29話風城
―――翌日 モチ村―――
マナ「この村からはもうバートとという魔物の気配は感知出来ないです」
アルタ「ありがとう。あの魔物はとても強かった。おそらく能力持ちの個体だろう」
ワカ「忍村に来て僕になりすました魔物と同じ感じですかね」
ルカ「あの掴めない不気味さに似ているという印象を抱きました」
ワカ「それにしても魔法対決でルカさんがやられるとは中々の能力ですね」
ハル「まるでルカの水の壁を見てから、炎を雷に変えたみたいでした」
マナ「それにきっとヨルちゃんも何かされてるみたいでした」
アルタ「城に襲来してくるかもしれない魔物の情報はとても有難いです」
アルタはメモを取りながら、そうお礼を述べた。
兵「アルタ様そろそろ帰還のお時間です」
音もなく、兵がアルタの足元で膝まづいていた。
アルタ「ありがとう。出発の準備をしてくれ。一応保険で馬を連れているのですが、1人で乗れる方はいますか」
ルカ「私乗れます」
ワカ「僕とシノブも乗れます」
アルタ「じゃあ、マナさんはルカさんと共に乗っていただいて、ハル殿は僕の後ろに」
ハ マ「ありがとうございます」
村人「もう行ってしまわれるのですか」
アルタ「はい。城を長くは空けれませんので」
村人「そうですよね。この村を助けていただきありがとうございました」
村人は何かを伝えようとしている。
アルタ「……」
アルタは顎に手を当て、村人の言いたい事を考え、判断する。
アルタ「モチ村の人々は昨日の襲撃での不安が取れていいない。さらに燃えた建物も多い。復興の手はいくらあってもいい。よって1班と2班をモチ村に残す」
1班長「はい!」
2班長「しかし城が…」
アルタ「城は僕たちに任せてくれ、僕に何かあれば風の騎士団を頼むよ」
2班長「失礼致しました!モチ村はお任せ下さい」
アルタ「ありがとう。頼んだよ。この村の方々とはコミュニケーションをよくとってあげてくれ」
その何気ない気遣いや、素早い判断にハルは自身のリーダー像をアルタにみる。
アルタ「では、出発!」
風の騎士団とハル達を乗せた馬は、一斉に城の方向へ走り出す。風を切る速度で進む馬は歩いての移動とは比べ物にならないスピードである。
広大な大地と木々そして爽やかな風がルカを包む。
ルカ「世界にはまだこんなに綺麗な景色があったんだね」
マナ「光国の景色もとても綺麗だからいつか絶対一緒に見ようね」
ルカ「うん!水国ももっと案内できる所あるから行こうよ。皆で美しい世界を取り戻そう」
マナ「そうだね。必ず」
ハル「モチ村で見せていただいた剣技はどうやって身につけたのですか?」
ハルは昨晩アルタに頼んで剣舞を見せてもらっていた。三銃士の実力は本物であまりの美しさに言葉を失った。
アルタ「今僕らは三銃士と呼ばれているのをお聞ききになったと思いますが、僕は他の三銃士2人デネブとベガと幼少期から鍛えあってきました。城に着いたら紹介しますね」
ハル「ぜひよろしくお願いします」
アルタ「三銃士に加えて王と、王の一番の側近の者も剣の腕は達者です。王と側近の者は立場上前線には立ちませんが、もしもの事があり王の元へ刺客がたどり着いても王の事は討てないと思います」
ハル「そうなんですね。風城には剣技に精通している方が多いんですね。アルタさんはどなたに剣を習ったんですか?」
アルタ「えーと。僕はその王の側近であるカストルさんです。彼は王にも剣技を指南していまして、とても強いですよ。カストルさんは今年で70歳を迎えますが、まだまだ現役でたまには村の防衛任務にも赴いています」
ハル「70歳で任務!?…今の話を聞く限りとても魔物に城を落とせるとは思えませんが」
アルタ「僕もそう思ってはいるのですか、こちらの都合もあり、攻めいられている予定の日の前後に戦力は下がるので助けに来ていただいて本当に感謝しています」
2人の会話にワカが入る。
ワカ「カーア様の予言を聞いて僕らが動いてる時点で未来は変わっているので油断は禁物ですね」
シノブ「もしかして今回のモチ村の襲撃も城の戦力を分断する作戦ですかね」
3人「!」
アルタ「丁度城からみて、モチ村と反対のサクラ村も襲撃にあっておりまして、そちらにはデネブが向かいました」
ワカ「シノブいい気づきです」
シノブ「え、ありがとうございます」
ワカ「おそらく、あわよくば先に三銃士を一人でも倒しておきたかったんでしょうね…ただ撤退の判断がとても早かった。シノブ言った通り分断が本筋の目的と思えます」
アルタ 「現に僕は兵の一部をモチ村に置いてきたので戦力は減らされましたね。デネブも負けることは無いでしょう」
シノブ 「どうしたハル?ぼーっとして」
ハル 「自分が知らなかっただけで、こんなに強い人が沢山いたんだなって思ってさ」
ワカ 「ははっ。嬉しい事言ってくれますね。人類の全てが魔物に支配されていないのはどの時代も力を持つ人がいたからです」
アルタ 「おっしゃるとおりですね。そしてお二人のように次の世代も育ってきている」
シノブとハルは顔を見合わせる。
アルタ「柱を倒すなんて、快挙です。もっと誇っていいんですよ」
ハルは顔を赤くする。
シノブ「ハルって謙虚でいい子だよね」
ハル「うるさい」
シノブ「照れすぎだよ」
しばらく馬を走らせていると、視界の先に高い塀が現れ間もなく風城に到着した。
ハル「大きい…」
ルカ「この高い塀すごいですね」
アルタ「この国は風が強いからですね、もちろん魔物の侵入も防いでいます。そして入口はここしかないです」
アルタが到着すると、大きな木の扉がゆっくりと開かれる。そのまま一同は塀の内側へと入っていく。
兵「デネブ様もお帰りになっています」
アルタ「ありがとう。相変わらずデネブは行動が速いな」
ハルは城で出迎える兵と目が合う度頭を下げる。
アルタ「そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよ。さぁ行きましょう」
馬から降りるハルの手を取る。
ハル「ありがとうございます。(かっこいい)」
兵の一部が馬を馬小屋に運ぶために残り、他は場内へと入っていく。
ベガ「アルタもデネブも帰ってくるだけでチヤホヤされていいなぁ」
黒と黄色が入り交じる髪色の青年は城内の窓からアルタの帰りを見ていた。
デネブ「遅い」
アルタ「すまないデネブ。次からはもっとがんばるよ。そして次は負けない」
デネブ「ならいい」
王の間の前で赤髪のガタイの良い青年が腕を組んで立っていた。アルタと短いやり取りを終えると王の間の扉を開ける。
ハル「ありがとうございます」
その部屋に王の姿は直接は見えない。厚いカーテンの向こうに1人のシルエットだけが見えている。
アルタ「ハル殿達を疑ってる訳ではないのですが、このかたちで対話をする失礼を許していただきたい」
ワカ「(なりすましの魔物が出た以上誰も文句はありませんね)」
風の王「この度は遠い所から足を運んでいただき感謝している。この城のものは好きに使って貰って構わない。戦場でのすべての権限はアルタに委ねている。どうかよろしく頼む」
シルエットはハル達へ向け深々と頭を下げる。
デネブ「時間だ」
ハル「必ずお守りして見せます」
一同は王の間から出される。
ルカ「(昔会った時はもっと雰囲気違った気が…)」
一方、風柱と魔物が集まる洞窟ではバートとメルムがハル達のことを報告してるのであった。




