37話偽りの力
―――城外 東―――
ベガ「マナさんだっけ?なんで空から…というか2人が遅れてくるっていってた助っ人?」
マナ「はい。2人が助っ人です。ナギとリクです。空から来た理由は後で説明します」
ナギとリクは目の前の中長を見て既に臨戦態勢であった。
中長「ちょっとまずいねぇ。早く決断しな」
緊張が走る場に雷の騎士団の隊長がベガを追い、ここまでたどり着く。
隊長「ベガ様、こんな所に」
ベガ「オボシ」
このオボシという隊長もかまいたちを何度も体に受けており既にボロボロでとても戦える状態ではなかった。
リ ク「自分には、ベガさんがそこの魔物と何か戦い以外の事をしてたようにしか見えないのですが」
ナギ「でも、全身斬り傷だらけだぞ」
マナはベガを治療しようと駆け寄る。
ベガ「近寄るな!」
マナ「え?」
隊長「ベガ様。どうされたのですか、彼女は味方ですよ」
中長「さっさとやっちゃいな」
ベガはポケットから、紫の液の入った注射器を取り出す。
ナギ「おい。もしかしてあれは」
ナギにはその注射器と液体に見覚えがあった。ルカが水城で水柱に打たれそうになっていたものだった。その液には人間を魔物に変える効果があった。
隊長「何をなさるつもりですか」
ナギは最悪の事態を想像してベガから注射器を奪おうと走り出す。そのナギの前に無数の蛇が立ち塞がる。
ナギ「(こいつらはフルサトヘビ)」
フルサトヘビとは、風国最大の洞窟に生息する強い毒を扱う蛇の魔物である。常に集団行動をとっており、屈強な男でも囲まれれば最期と悟り、故郷の事を思い出して涙してしまうと言い伝えられこの名が付けられたとされている。
リク「火纏い スナイプ」
フルサトヘビにナイフを投げつける。7匹のヘビの首元を一纏めに貫通させ、絶命させる。
ナギ「(ナイスサポート)」
ナギはスピードをゆるめず、ベガに近づくことに成功する。
ベガ「……」
ベガは注射器を奪おうと飛びかかってくるナギの手を華麗にターンしてかわす。
マナ「(なんでそんなひどい怪我で動けるの)」
「お前はアルタとデネブの後ろで隠れてるだけで良いからいい身分だよな」
違う僕だって、2人みたい皆を守りたくて毎日努力してるんだ。
「あまり言いたくないが、ベガ様だけお二人より劣っているよな」
そんな事言わないでくれ。
「ベガ、そんな事気にしなくて大丈夫さ。君には君の強さや優しさがあるじゃないか」
「ベガの強さ皆知らない」
その優しさが痛いんだよ。アルタ、デネブ。
「三銃士っていうとカッコイイから人数合わせしただけじゃないか」
「本当にカストルさんに小さい時から教わってたのかな。そういう風には見えないけど」
僕も誰かに認められたい。たとえそれが人間じゃなくても。僕が異形の怪物になり果てても別に誰も止めないだろう。これからもアルタとデネブに守ってもらうといいじゃないか。僕はもう僕を好きになれない。だからもう何をしてもいいや。
~~~数年前の風城~~~
アルタ「ここに誓おう!」
デネブ「我ら3人で矛として盾として」
ベガ 「この国を王を民を守る三銃士として」
アルタ「いつまでも最高の戦友と共にあらんことを」
3人は重ねた手を空へと向ける。
ベガ「アルタ、勝手に宣誓に言葉足しちゃっていいの?」
アルタ「三銃士が初めて生まれるんだ、僕達の好きにしていいはずだよ!」
デネブ「良い宣誓だった」
ベガ「たしかに、そうだね!」
~~~現在~~~
ベガは自身の首に注射器を刺しゆっくりと邪悪な液体を体内へと入れていく。真っ赤に染まっていくその目には涙が浮かんでいた。
マナ「そんな…」
ナギは注射器を蹴って破壊する。
中長「もう遅いよ。一滴でも体内に入ればもう元の人間の状態にはもどれない」
ベガの皮膚は紫色になっていき、爪や牙が伸び角が生える。
中長「大長になれるぐらいの素質あるんじゃないかい。気分はどうだい?」
ベガ「最高だし最低だ。体がだるい。でも力に満ち溢れている」
ベガの傷は完治している。そして剣を軽々握り雷を纏って城壁へと振る。その剣先の軌道上に遅れて雷が走り城壁を破壊する。
ベガ「強さは文句ないよ」
隊長は、ベガに抱きつく。
隊長「おやめ下さい。ベガ様」
ベガ「オボシ、はなせ」
隊長は力が抜けその場に倒れ込む。ベガは少し恐れた表情で中長の顔をみる。隊長の足にはフルサトヘビが噛み付いている。
中長「まずは水柱を倒したと言うこいつらを倒して成果を上げな」
ベガ「……。あぁ」
リク「目の前で自分の仲間が倒れたんだぞ。なんでそんな平然にしているんだ。喋れるなら知性あるんだろ!」
ベガ「うるさい。何も知らないクセに」
ベガは足に雷を纏ってリクに近づき剣を振るう。リクは首をひき剣を回避する。遅れて流れる雷が直撃するがリクにはほとんどダメージがない。
ベガ「土属性か」
リク「そんな事より仲間を心配しろ。雷強速 火雨」
ベガに連続で突きを当てる。剣での防御も尽く間に合わず次々と腹や肩へリクの拳が突き刺さる。
ベガ「ゲフッ。なんで強くなった俺がこんな…」
中長「風蛇乱装」
中長は風で作った蛇を体に纏い、両手に蛇型の剣を持ちナギと対峙する。
ナギ「(フルサトヘビには気をつけないと)」
マナは倒れた隊長を回復させている。
マナ「状態異常回復」
隊長「ベガ様…。あの方は力こそ他の2人に劣っていたものの人一倍優しいお方だった。それなのになんで。こんなこと」
味方戦力の中でも高い中にいたベガが強くなって魔物側になった事でさらに戦況は悪くなっていく。
―――風城前―――
ハル「アルタさんがやられた!?」
バート「アハハハ、よそ見する余裕なんてないんじゃない?」
水を纏ったレイピアでハルへ向け突き続ける。ハルはそれを必死に愛剣で防ぐ。
風柱「手を貸そうか?」
バート「んー、さっき城内に悲鳴を聞きたい子が行っちゃってさ、こいつはもう飽きたし頼むよ」
ハル「!?」
風柱は、ハルへ向け小さなかまいたちを無数に放つ。
バート「じゃあお互い生きてたらまたね」
バートも城内に入っていく。
ハル「待て!(くそっ、これ以上城内の戦況を悪くしたくないのに、目の前には柱…)」
ハルは全力でかまいたちを受けるが、受けもらした斬撃を数箇所に喰らっていた。
風柱「ふん。お前じゃ役不足だな」
風柱もバートに続き城内へ侵入しようとする。ハルはその背中を追い斬りかかる。
風柱「つまらん」
風柱は背をむけたまま鎌を後ろに回転させる。
ハルは胸に鎌を貫通させられている。風柱は血を吐くハルに見向きをせず鎌を抜き去り、城へと入っていく。




