。だが鎌を躱せてもかまいたちに..。)」
小振りでスピード重視の威力の低いかまいたちはハルの目の前で消える。柱はすぐ目の前で自身の右鎌を油断すれば切り裂かれる勢いで押し付けてくるナギを見る。
ナギ「(ウチのこの特技はこうやって無言の連携で仲間の助けになるんだ)」
ナギの風の盾で守られたハルは、目の前を鎌が横切る動きをまるでコマ送りのように見つめながら攻撃モーションに移る。
ハル「対抗閃斬!」
風柱は全力で身を引くが、首を数センチ斬られ血を吹き出す。
風柱「(今の一撃は見た目より大きいな…この出血じゃもう勝ち目は無くなった。せめてこいつらを道連れにしよう)」
右手に空気を圧縮させた爆弾を作り出す。
ナギ「(やばい。このままじゃ)」
ハル「(僕らの距離じゃトドメより先に喰らっちゃう。せめてナギに防御力のバフを)」
剣を手から離し両手を口に当てハンドフルートで音色を奏でる策が脳裏をよぎったが、行動に移すまでにルカの声が聞こえた。
ルカ「リク!今!」
リ ル「アクア・スナイプ!」
水を纏い威力を上げた風のナイフをリクが少し回復した体で放つ。
ハル「ナギ、今だ!あれいくぞ!」
ナギ「了解!!」
風柱の右手に風のナイフがささり手元で小さく風魔法が誤爆する。
ハ ナエメラルドスラッシュ!」
二人の三本の剣は深く風柱を斬る。その威力は水柱戦の時よりも上がっていた。
風柱「俺が負けるはずが...。油断はしていなかったはずだ」
ハル「孤独で戦い続ける君よりも、僕らが繋いできた物が勝ったんだ」
風柱「長い目で見た共闘か。たしかにやったことがないな」
ハル「でもかなり手こずらされた、かまいたちという技一本を色んな形に派生させているのはかっこよかった」
風柱「ふっ生意気にも嬉しいことを言う。次は岩か?あいつの硬度は柱一だ。今のお前たちにあの鎧を破る術は無い。考えるんだな」
風柱はゆっくりと消えていく。
ハル「やったぞ。皆。アルタさ…」
アルタ「ハル殿たちがやってくれたか」
ハル達一行と三銃士達は緊張の緩和と積み重なった疲労からその場に倒れる。
マナ「もうこの城内と周りに魔物の気配はないよ」
ルカ「よかったぁ。それに、私たち遂に二体目の柱倒したんだね」
リク「おう!でも…もう一歩も動けない」
ナギ「皆風国を救ってくれて本当にありがとう」
ハル「本当にありがとう」
リク「仲間の大事な故郷は俺らにとっても大事な場所だよ。俺らも風国の人達にお世話になったしな」
5人は仰向けに倒れながら腕を伸ばし手を重ねる。
【ベガ、ワカ、アルタ、デネブ、ハル、リク、ナギ、ルカ、マナ その他兵士多数により 風柱ジガワ 撃破】
ハル「(眠い)」
ハルが目を閉じ再び開いた時には知らない天井が映った。横のベッドにはそれぞれリクとナギが寝ており奥にはルカの姿が見えるが、マナの姿はない。
リク「ハルも目覚めたか。体動かなくてさ、マナだけ起き上がって兵の治療してるから手伝いに行きたいんだけどどうしたものかと」
ハル「本当だ動かない」
シノブ「皆大丈夫か!」
シノブが四人のいる部屋に入ってくる。
シノブ「よく勝ってくれたな。ありがとう!すごいよ」
ハル「なんとかね。シノブは大丈夫?」
シノブ「私はゆっくり一日休んだから大丈夫だ」
リク「え?一日?」
シノブ 「決戦はもう昨日の出来事だよ」
ルカ「もう夕日刺してきてるのに...」
リク「そうだ!忍村に大長6が」
シノブ「先程雷マスターが一瞬来て、死人は0って報告しに来たけれど...」
ハル「?」
シノブ「大長2が来てたらしくてな」
リ ハ「2!?」
シノブ「その魔物に村長様が触れられたらしい。怪我はないそうだ」
シノブの報告にハルはゆっくりと口を開いて述べる。
ハル「十中八九能力かけられたって感じだな」
シノブ「それと、王が帰還したそうだ。さっきまで兵と三銃士にずっと頭を下げるものだから、大変だったと聞いた」
ハル「やっぱり僕らがカーテン越しに話した人は王じゃなかったか。騙すならまず味方からってやつだね」
王は、既に先週から少し城から離れた所で側近のカストルと共に避難していたのだった。
マナ「皆起きた?」
ナギ「起きてるぞ」
リク「ナギはいつの間に起きてたんだよ!」
マナが入ってくるとほぼ同時に青髪の青年が入ってくる。
アルタ「失礼する。おぉ!ハル殿目を覚まされたか」
ハル「すみません動けなくて...。このままで失礼します」
アルタ「もう、ゆっくり休んでください。という状態ですがいかが致しますか、国王」
アルタは後ろにいる国王に話しかける。
王「それでも迷惑で無ければ挨拶させていただきたい」
ハル「(王...。この声は。)僕らは全然大丈夫です」
王が病室に入ってくる。その姿は紫色の美しくショートの髪がとても似合う、美人な女性だった。歳もアルタと変わらない程である。
王「本当にこの度は何度感謝してもし足りない。一同整列!」
王の後ろから部屋に入れるだけの騎士団の隊長達が入ってくる。その中にデネブとカストル、ワカの姿はあるが、ベガの姿だけない。
王「礼!」
ハル「(照れるな)」
王「よし、控えよ!彼らは疲労困憊のはず。あまり休養を妨げるべきでは無い」
兵達は再び深い一礼をして病室を出ていく。
ルカ「アケビさん!久しぶりです」
王「ルカちゃん!この度は本当にありがとう。あの優しいお父さんは元気か?」
ルカ「はい。元気です!水城が柱に襲われた時にここにいる仲間達が助けてくれたので」
王「そうだったか。以前会った時には二日連続で伊達巻なる食べ物を出された事印象に残っているよ」
ルカ「父が大の伊達巻好きでして...。お恥ずかしいです」
王「素晴らしき王であり、良き父じゃないか。私も見習わなきゃな」
カストル「王。サクラ村から支援物資が届きましたので対応を」
王「ではまた後ほど!全員動けるようになった際に渡したい物があります。それまでお休み下さい」
ワカとシノブ以外は病室を出ていく。
ワカ「皆さん。やりましたね」
ハル「最後に勝ちました。ワカさんに見ていただいた対抗斬と裂斬のおかげで勝利でした」
ルカ「私も必殺技のおかげで大長落ちを倒せました」
ワカ「マナさんも大長を落ちを撃破したと聞きました」
リク「(そうだったのか。ナギは中長を倒してるはずだし、皆幹部撃破の成果あげてるんだな)」
ワカ「ナギも中長を撃破した直後に柱と対峙して最後にはトドメをしたと聞きました」
ワカ「リク君は...」
リク「(コメント困らせちゃった)」
ワカ「君がいなければ勝利はなく、この城の者達は全滅だったでしょう。全員動けなくなった場面でハルくん達の復活までの時間柱を止め、大ダメージを負わせていたことが勝利に繋がりました」
リク「……ありがとうございます!!」
ここに彼らの風国での戦いが終幕した。




