40話大長落ち対勇者
―――城内2階―――
ハルはマナの案内で城内を走っていた。マナは走りながらもハルに治魔法をかけている。
ハル「上に魔物がいるの?」
マナ「柱よりも感知量が小さいから、多分大長落ちだと思う。しかも多分さっきまで私がシノブといた所」
ハル「……ということは医務室へと続く道ってことになるよね?」
マナ「そうなの。でも医務室よりはズレてるから多分誰かが止めてる」
ハル「おそらくシノブだね」
マナ「あとは今いる2階にも大長落ちがいて、1階のメインホールの奥に柱がいる感じ、皆大きな移動は見られないからきっと誰かが止めているんだ」
ハル「城に入った順を辿れば、ルカが『変換』に追いつかれたか、ルカが『変身』と戦ってる間に変換がシノブの方に行ったかだね」
マナ「じゃあ柱は誰が止めているんだろ?」
ハル「多分デネブさんだと思う」
2人は階段まで辿りつき急いで上っていく。
マナ「はぁはぁ(戦闘もしてないのに息切らしてる余裕なんか無いのに)」
ハルは振り返りマナの方を見る。
マナ「大丈夫。私もみんなと鍛えてきたから」
ハル「マナも僕らのパーティーの中でも大事な存在なんだ無理しないでよ」
マナ「ありがとう。(私も仲間として役に立ててるのかな)」
ハル「見えた」
通路の奥にトフムと戦うシノブの姿が見える。
マナ「すぐ追いつくから、先に行って!!」
ハル「回復本当にありがとう!行ってくる」
シノブ「(もう雷魔法を制御できない。)うわぁ!」
シノブの体からは雷魔法が四方八方に放たれていた。
トフムの姿は、細いスピード型から更に変身しており、翼を生やし空を飛んでいた。
シノブ「(もう駄目…。だれか医務室を守って…)」
倒れゆくシノブをハルが受け止める。ハルには、暴走して放たれる雷魔法のダメージはない。仮にダメージがあったとしても彼なら迷わず手を伸ばしただろうが。
ハル「よく守ったシノブ。(魔法が暴走してる、無理して戦ってたんだな)」
シノブ「ハル?」
ハル「助けに来るの遅くなってごめん。あの魔物倒してくるね」
マナ「はぁはぁ。これが大長落ち…シノブ!」
マナはシノブに駆け寄って治療しようとするがシノブが雷を体全体に纏っているため近づけない。
マナ「(ダメージもひどい。)シノブ一回MPを0にした方がいいから体から出ていく雷魔法に抵抗しないで身を任せて」
シノブ「マナも無事でよかった。わかった。離れててくれ」
マナは、シノブから離れずそのまま治療を初めていく。
シノブ「マナ、離れろ!ゲフッ マナまで痺れてしまうぞ。私なら大丈夫だから」
マナ「無理して喋らないで、私は皆を治す為にいるの。私の腕はすぐに回復できるから平気」
シノブの雷魔法に触れパチパチと音を鳴らしながらマナはその中に腕を突っ込みシノブを治療し続ける。
トフム「怪我人治療師優先」
ハル「いいや、こっちに集中して貰おうか」
空を飛びながら鋭い爪を2人に向けるトフムにハルが剣を向ける。
ハル「氷纏 アイスター・プリック」
ハルの高速の突きは、トフムの翼を貫く。トフムは剣を翼に貫かれたままマナとシノブの方へと飛びかかっていく。
ハル「止まれぇ!(このままじゃ、マナとシノブが危ない)」
ハルはトフムに刺さっている火の国の剣を抜き、ハルの頭上を飛び越えていこうとするトフムの翼を斬る。
ハル「裂斬!」
ハルは飛び上がり、トフムの左翼を上から半分に切り落とす。左翼を失ったトフムは飛行が安定しなくなり横に逸れて城壁に衝突する。
この裂斬はスラッシュよりもスピードが遅いが溜めが短く斬力が高い、ハルの新技である。ハルは道場のワカとの稽古で対抗斬とこの裂斬を習得していた。
トフム「邪魔者排除今俺ノー成果」
トフムの翼は消え、上半身は筋肉で固めた屈強な肉体へ下半身は長い足にバネが強い関節を持ちながら引き締まった厚い筋肉を持つ肉体へと変身する。
ハル「(翼に与えたダメージがないのか?これは多分スピードとパワー両方をとったフォルムだよな)」
トフムは戦闘の知能があまり高く無いことをハルは理解していた。裏をかくような攻撃はなく、ただスピードとパワー任せに突っ込んでくるだけである。この戦闘スタイルはパワーかスピードどちらかがトフムより劣っている時に脅威となる。ハルの基本ステータスではどちらもトフムより劣っているが、一瞬の高速の剣技、動きを読む技術と思考で上回っていた。
トフムは目標をハルに変えて突っ込んでくる。ハルはそれに対抗斬を合わせるだけである。ハルの剣は自分を殴り飛ばそうとするトフムの腕をかわしその腕を逆に切り落とさんという勢いで捉えていた。
ハルの剣がトフムの腕に触れた刹那、トフムの姿が蛇の様に変わり腕が無くなる。空振りして体が流れ体勢が崩れたハルの背中をトフムが噛み付く。
ハル「ぐぁっ」
その噛む力は凄まじく、ハルの肩を根こそぎ奪う勢いである。
ハル「(剣を持つ力が入らない。このままじゃ肩ごと持っていかれる。剣でどうにかする考えは捨てろ。となれば)氷層装」
噛まれている部分に薄い氷の膜を貼るが、一瞬で砕かれる。
ハル「(僕の魔法力じゃ無理か。)ぐあぁ」
ヒュンッと音が鳴りトフムのハルを噛む力が弱くなる。ハルからは体勢的に見えていないが矢の音だと理解する。マナが放った矢は、トフムの顎を横から貫いている。
ハル「(ありがとうマナ。初めてやるけど決めないとやられる!)背面斬」
ハルは背を向けたまま、左手だけで剣を持ちトフムを斬る。完全にトフムがハルから離れた瞬間、ハルは向きを変えてトフムへ向け剣を構える。
ハル「(そのフォルムから考えられる攻撃は、噛みつきと縛り上げと尻尾での突き刺し、叩きつけって所か)」
トフムは顎に矢を刺したまま、尖った尻尾をハルに向け伸ばす。
ハル「対抗裂斬!」
ハルは紙一重でかわして、そのまま真っ直ぐ伸び切っているトフムの尻尾を斬り落とす。
ハル「(変身する時にはおそらく心臓を中心に次の体に変形していく。尻尾や翼は元々の体にない部位だからダメージ入らないのかな。)狙うは首だ」
ハルはトフムの首を狙い走りよる。先程空振りをしてしまった経験から体の中心となる頭と心臓を狙っていたのだった。
ハル「(比較的に柔らかくて斬りやすい、蛇形態の時に決着をつけたい)」
ハルが剣を振り上げたと同時にトフムが口を開く。
トフム「最終変身」




