35話互いの仲間
―――風城 4階医務室へと繋がる通路―――
メルム「こんな感じでメルム達は頑張ってきたのです。まだ大長にはなれてないですけど、ここから返り咲いて見せるのです~」
マナ「こっちだってまだ出会ったばかりだけど絆の強さじゃ負けないんだから」
マナも仲間の魅力やこれまでの軌跡を対抗して話していく。
シノブ「(あと15分ぐらい。というか2人ともほとんど戦わないでただ仲間の魅力語ってるだけだ)」
メルム「水柱を倒して次は風って事なのですね。お互い負けられないですね」
マナ「うん。自分の未来のためにも、仲間のためにも」
シノブ「(マナも強くはなったけど、流石に能力を使ったとはいえ女忍長様にナイフを刺している魔物には勝てないんじゃ)」
マナは決して反撃せず、メルムのナイフを平手で捌いている。しかし、命のやり取りをしている内にマナのスタミナは着実に削られていっている。
メルム「中々やるのです。メルム、ナイフ術だったら結構強い方なのに」
マナ「(捌いて、充電までの時間を稼ぐ)」
戦力的に考えるとマナとメルムは釣り合わない。しかし、そのマナがメルムを止めているというだけで戦況的にはアドバンテージである。ただ、それでも城内の戦況は芳しくなかった。
メルム「土口[ドリップ]」
メルムは手元で土の塊を作りそれをグローブのようにナイフを持っていない左手に装着する。
マナ「(何に使う気だろう。ナイフよりもグローブの方が私を傷つける敵意が込められている)」
メルムは土を纏った手で、マナの顔に殴りかかってくる。
シノブ「(今のマナにあんなパンチなんか当たらないよ)」
メルム「サプライズ」
土のグローブから棘が生え、そのまま四方八方に飛び散っていく。マナは対応し切れず頬や肩に掠ってしまうのだった。
マナ「(あんな速い棘かわしきれない)」
そして、身体が驚きで硬直したマナの頬を横から殴り倒した。
体勢を整える間もなく、メルムは攻撃の手を止める事無くグローブでの攻撃とナイフの攻撃で畳み掛けてくる。
シノブ「(まだあと10分かかるけど、もう見てられないよ)」
マナは何度も棘を喰らっては回復を繰り返していた。常人であれば戦闘不能になるような蓄積ダメージであったがマナは自己治癒を使い立っていた。
メルム「マナ。もう楽になるのです。治魔法は連続で同じ対象に使うと効果が落ちるのです。傷はなくてももうズタボロなはずです」
マナ「私は倒れる訳にはいかない。皆を癒す役割の私が先に倒れているなんて出来ないから」
シノブ「マナ。私も戦うよ。双子玉はこの子を倒してから充電しよう」
シノブはそう言いながら、メルムにバレないように微量の雷魔法を送り続けていた。
マナ「……。わかった!よろしくね」
メルム「友情も可愛いのです~。2人まとめて相手です」
シノブ「花忍法 薔薇手裏剣!」
メルムは赤い薔薇のついた手裏剣を見てテンションをあげる。シノブはメルムの横から走りより次の攻撃の準備をしている。
メルム「あんまり可愛くないメルムの土つけてゴメンなのです~」
メルムは小さな土の壁を作り、手裏剣を防ぐ。
メルム「土煙」
シノブがメルムの姿を目で捉えれてないうちにメルムはマナに『変装』し、ナイフを隠してシノブに近づく。
シノブ「生憎だけど、私も匂いで見分けることが出来るの」
シノブはマナに変装したメルムの方を見る。メルムは諦め、直ぐに変装を解く。
メルム「あらら、能力の相性は最悪なのです~。というか能力を破るなんて相当良い特技?ですね。メルムの特技もとくとご覧あれ」
マナ「シノブ後ろ!」
シノブは後ろを振り返るが、特に何もない。
マナ「今のは私の声じゃないよ!」
メルムは後ろを向いているシノブの顔を蹴り、肩にナイフを刺す。
メルム「声真似は『変装』とは、関係ないメルムの特技なんです~。あれ?」
ナイフは丸太に刺さっている。
シノブ「変わり身の術」
斜め後ろから刀で斬りかかってくるシノブの攻撃をメルムはギリギリナイフで受けるが、体勢を崩す。そこにマナの矢がメルムの横腹に当たる。
メルム「良い連携なのです~」
騙し合いはシノブの方が1枚上手であった。
シノブ「(この魔物は他の魔物より自我があるし、話も通じるけど女忍長を刺し、誘拐の原因の魔物だ。逃がしはしない。)お前が刺し誘拐した女忍長は生きているのか?」
メルム 「…」
シノブ 「(頼む)」
メルム 「生きてるのです。大長と魔物に囲まれながら生き残って牢屋に入ってるのです~」
シノブはすぐさまマナの方を見やる。その発言の真偽を明らかにする力はその特技にないが、その発言に悪意があるかどうかは判断できると考えたからだ。
シノブのアイコンタクトに対して、マナは首肯で答えた。
シノブ「そうか。(よかった。)魔王城はどこにある?」
メルム「それは教えられないです~。というか知らないです~。いつもドクターの能力でワープして辿りつくのです」
マナ「そのワープゾーンはどこにあるの?」
メルム「ん~固定的な物じゃなくて、私達が呼んだら出してくれるのです」
マナ「(やっぱり、そあいう『能力』なんだ。女忍長が生きてることだけでも知れてよかった。帰ったらシイナさんに報告しなきゃ)」
メルム「こっちも質問です。もし仲間が魔物になったらその魔物とは縁を切るです?」
マナ「そんな事無いと…思う。実際私の仲間には魔物の友達がいるって言ってたし」
メルム「それは嬉しい事を聞いたです。もうメルムの汚れた手じゃ無理だけど、そういう人間もいるのですね」
メルムはナイフをクルクルと手で遊ばせながら、シノブに駆け寄る。
メルム「土の薔薇[ドローズ]」
メルムの目の前に大きな土の薔薇が咲く。その茎には沢山の棘を生やしている。
メルム「これを耐えられるですか~?」
土の薔薇の棘がその茎から離れシノブとマナ目掛けて飛んでくる。
シノブ「花忍法奥義 向日葵の盾」
巨大な向日葵がマナとシノブの前に咲き誇る。
メルム「綺麗なのです。それにまさか全部防がれるとは思わなかったです~」
シノブ「花忍法奥義 アルストロメリア」
シノブの刀に桃色の花が咲く。その美しさにメルムとマナは見惚れてしまう。
メルム「(あ、これちゃんと防御しなきゃです)」
メルムは先程花手裏剣を防いだ土の壁を再び出す。
シノブ「(マハナから受け継いだこの奥義で勝つよ。天国から私達を見守っててほしい)」
シノブの刀はメルムの土の壁を斬り割りそのままメルムを斬る。腹に大きな一文字の傷を刻まれたメルムは笑顔になりながら倒れ口を開く。
メルム「負けちゃったのです。でも楽しかったのです。最後に可愛い2人と戦えて仲間の為に頑張れて良かったのです。バート君もトフム君も戦闘向きの能力なので強いですよ」
そう言い残しながら、悔いのない顔でメルムは消えていった。
メルム「シノブありがとう」
シノブ「なんでその声を…」
シノブは驚いた顔で、消えていったメルムのいた場所を見る。メルムの最期の声は今は亡き親友の声と同じだった。
【マナ&シノブ 大長落ちメルム撃破】




