41話 大長落ち対水の姫
―――城内2階―――
リクは城内に入った後、とりあえず見つけた階段を登っていた。来たことがない広い建物の構造と方向音痴が協力してリクの邪魔をしていた。
リク「(マナに帰ってきて貰えばよかった。俺一人じゃ味方か敵の場所に辿り着けない可能性でてきたな。耳や目も特に良くないからな…) 」
リクはどうにか自分の出来る事を探す。
リク「(魔法でどうにかできないかな。熱とか電磁的な何かで…。あれ?忍村で雷マスターが大長6の襲撃に反応してたよな。たしかライセンス…?大長6の片方は雷魔法の使い手って言ってたよな。雷球にずっといたせいか雷魔法を自分に取り込む感覚は残ってる。これを応用して雷魔法を使用している場所を特定出来るんじゃ…。見よう見まねだけど、雷魔法を受信する感覚。雷感覚[ライセンス])」
リクは立ち止まって目を瞑り遠くで発生した雷魔法を感じる。
リク「できた!(同じ階っぽいなちょっと引き返して左側か!)」
リクはダッシュで引き返していく。
―――ルカサイド―――
バート「MP多すぎでしょ。防御にも攻撃にも移動力促進にも魔法使ってるのにまだ残っているんだ」
ルカ「こっちのセリフ」
バートは炎魔法をすべて雷属性へと変換し畳み掛けていた。苦手属性を完全に受ける為には相当の大技を放たなくてはならずルカも確実に消耗していた。
ルカ「(変換される隙も与えない速度で当てなきゃならないなら近づくのもありだよね)」
ルカは踊水[ダンス]で速度を上げながらバートに近づいていく。
バート「その弱点を弱点のままにしてると思う?」
バートのレイピアは雷を纏って構えられている。
ルカ「泡檻[シャボン]」
バートは水に包まれ、その水の中に自身が持つレイピアから雷魔法が流れバートは痺れる。バートは魔法の属性を変換できるがその魔法に耐性がある訳ではない。
バート「しまった」
ルカ「水霧中[シャイガール]」
バートとルカは深い霧に包まれ、バートはルカを見失う。
バート「(これなら変換できる…。変換[コン]!)」
水の霧は砂霧へと変換されるが、それをよんでいたルカは全身に水を纏っている。
ルカ「水装[タンク]」
バートがルカの姿を認知したときにはルカの一撃が既にバートに当たっていた。
ルカ「(必殺 乱水槍[ランランス])」
バートの体を水の槍が貫いている。炎属性のバートに弱点をつき、さらにその技の規模はルカの膨大なMPと魔法力によるものである。
ルカ「(一応大長落ちだし、油断しないようにしなきゃだよね)」
バート「アハハハ、これはヤバイね」
相当ダメージを受けながらもバートは立っている。
バート「身体的ダメージを身体的衰えに変換。アハハハハハハ」
バートの傷は完全に塞がっているが、息を切らして苦しそうにしている。
ルカ「一体なにを…」
バート「どうせ負ければ死ぬんだ。やれることは全てやるさ。この老いはこの君を殺した後にゆっくり傷に変換し直すさ」
バートが持つレイピアの先が震えている。
バート「さて、こんなに衰えるとは思わなかったよ。魔法以外も変換できるっていうとっておきだけど、ダメージを老いに変換する時は少しずつとかじゃなく全て変わっちゃうのだけ難点だね」
ルカ「そこまでしてなぜ人間をいたぶりそれを楽しむの?」
バート「さぁ?きっかけは覚えてないなぁ。きっと前世の頃から好きだったんだと思うよ。きっかけだけ忘れてその快感だけはきっと忘れられないんだ」
ルカ「よくない考え方かもしれないけど、なんで人間にするの?魔物にすればいいじゃない」
バート「それは好みが人間に多いからかな。別に魔物でも気分が乗る時もあるし人間でも興味がないやつもいる。生に執着する死に恐怖する叫び声が好きなんだ」
ルカ「理解出来ない」
バート「君はなんで魔物と戦うの?襲われるから?それとも楽しいから?さっきの自分の力を僕で試してみたかったってのは僕の考え方と少し似てるんじゃないの?」
ルカ「……。違う。私が力をつけ戦うのは多くの人を守れるような立派な国王になるため。人を襲う魔物さえいなかったら魔法の修行なんかしないで朝から晩まで本を読むと思う」
バート「んー、僕は人間同士の魔法力を競い合う大会とか開いてそこで無双して楽しんでそうなイメージだったな。実際魔物という自分の力を発揮できる討伐対象がいるのにも関わらず土国とかで大きな大会あるし」
ルカ「たしかに勉学や料理や裁縫などの技術でも他人と比べたり競い合う機会はあるかもしれない。けど、人を傷つける為に自分の力はつかわない」
バート「自分の鍛えた技術を見せたいと思う気持ちはあってもそれを人を傷つける為には使わないか。人間って愚かだから魔物がいなくなれば同種族同士でもっと争いが生まれると思うけど、その可能性に目を瞑って魔物の絶滅を願っているよね。忌み嫌う対象がいるって楽でいいよね。そんなヤツらより可愛い事が好きでいつでも元気なメルムの方が生き物としてよっぽど魅力的に見えるのにな。お互い主観でしか語れないもんね。分かり合えないのかな」
ルカ「人を傷つけないなら別に争う理由はないわ」
バート「よく言うよ、魔物ってだけで人を傷つけた事のない小動物の魔物とかも殺すクセに。まぁいいや色々話せて楽しかった。もう別に聞きたい事も話したい事も無いし、終わりにしよう」
ルカの心が少し揺れた瞬間であった。もちろん恋心ではない。バートがいう魔物というだけで殺すクセに、というセリフのせいだ。
ルカ「(魔物は罪の無い、力の無い人達を無慈悲にも殺していくのに。人間も同じって言うの…)」
バート「気持ちが揺らいだ人間は弱い」
老いてスピードの落ちたバートの蹴りをルカは喰らってしまう。
バート「魔物の僕の言葉で揺れる心なんか価値ないんじゃない?」
ルカは起き上がりながら返答する。
ルカ「沢山の人に愛を受け、そして多くの人にその愛を贈った、そうやって作り上げられた私の心の価値は高い!罪のない魔物もいることは確かだけど、今目の前にいる魔物は多くの人を傷つけ殺してきた。その罪は重い」
バート「アハハ、それはたしかに否定できないなぁ」
ルカ「全力で倒す」
バート「アハハハハ、いいよぉ。煉獄弾!」
バートは熱エネルギーを圧縮して燃える弾をルカに撃つ。
ルカ「(生半可な水なら全部蒸発される熱量。最後の必殺で勝つ)」
ルカが忍村で習得した 追天水の巨壁、乱水槍に続く3つ目の必殺技である。
ルカ「必殺 水龍の咆哮!」
巨大な水の龍を出し、その龍が膨大な水量と水圧でまるで地面と並行に流れる滝のように水を放つ。
バート「規格外過ぎるけどさ、これを変換してやれば逆にこっちの勝ちだ。え?」
バートの胸には乱水槍が刺さっている。そしてバートの煉獄弾は水龍の前に構えられた天水の巨壁で相殺される。
ルカ「いっけぇ!!」
バート「アハハハ、これは流石に僕も終わりか。これは老いに変換する前に死んじゃうな」
バートは大量の水に飲み込まれる。
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「アハハ…。母さん父さん僕に声を聞かせてよ」
高音以外聞こえないこの聴力をずっと恨んでいた。ずっと真夜中みたいに静かな世界、僕は何でもいいから人の声が聞きたかった。ある日何かのきっかけで近所の子供の悲鳴が聴こえた。誰かが苦しんでいるのはとても悲しいと同時に温度のある音が聞こえて心地よくなっていた。そうだ、炎魔法使いの中でも素質のあった僕は魔王軍にさらわれて魔物にされたんだ。そして人の悲鳴を好物とする魔物になった。
なんで忘れてたんだろ。いつから僕は狂ってしまったのだろう。
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【ルカ 大長落ちバート 撃破】




