30話変魔三衆
―――昨日の夜 風城から少し離れた洞窟―――
バート「モチ村は半分焼けたよ」
トフム「こっちはノー成果」
両腕に筋肉が纏われまるで幹のような太さになっているゴツイ魔物とバートが風柱に報告している。
バート「トフムは家を沢山壊したっていってたじゃないか」
トフム「殺さなきゃノー成果」
メルム「トフム君は相変わらずこだわりが強いのです~」
風柱「まぁいい。手間かけたな」
石の上に、ツリ目で背中に2本の鎌を持った魔物が口を開く。その見た目は何となくカマキリに似ている。
メルム「大長補欠のメルム達は頑張らないとですから~」
バート「なんでモチ村に水の姫がいたんだ」
メルム「この前まで忍村にいたです~。でも火のオババって人がメルム達が風城を襲撃するのを予言してたのです~それで防衛の為に来たんです~。水の姫生きてたんだぁ」
メルムは忍村で医療人の姿に変装していた際に、村長の間で話し合いを盗聴していた。
風の中長「それってさ、そもそも忍村に来たのも予言を聞いたからなんじゃ無いのかい」
風の中長は頭に蛇を乗せ、髪のように扱っている女性の魔物である。姉御の様な存在で魔物兵達からは慕われている。
中長「ほんとに人間には厄介な能力持ちがいるねぇ」
メルム「メルム達も厄介な能力です~」
中長「だがあんたらと『未来視』、『千里眼』、『結界』では全然違うだろ」
バート「能力は所詮使い手に依存する。強い能力を持つ奴が強いとは限らない」
トフム「能力人間紋章ある」
中長「紋章ってやつは本当にそんなにパワーアップ出来るのかい?」
メルム「ツトガ君が、ただの忍の少女と互角になっちゃうぐらいなのです~」
風柱「さすがに強くなりすぎでは無いか。何か他にタネがあるかもしれん」
バート「モチ村にその子来てなかったのかな。悲鳴聞いてみたいなぁ」
中長「柱様、モチ村まで援軍が来ているのなら城の襲撃を明後日に変更致しませんか」
風柱「うむ。同じ事を考えていた。小長を集めろ」
バートがハル達と出会った事で、予言した未来より城の襲撃が早まる。
中長「じゃあ私は例の奴と会ってくるよ」
風柱「あぁ。頼んだ」
小長「(あの、柱が中長を信頼している感じがかっこいいんだよな)」
小長「(城の襲撃に変三魔衆が加わると聞いた時はどんな事になるかと思ったけど問題も特になさそうでよかった)」
―――次の日夜 風城(襲撃前日)―――
アルタ「では、ハル殿が最前線で、ワカさんルカ姫が第二迎撃部隊、マナさんシノブさんが最後方支援でお願いします。後着のリクくんとナギさんも一応最前線ということですね」
ベガ「魔物に侵入されれば戦況は混乱するはずだからあくまで最初だけだね。そこからは臨機応変としか言えない」
三銃士と各隊の隊長、そしてハル達が防衛作戦の最終確認をしていた。
三銃士を中心にハル達に城内を説明する。
ルカ「城内案内図にある、この正面入口とは反対のこの窪みはなんですか?少し違和感が…」
ベガ「……」
デネブ「すまないが秘密だ」
アルタ「(彼女らになら、教えてもいいと思うがデネブは何か考えをもっているのか)」
ルカ「わかりました。すみません」
マナ「あの…絶対成功するとは限りませんが私の感…」
ハルは何故かマナの発言を止める。
ハル「すみませんなんでもないです」
マナ「?、??」
ハルはマナに「ごめん」という意味を込めてジェスチャーする。
ルカ「(マナの感知なら変装を見破れるかもしれない、でもどんな能力を持つ魔物が居るか分からないこの状況で、無闇に口に出すべきではないよね。風城の人達はアルタさん以外まだマナの特技を知らない)」
シノブ「三銃士の皆さんの配置はどうするんですか?」
アルタ「僕が前線に、第二迎撃部隊にデネブとベガを配置するよ。これで城への侵入を阻止する」
デネブ「敵は止める」
ベガ「まぁ、僕も一応三銃士としてがんばるよ」
アルタ「ベガの実力は本物なのにどうして、いつまでも自分を認めないんだ?」
ベガ「ふんっ」
アルタ「頼りにしているよ。よし、会議はここまでにしよう。今日の夜は僕ら三銃士が交代で起きることにするよ」
―――夜中―――
闇の中でデネブはこっそりと正面扉と逆に位置する裏口へと城から繋がる地下通路を通っていた。
アルタ「デネブこんな所でなにをしているんだ?」
デネブは不意に後ろから声をかけられ振り返る。
アルタ「こんな地下深くに君がいたらもし夜襲にあった時に誰が城を守るんだ?」
デネブ「それは…。こっちのセリフだ」
デネブはアルタに向け剣を構える。
アルタ「君が裏切り者だったとはね。とても残念だよ。信じていたのに」
アルタの後ろには夜の見張り担当の風の騎士団メンバーの一部が剣を構えている。
アルタ「親友を殺したくはない、皆デネブを捕まえてくれるか」
風の騎士団はデネブを囲み厳重に縄で縛る。デネブは数と目の前にいるのが三銃士最強のアルタだからか無抵抗で縛られている。
デネブ「お前たち…」
アルタ「地下牢へ連れて行ってくれ。僕は引き続き夜襲に備える。地下牢へ連れていったら休んでくれ」
兵「はい!ありがとうございます」
兵達はデネブを地下牢へ連れていく。デネブは必死に兵に声をかけるが、兵は全く相手にしない。アルタの判断を信じ切っているからこそ長年城を引っ張ってきた三銃士に対してもこのような対応を取れるのである。
兵「(兼ねてから城内に裏切り者がいる可能性があることをアルタ様は危惧していたが、まさかデネブ様だとは。アルタ様の次に尊敬するお方だったのに)」
その後特に事件はなく、朝を迎える。ハルや兵達は目を覚まし自分の仕事をしていた。武器を磨くもの、食べ物を管理するもの、村の発展具合を書類にまとめるもの多くの兵がそれぞれの担当の業務をこなし、連携力と自身で考える力を鍛えていた。
その時広場にはアルタと風騎士団数名、そしてハルがいた。突如城が揺れ大きな音が聞こえる。
アルタ「何事だ!」
ハル「今のは地下の方からです。座標的には北東から聞こえました」
アルタ「ありがとう、様子を見てくる。(地下には地下牢と隠し通路しか無いはず)」
ハル「僕も行きます!」
走り出す2人の後ろを風の騎士団のメンバーもついて行く。
アルタ「これは」
ハル「この先には何があるんですか?」
アルタ「地下牢だ。でも誰がこんなこと」
地下牢へ繋がる通路は瓦礫と土で埋まっていた。
兵「昨晩捕まえたデネブ様の仕業でしょうか」
アルタ「なぜ、デネブを捕まえたんだ?」
兵「え、アルタ様の指示ですが」
ハル「(この感じ、もしかして)」
アルタ「……それは僕じゃない」




