44話 三銃士
―――城外―――
場面はナギが城内に入った直後に遡る。
ベガ「見せてやる。これが僕の新たな力だ。『展開』×雷獣爪!」
アルタはベガの縦方向に振られる剣を横に避け反撃の構えをするが、たしかにかわした筈のベガの斬撃を喰らって動きを止めてしまう。
ベガ「遂に届いたぞ」
アルタ「そんなのはベガが鍛えてきた力じゃない」
ベガ「負け惜しみか!今まで僕に劣ったことなんてなかったからね。雷獣叫斬」
次は横斬りである。アルタは先程の攻撃で体勢を崩しながらも剣を縦にして防ぐ。攻防の展開は先程と一緒である。確かに防いだはずのベガの斬撃がアルタの左腕を斬る。
ベガ「ハハ!これだよ。ずっと夢に見た景色は」
アルタ「こんなのがベガの見たかった景色じゃないだろう。仲間をいたぶり、高笑いするまるで本物の魔物じゃないか」
ベガ「まだ僕を仲間と呼ぶとは思わなかったよ。もう本物の魔物なのさ、元仲間を傷つけても起こる感情は優越感だけだ」
ベガは少し離れて倒れている雷の騎士団の隊長を一瞬見る。
アルタ「ベガ、君にはまだ良心が残っている。その証拠に自分の部下を殺す事を躊躇った」
ベガ「あいつはただ殺す手間が面倒だから生き延びらせているだけだ」
アルタ「まだ誰も殺していない。今ならその良心を元にやり直せるはずだ。もう君をそそのかした中長もいない、大長落ちや柱もハル殿達が倒すだろう。もうこれ以上戦う必要はないはずだ」
ベガ「やり直した所でまた同じ日々を繰り返すだけだ」
アルタ「そもそもが勘違いをしているんだ!」
アルタは剣を構えベガに斬りかかる。
ベガ「何をだよ!」
それをベガも前に出て受ける。
アルタ「僕らは上に立つ者なんだ、文句や陰で色々言われることもあるさ」
ベガ「アルタやデネブにはないだろう」
アルタ「あるさ、全員守れた訳でもないのに全員守ってきたような顔をしているのが許せないだとか…多くの事を言われたさ!」
力でベガの剣を弾く。
ベガ「(アルタは数え切れない人を救ってきた、なんでそんなこと言われるんだ…)」
アルタ「僕だって眠れない夜があったし、胸が張り裂けそうになるような日もあった。でも守るべき人々がいるから、毎日毎日笑顔で頑張って来たんじゃないか」
ベガ「そんな...。悪い事を言われるのは僕だけのはずじゃ...」
アルタ「もちろん君を悪く言う人は居たはずだ。でも慕ってくれる人も沢山いただろう!所属する団をいつでも変えられるこの騎士団制度で君の下にずっとついてきてくれた者達がいたはずだ!」
ベガ「……」
アルタ「君はそんな人達の気持ちを踏みにじり裏切ったんだ。魔物化すると決めたのは何がきっかけなんだ」
ベガ「ある日僕の机の上に手紙が置かれていた。自分の今の状況を打破したかったら近くの洞窟まで来いって書いていたんだ、そこにいくとあの中長が待っていた。そして襲撃の際に覚悟が決まったら会いに来いと言われたんだ。初めは柱に攻撃していたがやっぱりどうにもならなかった。アルタも負けた。ハルくん達だって勝てない。だから僕はこのまま魔物の兵として、中長が消えたから代わりに僕がなれるかもしれないしさ」
アルタ「やっぱりそれは本心じゃないはずだ。だって君は慕われている僕とデネブが羨ましく妬ましいという気持ちでその薬を手に取ったんだ。本当に慕われたいのは魔物相手じゃなくて自分の部下や騎士団のメンバー達だろう」
ベガ「……」
少し遠くで1人の人間が立ち上がり二人に話しかける。
隊長「私はベガ様を1番お慕い申しあげていました。貴方様は誰よりも優しく勇敢でありますから。アルタ様やデネブ様を常に褒めその親友である事を何度も自慢されておりました。微笑ましかったです。そうやって自分が一歩遅れているという気でありながらも常に団を率いてくれたではありませんか。私だけじゃありません騎士団のほとんどが貴方様がよくて雷の騎士団に入りました。ベガ様を悪くいう者がいるのは、ベガ様の力に自分の力が及ばず羨ましいからですよ。ベガ様どうか、戻ってきてください」
ベガ「オボシ...」
アルタ「君には帰る場所がある。魔物の力を持った君を何かという者もいるだろう、しかし悪く言う者以上の者をその力で救い出すことができれば、いつかそんな事を言う人も居なくなるさ」
ベガ「友を傷つけ、慕ってくれる部下を見捨てた僕に本当にいいのか?」
アルタ「あぁ。これからも友として三本の矢としてこの国を守ろう」
ベガ「お人好し過ぎるよ。優しすぎる」
ベガは剣と膝を落とし泣き崩れる。
ベガ「この過ちは必ず成果として償うよ」
ベガとアルタは大の字に地面に倒れる。
アルタ「あれはどういう能力だったんだ?」
ベガ「まだ手にしたばっかりで、ちゃんとは把握してないけど自分の斬撃や打撃を放つと同時に、ある一定の範囲内で座標や向きや多少のタイミングを変えて展開する事ができる能力みたいだ。単純に攻撃範囲を広めることができて、ガードしてきた相手にも当てれるそこそこ使い勝手のいい能力だよ」
アルタ「なるほど、かわしたりガードしても喰らってしまう訳だ。ベガの特技の他人の動きを真似る力と少しだけ似てるな」
ベガ「…オボシ本当にごめんね」
隊長「いいですよ。その代わりに存分に働いて貰いますからね」
ベガ「うん。この顔じゃ国民を怖がらせてしまうから何か顔を隠すものを作ってくれないか」
隊長「仕方ないですね」
ここに魔物1人を抱える風の三銃士が誕生した。
そして、残る敵は風柱ただ1体になった。




