33話ハルの新技
―――風城 正面入口前―――
風柱「忍村にとんでもない犯罪者がいると聞いたがお前の事か?」
ワカ「……どこでそれを!!」
アルタ「よくも、僕らの仲間を!」
アルタの手の甲には紋章が浮かんでいる。
アルタ「星連突[アステロイド]」
目にも止まらぬ突きを柱に放つ。風柱の顔に余裕はないが鎌で防ぎ切っている。
ハ ル「(あとひと押し!)」
アルタの援護をする為にハルが飛び出すが、トフムがそれを遮る。ルカの前にはバートが立ち塞がっている。
バート「モチ村で会った水の姫だね。君はどんな悲鳴をあげるのかな。良い声で鳴いてね」
バートはレイピアに炎を纏い、次の瞬間にはそれを雷魔法へ変化している。
ルカ「(やっぱり毎回初めは炎をだしている。この魔物の能力は)変化?」
バート「惜しい。『変換』だ」
ルカ「(魔法の属性を変換する能力。魔法中心で戦う私には相性が悪い相手だし、どうにかして能力を攻略しないと!ヨルちゃんは、記憶や認識を変換されたって事なのかも)」
バートのレイピアの突きをルカは大きく下がってかわす。
バート「あまり下がっちゃうとさぁ。扉破っちゃうよね。炎杯矢[エンパイア]」
炎の矢を扉へ放つ。まるで空気を焼く程の熱量がルカを圧倒する。
ルカ「天水壁[リアガード]!」
バート「君の魔法も変えれるよ。変換[コン]!」
ルカの巨大な水の壁は炎に変えられる。
ルカ「え」
バート「アハハハ、やらかしちゃったね」
ルカ「っ!!水天発衝[ウェットパーティー]」
炎の矢と炎の壁内部に水魔法を生みだす。巨大な炎を内側から消すには相当な水量を必要とするが、ルカはそれをこなしてみせ消火する。
バート「は?何それ、君凄いね。ますます悲鳴聞いてみたくなったよ。扉なんていいや君で遊ぼう」
トフム「お前もノー成果」
ハル「(不気味なやつだな。こいつも能力持ちかもしれないから気を付けよう)」
ハルは剣を構える。
ハル「君は大長落ちか?」
トフム「イエス」
ハル 「(柱や大長に勝つにはまずこいつを超えなきゃだ。気合い入れていこう)」
トフムは太い腕でハルに殴りかかる。
ハル「(早速チャンスが来た)」
~忍村 ワカ道場での修行中~
ワカ「今のがハル君のイメージしてた技ですか」
ハル「はい。色んな相手に対応できる汎用性の高い技だと思います。」
ワカ「そうですね。そしてそれを使えるタイミングと、相手と自分の分析が叶えば常に戦闘中に成長出来ることでしょう」
ハル「もう一つのこれから軸になる技も見てください。これはレパートリーを増やす技です」
~現在~
ハルはトフムのパンチを完全に見切りトフムの突き出した手と反対の方向に踏み込む。
ハル「(こっちのなぎ払い)」
近づいてきたハルを警戒しハルの頭を目掛けてなぎ払いをしてくるがそれも最小限の動きでかわし攻撃のモーションに入る。
ハル「対抗斬!!」
トフムの腹にハルの一撃がもろに入る。
トフム「ぐっ…。良い斬り技」
ハルが編み出したのは相手の技を見切ってかわし、カウンターの一撃を加える技だった。相手の攻撃の勢いさえも利用することで攻撃力を倍増させるイメージを持っていたが、ハードな鍛錬の末に見事1週間で身につけたのだった。
トフムが雄叫びをあげるとそれに呼応してトフムの足から体全体が細くなる。
ハル「なんだ?」
先程まで巨体で鈍足なパワータイプのトフムの姿がひょろっとしたいかにもなスピードタイプになる。
トフム「『変身』」
メルム、バート、トフム三体は「変魔三衆」と呼ばれているが、それは『変装』、『変換』、『変身』と三体とも能力に「変」という文字が含まれていることとその尖った個性が原因である。
トフムは軽く跳躍すると足がバネのように曲がり、その跳躍を助ける。
ハル「(これは速そうだ。守戦律)」
ハルは守りを上げる曲を口ずさみ剣を構える。ハルの目には担架に乗せられ運ばれるワカを視界に映し、ピントは今にも飛び出して来そうなトフムに合わさっている。そしてトフムの飛び出しの勢いはハルの予想を超える。
ハル「(体に負担かかるけど。)対抗閃斬!」
トフムのパンチをかわし、ハルは反撃をしようと剣を振り下ろすがトフムはその勢いのままハルの横を通り過ぎていく。そもそもトフムのスピードに反応出来たのはワカとの稽古のお陰である。ハルがこの一週間の内に速くなった訳ではない。ハルには閃斬を超える速度の技がないのでそれを超えられれば単純なスピード勝負で勝ち目はない。ハルにはたしかに自身よりも数段格上のスピードを持つ相手に有利を取られないような位置取りと読む力が備わってきていた。だが相手は、その瞬間ハルを倒すことが目的ではなかったのであった。
トフムの飛んでいく先は、ルカとバートの元である。
ハル「(しまった、目の前の敵に集中しすぎた)」
即座にその魔物の意図に気づいたが、既に間に合わない。
トフムはルカに向け直進していく。それに反応したルカは、咄嗟に視界の端にトフムを捉えるように目線をそらす。
バート「よそ見したね」
バートは雷を纏ったレイピアでルカを横から刺す。ルカは咄嗟に水で防ぐが感電しダメージを受けてしまう。
トフムはそのまま扉に衝突し扉を突き破る。
バート「トフムはそのまま城の中に行って王を殺してくれ。僕はこの水の姫と遊ぶよ」
ルカは足を痺らせながらも立ち上がる。
風柱「俺のかまいたちの速度についてこれる者がいるとはな。褒めてやろう」
アルタ「(対応は可能だが、単純にスピードで柱には追いつけない。)それはどうも」
アルタは適当に柱の言葉を返しながらも次々と技を放ち柱が自由に動けないようにしている。
アルタ「君たちの目的はなんだ?」
風柱「この城を初めに風国を奪い返すことだ」
アルタ「奪い…返すだと?」
風柱「過去をお前達に話すつもりはない…」
アルタ「そんな胡散臭い歴史は知らないが城を空け渡すつもりはない」
風柱「だから力ずくで奪うしかない」
アルタ「なるほど。風柱、三銃士として君は僕が倒そう」




