36話 戦況の傾き
シノブ「私達元大長に勝ったよ」
マナ「や、やったんだね…」
シノブ「少しずつためられたから双子玉の充電はあと5分ぐらいだよ」
―――風城 入口前―――
風柱「先程はあんなに威勢の良い事を言っていたがこのザマじゃないか」
アルタは全身切り傷だらけになっていた。対する風柱も彼の剣に刻まれた傷はあるものの、余裕綽々といった様子だ。
兵「アルタ様我らの事は…ゲホッ。お気になさらず全力でやってください」
先程かまいたちに斬られ、倒れた兵達に風柱がトドメの斬撃を無数に放ち、それを庇ったが自身は防ぎきれずアルタは怪我をしていたのだった。
アルタ「団長として、三銃士として兵を守るのは当然の事だ。それに心配はいらない」
アルタは今一度剣を構える。その気迫は柱の余裕を揺るがす程のものだった。
風柱「(しぶといな。)これを防ぎきる体力はもう無いだろう。夜嵐 かまいたち!」
見境なく無数にかまいたちを高速で四方八方へと放とうとする。
兵「アルタ様!風柱へ攻撃してください」
アルタ「流星群」
アルタは風柱が鎌を振りきる前に剣を当て力づくで次々と止める。振り切られなければ、風の刃は放たれない。
風柱「(この速度にもついて来れるように見せかけて、体はズタズタで呼吸もままなっていない)」
アルタの体は既に限界を超えていたが彼の正義や責任感、プライドが彼の体を突き動かしていた。
アルタ「彗星斬り」
渾身の一撃は、風柱の胸に斬り傷を入れる。
風柱「見事だったな」
アルタは風柱の一瞬を隙を見極め攻撃を入れたが、それは意図して作られた隙だったのだ。風柱に一撃入れると同時にかまいたちを両肩に喰らっていた。もう腕は上がらない。
アルタは腕の感覚を失っても愛剣を手放すことはない。その剣がアルタのプライドそのものであった。上がらない両腕をブラつかせながらアルタは前に体を倒していく。
兵「アルタ様!」
~~~数年前の風城~~~
少年期のアルタ、ベガ、デネブは王の側近であるカストルから剣技を習っていた。
アルタ「カストル様!もし自分の命と守るべき命が天秤にかけられた時はどちらを優先すればいいのでしょうか」
カストル「騎士たる者、常に誰かを守るという気持ちを忘れてはいけません。守る力をつける為に君たち3人は厳しい鍛錬を毎日こなしているのです……いずれ君たちには風城と王を守る三本の矢になってもらいたいです。私も老い先短い命、一時でも早く立派になってもらうことを願ってますよ」
デネブ「僕、皆、守る!」
ベガ「ぼ、ぼくも頑張ります!」
カストル「良い子達ですね。私は君たちのような弟子を持てて鼻が高いです」
カストル「1人では困難な事でも、2人、3人で挑めば開ける道も多々あるでしょう。誰かが道を踏み外しそうになった時は全力で止め、全身全霊で突き進む者がいれば負けじと努力し背中を支えあってください」
ア デ ベ「はい!」
~~~現在~~~
アルタ「まだだ」
アルタは右足を出して、倒れゆく体を止める。
風柱「もう、お前に戦う力はない。腕も上がらない状態の剣士が何をするというのだ」
アルタ「僕は剣士の前に騎士だ。風魔法 メビウスの輪!」
アルタは必死で自分の周りの医療兵が傷ついた兵を担架の上に乗せているのを風で補助する。さらにそれと同時に風柱を拘束している。
風柱「ふんっ。捕まるなど何年ぶりだ」
風柱は拘束をされながらも鎌を振りかまいたちを起こすが、アルタのメビウスの輪がそれを遮る。
アルタ「風魔法同士のぶつかり合いにすれば、お前のかまいたちも防げる」
風柱「しかし、その体でさらに魔法を行使すればもう立てまい」
アルタの周りの兵は全て城内の医療室へ運ばれていた。アルタは死者を出さずに守りきったのだった。
アルタ「(デネブ、ベガ、王、カストルさん、ハル殿すまない)」
アルタはその場に倒れ込み、風柱は解放される。
風柱「さて、城内の王を殺しに行くとするか。三銃士アルタ、俺を相手に死者を出さないとはやるな。しかし、周りの兵を庇いながら柱を倒せる実力は無かったな」
風柱は城内の入口へと歩いていく。
アルタの敗北は、城内の戦況を大きく動かしてしまった。シノブとマナがメルムを倒した事で劣勢が少し覆されつつあったが、最強戦力の一人のアルタが倒されたことで一気に劣勢へと傾いた。
現在、城内に侵入したトフムをルカが追い、城の入口付近でバートとハルが交戦していた。中長は姿をくらませており、ワカと一緒に風柱を止めていたベガの姿も消えていた。
―――城内地下牢―――
デネブ「お前たち」
兵「デネブ様昨晩は本当に申し訳ございませんでした。先程、城に魔物達が侵入してきました」
瓦礫を退け、地下牢への道を確保してデネブの拘束を解くことに成功していた。
兵「そもそもアルタ様に化けていた魔物はどこから入ってきたのでしょう。誰が手招いて…」
デネブ「俺でもアルタでもない」
兵「それじゃあ、そんなまさか」
―――城外 東―――
ベガは城壁に左手を付け足を引きずりながら進んでいた。
ベガ「やっと、見つけたぞ」
中長「あら、アンタよくそんな傷で立てるねぇ。柱様のかまいたちを喰らいながらも来るとは感心するよ」
ベガ「うるさい。僕はアルタとデネブと違って誰にも尊敬されず賞賛されない。それを何をしてでも変えるんだ。誰かに認められる自分になる」
そして遂に彼らが呼び出される。
シノブ「マナ、溜まったよ!」
シノブはマナに双子玉を手渡す。
マナ「ありがとう!これで姉さんとリクが来るはず」
シノブ「もう飛んできているのかな」
―――忍村―――
リクとナギは双子玉の前で座禅を組んで瞑想をしていた。
リク「ナギ」
ナギ「あぁ。行こう」
リクとナギは双子玉を掴む。
ナギ「(シイナさん、マスターどうか忍村をお願いします)」
リクとナギの体が浮かぶ。そして空中まで高度を上げて風城の方向へ向かって飛んでいく。
リク「うわぁわばぁあば。おぼったよりはぇえ。ナばギ大丈夫?」
ナギは少し酔いやすいので集中していた。
ナギ「おう。(早くついてくれ)」
―――マナサイド―――
マナ「2人が来てくれたら戦況も良くなっていくはずだよね」
シノブ「そうだね。しかも私達が三銃士とハルたち戦闘職の皆に頼らずに幹部倒せたのは大きいよね!」
話す2人の横を担架に乗せられたワカが通る。
ワカ「2人とも大長落ちを倒したんですか。よくやりましたね」
シノブ「え、ワカ先生!?その傷」
マナ「医療兵さん!私がついて行きながらも治療します」
医療兵「はい!お願いします」
ワカ「僕の治療は大丈夫です。ハル君達も戦って傷ついているはず、その時までMPをとっといてください」
シノブ「消毒や包帯を巻く事だったら私もできます!」
マナ「でも……」
ワカ「マナさん。君の力は柱を倒すのに必要です。温存しておいてください。シノブもマナさんや医療兵の皆さんを守ってください」
マナはワカの優しい目を見る。
マナ「わかりました。医療兵さんよろしくお願いします」
医療兵「任せてくださいませ」
ワカは奥の医療室へと運ばれていく。
シノブ「先生があんなにやられるなんて。え?マナ?」
マナの体が浮き始める。
マナ「もしかして、こっちに引き寄せるだけじゃなくてお互いに引っ張り合うって事?」
マナは双子玉に引っ張られ凄い速さで廊下を飛ばされていく。
マナ「(このままじゃ壁に衝突しちゃう)」
マナはグングンと城の端へと引っ張られていく。
マナ「嘘でしょ」
マナが引っ張られた先は、窓であった。マナの嫌な予感の通り窓に衝突しガラスが割れて外に放り出される。
マナ「(ここ、4階なのに)」
リク「(城が見えたっていうか、塀の向こうに同じ光が…。マナ!?)」
互いに宙で引き合わせられ双子玉が衝突する。
ナギ「もしかしてこれって」
マナ「ヤバいんじゃ」
リク「嘘だろ」
双子玉の光は消えて3人は上空から落下していく。
リク「(流石に受け身でどうにかなる高さじゃないし、雷や火じゃどうにもならないな。ナギに任せるか)」
ナギ「層風」
3人を風のクッションで包み安全に落下させる。
ベガ「なんで、空から人が」
3人はベガと中長が居合わせている所に着地した。




